京都大好きトーク!門川市長とゲストの“きょうかん対談”

第十二回「環境」 新たな生き方が問われる今、自然と共鳴する暮らしと文化を京都から
門川大作京都市長 × 笹岡隆甫さん (未生流笹岡次期家元)、浅利美鈴さん (京都大学環境科学センター助教)
門川京都市長・笹岡隆甫さん、浅利美鈴さん 対談写真
門川京都市長・笹岡隆甫さん、浅利美鈴さん 対談写真
門川京都市長・笹岡隆甫さん、浅利美鈴さん 対談写真
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<プロフィール>
笹岡隆甫/1974年京都市出身。3歳より祖父である当代家元・笹岡勲甫の指導を受ける。85年祇園祭長刀鉾稚児。97年京都大学工学部建築学科卒業。99年同工学研究科修士課程修了。2000年同博士後期課程を中退し、華道に専念。「いけばなパフォーマンス」など舞台芸術としてのいけばなの可能性を追求する。09年、伝統文化の担い手と共に環境問題を考える「DO YOU KYOTO?ネットワーク」を立ち上げ、世話人を務める。京都市「DO YOU KYOTO?」大使。
浅利美鈴/京都府出身。2000年京都大学工学部地球工学科卒業。04年工学博士。研究テーマは「ごみ」。学生時代に「京大ゴミ部」を立ち上げ、環境問題の普及啓発・教育活動に取り組み始める。京都議定書で掲げられた地球温暖化防止策の浸透を目指して「びっくり!エコ100選」や「京都議定書バースデーウォーク」などを展開。京都市基本計画審議会委員なども務める。環境問題の専門家育成を目指す「3R・低炭素社会検定」実行委員長。

高い志でつながるそれぞれの道

笹岡隆甫さん門川市長 華道家の笹岡隆甫さんと、京都大学環境科学センターの浅利美鈴先生。歩む道の違うお二人ですが、ほぼ同時期に京大工学部で学ばれ、今それぞれの分野で大活躍されています。
浅利さん 笹岡さんの「お花」は人の目を惹き付けますが、私の研究テーマは人が目をそむけたがる「ごみ」(笑)。正反対のようですが、お花もごみも、環境を考える視点ではつながっている気がします。
笹岡さん 実は生け終わった後の花をどう処分するか、私たち華道家にとって大きな悩みです。昔は近くの田畑に持っていって土に還(かえ)し、肥料としてまた新たな命を生み出す手助けができました。今では大部分を焼却せざるを得ず、痛々しく感じています。
門川 一見全く別の世界にいるお二人が、環境問題や人間らしい生き方、自然の摂理に合った暮らし方を追究し、それぞれ京都から発信してくださっている。ありがたいと思います。
 ところで浅利先生には、東日本大震災後、本市による災害廃棄物対策の支援で被災地に入っていただきましたね。
浅利 環境政策局の職員の皆さん…使命感に燃えた男性ばかりの一団の中に入れてもらい、3月25日に現地に向かいました。4月7日には一瞬死を覚悟するほどの大きな余震も経験しましたが、かえって、みんなでがんばろう!と心が一つになりました。その後、多くの人の力で現地は予想した以上に復旧が進んでいて、人間の力もすごいなと実感しています。ごみの処理などの課題にも全力で取り組まれています。
浅利美鈴さん門川 京都市はいち早くごみの分別収集のために動きました。浅利先生を中心に廃棄物学会でも約100人の学者の協力も得て、「将来に禍根を残さないごみの分別」の提言を奥山仙台市長に提出。わたしもご一緒しました。世界初の災害廃棄物戦略マニュアルです。京都市防災会議の専門委員で元京大総長の尾池和夫先生が、「"日本はこの大震災に際してもごみを分別している"と世界が高く評価している」と話されていました。
浅利 今回、処理困難なごみがいかに多いかにも気付かされました。とはいえ、目の当たりにしたことをしっかりと受けとめて解決していかなければ、と思っています。
門川 笹岡さんも、チャリティーイベントなど被災地支援に積極的に取り組まれていますね。
笹岡 4月〜6月に行われた西本願寺門前の催し、「ご縁まちマルシェ」の震災復興チャリティーイベントに、私たち「DO YOU KYOTO?ネットワーク」のメンバーも参加しました。秋にも引き続き、チャリティーイベントに参画する予定です。
門川 「DO YOU KYOTO?ネットワーク」は、地球環境のために志の高い取り組みをされていますが、今、被災地のために、日本が元気になるためにと、志高く行動いただいており、心強く思っています。
笹岡 東京在住の師範代の話が心に残っています。ご家族が福島県いわき市から一時避難された時、家に飾られた花に普段よりもじっくりと目を留めてくれた、と。辛い時こそ、花のぬくもりが心に深く作用する。今後の支援では文化の果たす役割が増えていくと感じています。

