京都大好きトーク!門川市長とゲストの“きょうかん対談”

第十七回「伝統と知恵」 一緒に考えよう 未来の京都のまちづくり
日本最古の漫画「鳥獣戯画絵巻」誕生の地・京都から広がるコンテンツ産業の未来
門川大作京都市長 × 松谷孝征さん(手怎vロダクション社長)× 角川歴彦さん(角川グループホールディングス会長)
門川京都市長・松谷孝征さん・角川歴彦さん 対談写真
門川京都市長・松谷孝征さん・角川歴彦さん 対談写真
門川京都市長・松谷孝征さん・角川歴彦さん 対談写真

<プロフィール>
松谷孝征(まつたに たかゆき)/1944年横浜市生まれ。中央大学法学部卒業後、実業之日本社入社。漫画雑誌の編集者として手恷。虫を担当。その後、手恷。虫のマネジャーとして手怎vロダクションに入社。「カラー版鉄腕アトム」などのテレビシリーズや、劇場版アニメ「火の鳥」ほか、手恁エ作の多くの作品でプロデューサーを務める。85年から同社社長。日本動画協会名誉理事、NPO法人映像産業振興機構(VIPO)理事長などを務める。
角川歴彦(かどかわ つぐひこ)/1943年東京都生まれ。早稲田大学第一政治経済学部卒業後、角川書店に入社。現在、角川グループホールディングス取締役会長。内閣官房知的財産戦略本部本部員、早稲田大学客員教授などを務めているほか、平成22年3月まで「京都市コンテンツビジネス研究会」委員。「古典の日」推進全国会議の古典の日制定推薦人。著書に『クラウド時代と<クール革命>』。

手恷。虫も愛した京都

松谷孝征さん門川市長 今回は、9月21日から開催する京都初の「京都国際マンガ・アニメフェア」を前に、実行委員長の松谷孝征さんと、角川歴彦さんにお越しいただきました。お二人とも京都にはよくおいでくださっていますね。
角川さん 日本料理を食べたくなると京都に来たくなるんです(笑)。
門川 最近は、東京に店を開店し、頑張っておられる京都のお店がたくさんありますね。
角川 ええ、でもやっぱり、京都に来て食べたいんですよ。東京では何となく「バタバタと急いで食べる」感じですが、京都は違います。ゆったりとした時間を味わえる。例えば、料理を盛る器にしても、一年のうち数日しか使わないものを、時々の行事に合わせて準備されるでしょ。衣装もしかり。そういうことを大事にしているまちだから洗練されている。東京の人は京都に憧れています。
松谷さん 京都の良さがより分かるようになるのは、年を取ってからですよね。私、生まれは横浜で、中学の修学旅行で初めて京都に来たのですが、当時は、二条城のキュッキュッと鳴る廊下くらいしか面白くなくてね(笑)。でも今は、寺社だけでなく川辺を歩いていても、しっとりした京都ならではの情緒を感じます。そういえば、手恷。虫も京都が大好きでした。フランスの漫画の大家・メビウスさんや、「木を植えた男」のフレデリック・バックさんなど海外からのお客様を自費で案内していたくらいです。
門川 うれしいですね。世界の漫画・アニメ史に大きな足跡を残された手恷。虫さんも愛した京都。その魅力を、ぜひ漫画やアニメでも発信していきたいですね(笑)。

