京都大好きトーク!門川市長とゲストの“きょうかん対談”

第十一回「いのち」 東日本大震災の困難をのりこえて 新しい時代を子どもたちとともに
門川大作京都市長 × 水谷修さん (花園大学客員教授)
門川京都市長・水谷修さん 対談写真
門川京都市長・水谷修さん 対談写真
門川京都市長・水谷修さん 対談写真
門川京都市長・水谷修さん 対談写真

<プロフィール>
水谷修/1956年横浜市生まれ。中高生の非行防止と更正、薬物汚染の拡大防止のために夜の繁華街をパトロールし「夜回り先生」として知られる。2003年東京弁護士会第17回人権賞受賞。04年内藤寿七郎国際育児賞生命の尊厳賞受賞、第9回横浜弁護士会人権賞受賞。著書に『夜回り先生 こころの授業』『夜回り先生の卒業証書』など。08年から花園大学社会福祉学部客員教授。

被災地と心をつなぐ支援

水谷修さん門川市長 本日は「夜回り先生」こと水谷修先生にお越しいただきました。先生には、私が市教育長のころから研修やシンポジウムでの講演、青少年の薬物問題などで行動を共にさせていただき、お世話になっています。子どもたちに寄り添って力強く行動される、本当に素晴らしい教育者です。
水谷さん 今、花園大学で教鞭(きょうべん)をとっていますが、京都に来たのは門川市長の存在も大きかったんです。何かあれば相談にのっていただいています。学ぶことに貪欲で真面目な市長は「考えたらすぐに動く人」。さぞや、下で働いている人は大変だろうとお察し申し上げます(笑)。
門川 大震災のあと「市民ぐるみで被災地への支援を継続的にしなければならない、そのためにはボランティア支援のお金も大事だ」とお話ししたら、水谷先生が掛け合ってくださって「それならぜひに」というお寺などからすぐにボランティアセンターに寄付金が届いた。とても喜んでおられました。
水谷 京都市の被災地支援の取り組みを聞いて私も何かお手伝いをと、いろんなお寺に寄付のお願いに参りました。震災後、門川市長はもっとも活発に動かれている地方自治体の長だと思います。
門川 大震災は金曜日でした。その日のうちに京都市から消防隊、救援物資、仮設トイレ、医師などを被災地に送りました。その後、土日にもかかわらず全職員が「京都市としてできる支援」を考え、日曜の夜、多彩な支援リストが作成できました。仮設トイレの消毒、ゴミの収集・分別、危険建物応急診断、上下水・橋等の点検、子どもの心のケア……この支援可能メニューを、教育長の頃から親交のあった奥山恵美子仙台市長に携帯電話で伝えたところ「すぐ来てほしい」と。
水谷 やはり今回も“すぐ動かれた”のですね。
門川 これまで職員1100人が被災地に行き、おおむね一週間交代で活動してきました。戻ったある職員は「仙台市職員には地震発生後2週間、一度も帰宅せず、家族が行方不明でも働き続ける方がいる。私たちももっとお役に立ちたい」と話してくれました。何十回研修するよりも意義深い体験になったと思います。
水谷 私は3月末から学校支援を手伝い、1校対1校の直接支援の態勢をつくりました。私が被災地の様子を子どもたちに伝えた逗子小学校からは、石巻市の渡波(わたのは)小学校と東松島の大曲小学校に援助物資が送られました。逗子小の校長先生が「子どもたちも職員も一番いい勉強をさせてもらった。これ以上の教育はない」と言ってくれました。うれしかったですね。
門川 阪神大震災の年は「ボランティア元年」と言われました。この大震災から私たちは何を学ぶのか。私は「気付きの元年」「改革の元年」にしなければならないと思っています。国のあり方、まちのあり方、一人一人の生き方を真剣に考え、日本の古き良き暮らしや人の絆(きずな)の大切さを再確認しながら、未来にいかしていかなければなりません。今回の震災で2万5千人もの方がお亡くなりに、あるいは行方不明になりました。一方で、年間3万人が自殺されている。命の貴さを考える、本当に大きな契機にしなければと思います。
水谷 気付きといえば、こんなことがあったんです。福島県郡山の避難所で、あるお母さんが、「8年間引きこもりだった子が、今、他の被災者のためにご飯を配って働いている」と涙を流して話してくれました。ぼくも石巻で教わった。石巻では子どもたちがお年寄りを元気づけているんです。確かに辛いこと、苦しいことがいっぱいあるけれど、いろんな明るい芽が出てきています。ここから学び直して、日本人の心や物の見方を変えていくべき時だなと思います。

「いのち」を支え、育む、地域ぐるみの教育を

門川大作京都市長水谷 今回の震災支援で、現場で的確に動ける人を作るのがいかに大事か、ということも痛感しました。
門川 「100点の仕事しかしません」という、いわゆる"学校秀才"では危機の際の対応はできません。まずは50点でも30点でもいいからとにかくスピードが大事で、行動を始めてから徐々に見直していく。そういう「現場力」が必要ですね。
水谷 「現場力」といえば、市長は教育長時代に「京都教師塾」を立ち上げました。小・中学校の教師を目指す大学生・社会人を対象にしたもので、実践的な力をつけるすばらしい取り組みです。
門川 教師塾で学ぶ人に京都市の採用試験受験を義務付けてはいないのですが、面白いことに、塾を卒業し、いったん京都市外に行きながら、「やはり京都の教育現場でがんばってみたい」と戻ってくる人もいます。うれしいことです。
水谷 教師塾は10年後、20年後の教育レベルに確実に影響を与えるでしょう。また、優秀な子どもを伸ばすだけでなく、困難な家庭の子や問題を抱えた子のケアもできるセーフティーネットづくりも大切ではないでしょうか。
門川 その拠点がここ、「こどもパトナ(京都市教育相談総合センター)」です。臨床心理士が40人おり、子どもや保護者のカウンセリングにあたっています。不登校の子どもを受け入れる洛風中学校も特区制度で作りました。
水谷 私は京都が大好きです。あらゆる日本文化の発祥の地であり、京都に来ると自分のルーツを訪ねているようで落ち着くんですよね。悩んだとき、お寺を訪れたり、哲学の道を歩いてどれだけ癒やされたことか。さらに京都に望むことがあるとすれば、伝統文化と宗教と教育の結びつき。僧侶や文化人に教育に参加していただき、その知恵や生きざまを伝えてはどうでしょうか。今、日本中が金太郎あめのような教育ですが、「さすが日本古来のまち・京都で学んだ子どもだ」と言われるような教育を、さらに進めてほしいですね。
門川 産業も教育も様々な課題に直面し、閉塞感が出てきたときに大震災が起こりました。しかしこれを機に、教育も新しい一歩を踏み出す必要があります。親や地域が誇りを持って子どもたち一人ひとりの能力を引き出し、人とつながる力を付ける。かけがえのない子どもの「いのち」を守り、笑顔を育む「市民ぐるみの京都の教育」に一層、力を注いで参ります。
水谷 外国の方がよくほめてくれますが、今回の震災では、みんなが東北の人を思いながら、助け合っています。日本って本当に素晴らしい国だと思える出来事がたくさんありました。そういう誇りを大切にしなければと思います。
門川 私たちは今こそ絆を深め、力を合わせて、新たな時代を切り拓(ひら)いていかなければなりません。その取り組みを京都がしっかりとリードしていきたい、と先生のお話を聞きながら決意を新たにしています。本日はありがとうございました。



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