持続可能な社会実現の鍵は京都に

門川大作京都市長門川 精神文化や人とのつながりを実感することも、これからの大きなテーマですね。今回の震災では、自然と調和した暮らしの大切さを思い知ることにもなりました。
笹岡 昔ながらのものづくりも、改めて見直されるのではないでしょうか。工芸品をはじめ京都で作られる「良いもの」は比較的高価なものが多いですが、大事に長く使えばトータルで見ると決して高くなく、感性も磨かれる。私の友人が娘に、漆器の茶わんとプラスチック製の茶わんを交互に使わせたら、やはり漆器ばかり大切に使うようになったそうです。
門川 京都はものづくりのまち。ものを大切に伝える伝統や美学、精神文化、暮らしの知恵があり、それを基盤に千年を超えてまちづくりが行われてきた。使い捨ての文化であったら、千年以上続く持続可能な都市にはならなかったでしょう。
浅利 そんな京都だからこそ、ものを最後まで使いきる「始末」の知恵なども育まれてきたのですね。しかし高度経済成長期以降、ごみの量は異常に増えました。これをまず元に戻さなければ。
門川 昭和40年代から30年間で82万トンまで増えました。この減量に市民や企業の皆さんと共に取り組み、昨年度は50万トンを切りました。ピーク時から4割減と画期的です。有料指定袋の取り組みなどの成果です。10年後に39万トンにするのが目標です。
浅利 30年続けている京都市のごみ調査を見ると、増えているのは生ごみ。半分近くが食べ残しで、その大半は手つかずです。これをなくせばぐっと減量できます。
門川 レジ袋を減らせば更に6%体積を減らせます。低炭素社会を目指し、省エネをはじめ抜本的なエネルギー政策の転換からライフスタイルの変革まで、震災後のモデルとなる取り組みを京都から実践し発信しなければと考えています。
 今日は貴重なお話を伺いましたが、最後に改めて、お二人にとって京都とは?
浅利 どんどん好きになるまちです。「まなざしのにぎわい」という言葉があるのですが、京都は、人々の視点が一様ではなくそれぞれの視点でものを見たり考えたりしている。そのまなざしの賑わい=多様性が認められ、個性的であることが受容されるのが京都の強みであり、世界に一目置かれるゆえんだと思います。そんな京都から私も、世界に向けて環境への取り組みを発信していきたいですね。
笹岡 歴史、自然、伝統、美意識、さまざまなものが凝縮されたまちに文化やものづくりの担い手が暮らし、人と人とが常にぶつかりあって新しいものを生み出す。それが京都の魅力ではないでしょうか。自然ときちんと向き合い、身近にあるもので花を生け、お茶を飲みながら話す。厳しい状況の今こそ、そんな文化の原点に立ち戻って京都をアピールしていきたいと思います。
門川 本日は、使命感と意欲に満ちたお二人のお話に勇気づけられました。この大震災を機に、環境や地域コミュニティーの活性化、人と人の絆について「気付きの元年」「変革の元年」にぜひしたいものです。環境モデル都市・京都議定書誕生の地として持続可能な社会をつくるべく、今後も志と行動を共にしてまいりましょう。本日はありがとうございました。



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