京都国際マンガミュージアムから始まる新しい「ものがたりづくり」

角川歴彦さん角川 それにしても、「京都国際マンガミュージアム」を作られたのは本当に良かった。本来、国がすべきことを京都市が率先されたと敬服しています。
門川 おかげさまで6年前の開館以来、京都精華大学との協働で努力し、年間30万人もの方が訪れています。海外からの注目度も高く、来館者の1割以上が外国人。でも、さらに飛躍しなくてはと考えています。特に人材育成の環境づくりと産業との融合です。現在、市が京町家を借り上げ、漫画家を目指す若者が、生活を共にしながら切磋琢磨(せっさたくま)して創作活動ができる「京都版トキワ荘」の準備など、関係者と全力投球しています。
角川 マンガミュージアムから始まった取り組みも第二期に入っているのですね。
門川 そうです。2010年には「KYOTO CMEX(クロスメディア エクスペリエンス)(*)」事業の一環として、ルーブル美術館との共同イベントも行いました。ルーブルの学芸員の方がわざわざ京都に来られ、ぜひここでやりたいとおっしゃられて。フランス語圏の漫画の原画と日本の漫画・アニメの魅力を総合的に発信する素晴らしい機会になりました。
松谷 マンガミュージアムにある「火の鳥」の彫像、あれもいいですよね。ポップアートといわれた漫画のキャラクターを仏師の技で見事に具現化された。また、西陣織で作られた「火の鳥」のネクタイなどもすごくいい。伝統産業の匠の技と漫画やアニメが融合して、本当に良いものが生まれている。それが京都のすごさだと思います。
角川 京都には「京都アニメーション」というアニメ制作会社もあって、「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」をはじめ、非常にオタク的な素材を取り上げて成功しています。また「けいおん!」というアニメは京都が舞台。ファンの聖地にもなった京都を、若い人がストーリーを追ってあちこち歩くというのがはやっているそうですよ。
松谷 京都アニメーションは、東京に出なくても京都できちんと仕事ができることを証明しました。平安時代に漫画の元祖ともいうべき「鳥獣戯画」が生まれた京都には、豊かな漫画文化を育む土壌があります。日本初のマンガ学科ができたのも京都精華大学でした。
角川 大学がたくさんあって、多くの学生さんがいる。そこがまた京都のいいところですよね。
門川 そうした大学での研究と実際の仕事をつなげることで、優れた人材が引き続き京都で活躍できるようにしていかなくてはならないと考えています。歴史力、文化力があり、豊富な人材を擁する京都。その強みを結び、生かしていくことが、コンテンツ産業発展の起爆剤になると。

コンテンツ産業振興の鍵は日本の心

門川大作京都市長角川 今、世界のコンテンツ量をみると、ハリウッドが40%で圧倒的に1位。日本は2位で14%、3位が中国で3%ですが、今後大きな成長が見込まれています。また、コンテンツ市場の中ではアニメが占める割合が高いのですが、日本の漫画・アニメが世界に広まった要因は、日本の精神性が育んだ豊かな表現力にあるといわれています。京都はその精神文化が最も息づくまち。今回のマンガ・アニメフェアを京都で開催する意味はそこにあります。
松谷 私も京都でマンガ・アニメフェアがずっと続いてほしいと思っています。京都で開催することで、日本の良さを知ってもらうことにもつながります。しかし一方で、漫画・アニメは過渡期を迎えています。アニメの放映本数は昔と比べてさほど減っていませんが、深夜の放送枠が多くなっています。親子でそろって楽しんでもらえる時間帯にこそ見てほしいのですが、残念ながら厳しい状況です。でも、だからこそ、常に新しいものを創り続けていかなければならないと思っています。そのためにも、脚本賞のコンクールなど、創作者の支援を行政にお願いしたいですね。
角川 今はメディアの変遷期。スマートフォン(多機能携帯電話)をはじめメディアの多様化が進み、漫画やアニメもその変化の大波に投げ出された状態です。しかし、日本の漫画・アニメにはその波を乗り越えていくたくましさがある。日本では個人の作家を大切にしながら作品を洗練させていくので、次から次に優秀なクリエーターが誕生している。楽観的ですが、日本の漫画やアニメは社会的影響が大きくなることはあっても、小さくなることはないと思っています。
門川 京都の心が育んできた優れたものづくり、「ものがたりづくり」、人づくりの伝統。これら京都の力と、京都にルーツがあるマンガ・アニメの力を融合して、これからも産業界、大学などと連携し、日本のコンテンツ産業を力強くリードしていきたいと思います。「京都国際マンガ・アニメフェア」も市民の皆さま、産業界の関心も高く、大いに盛り上げたいです。よろしく。

*KYOTO CMEX : 映画・ゲーム・漫画・アニメなど京都が持つコンテンツを多様に展開し、その潜在力と魅力を国内外に広く発信することにより、コンテンツ産業の振興と人材育成・交流を図る取り組みで、齋藤茂実行委員長の下、オール京都で進めている。




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