京都大好きトーク!門川市長とゲストの“きょうかん対談”

第十八回「学びのまち」 一緒に考えよう 未来の京都のまちづくり
「人づくり」の伝統の上に、発展し続ける京都の音楽文化
門川大作京都市長 × 佐渡裕さん(指揮者)× 中村悦子さん(京都堀川音楽高校3年生)
門川京都市長・佐渡裕さん・中村悦子さん 対談写真
門川京都市長・佐渡裕さん・中村悦子さん 対談写真
門川京都市長・佐渡裕さん・中村悦子さん 対談写真
門川京都市長・佐渡裕さん・中村悦子さん 対談写真

<プロフィール>
佐渡裕(さど ゆたか)/1961年京都市生まれ。京都市立堀川高校音楽科(現京都堀川音楽高校)、京都市立芸術大学音楽学部管・打楽専修(専攻:フルート)卒業後、故レナード・バーンスタイン、小澤征爾らに師事。89年、指揮者の登竜門・ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝。現在はヨーロッパと日本を中心に活躍し、2011年にはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮。国内では兵庫県立芸術文化センターで芸術監督を務めるほか、08年4月より音楽番組「題名のない音楽会」に司会者として出演。
中村悦子(なかむら えつこ)/1994年京都市生まれ。現在、京都市立京都堀川音楽高校3年器楽(フルート)専攻。2011年、第65回全日本学生音楽コンクール(フルート部門・高校の部)全国大会第2位。若手フルート奏者の登竜門、びわ湖国際フルートコンクール(アドヴァンス部門)では、2011年以降2年連続して第2位に入賞したほか、朝日新聞社賞など多数受賞。昨年は、生徒自治会長として文化祭などの学校行事でも活躍。

世界屈指の音楽環境が京都にある

佐渡裕さん門川市長 京都が生んだ偉大な指揮者、堀川高校音楽科・市立芸術大学OBの佐渡裕さんと、その後輩にあたる現在京都堀音3年生の中村悦子さんをお迎えしました。高校時代の佐渡さんは、かなりやんちゃだったそうですね。
佐渡さん 優秀でなかったのは間違いないです(笑)。専攻のフルートには一生懸命でしたが、悪さばかりしていましたね。堀音は生徒の自主性を大切にする校風があって、オーケストラや合唱の練習、学園祭…何でも自分たちでつくり上げていました。
門川 中村さんは去年、全日本学生音楽コンクールのフルート部門で全国2位という素晴らしい成績を収められましたが、学校でも生徒自治会の会長として活躍されたそうですね。
中村さん 会長は名前だけで(笑)。自治会メンバー7人みんなで、いろんな学校行事の裏方を務めました。特に、毎年文化祭で上演するミュージカルは一大イベントです。大道具から照明まで自分たちで分担を決めてつくり上げるので、終わった後はすごく達成感がありました。
佐渡 懐かしいな。僕はその文化祭でオペラをやって初めて指揮をしたことが、指揮者になった大きなきっかけなんです。
門川 佐渡さんの指揮のルーツが「堀音の文化祭」。うれしいですね。
中村 はい(笑)。
門川 京都市には、全国でも珍しい市運営の少年合唱団やジュニアオーケストラ、公立唯一の音楽高校、市立芸大音楽学部、自治体直営のオーケストラとして創設された京都市交響楽団(京響)と、音楽を専門的に学び演奏できる環境がそろっているほか、邦楽などさまざまな音楽も盛んです。また、京響の拠点・京都コンサートホールがあり、京都会館もより魅力的な会館となるよう、現在、2015年度内の完成に向けて再整備を進めています。
佐渡 僕も少年合唱団、堀音、市立芸大と歩み、京響でもずいぶん仕事をさせてもらいました。海外に行かなくても音楽を専門的に学べる場がすべて京都にある。これはすごいことですよね。しかも市立芸大には、戦後の大変な時期に音楽学部ができています。
門川 まだ満足に食べていけない戦後すぐの厳しい時代、1948年に音楽高校がつくられ、その専攻科をもとに1952年、市立芸大音楽学部の前身である音楽短大がつくられました。
佐渡 「何としても京都に音楽学校を!」と、情熱を注がれた先人たちのおかげで、今の京都の素晴らしい音楽環境があるのですね。
門川 この環境から巣立った佐渡さんのような素晴らしい先輩が、後輩たちに京都の音楽文化をつなぐ取り組みをしてくださっているのも、京都の強みです。だから中村さんのような将来有望な若い音楽家が育っている。この7月にも佐渡さんは、堀音で指導してくださいました。オーケストラの一員として偉大な先輩の指導を受けた中村さん、どうでしたか?
中村 佐渡さんが指揮台の上に立つと、空気がさっと変わりました。迫力があって、みんな圧倒されていました。佐渡さんの指導の後は、私たちの演奏もずっと良くなって驚きました。
佐渡 僕が高校生の時も、大先輩の指揮者をはじめプロの演奏家となった先輩方が指導に来てくれたんです。その時のドキドキ感は今も忘れられません。だから僕も、大学生のころから1年に1回くらいはできるだけ堀音を訪れるようにしています。後輩とも刺激し合えますし。もう30年くらいになるかな。

京都の文化風土が"創造力"を育む

中村悦子さん門川 昨年、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮をされるなど、海外で華々しい活躍をされている佐渡さんは、ヨーロッパ暮らしも長いですが、海外から日本、また京都を見て感じられることは?
佐渡 京都が世界的な文化都市であることは、僕が海外に出て一番実感していることです。「今度日本に行く」「日本に行ってきた」と言うと、必ず京都の話題になる。「僕はその京都の出身なんだよ」と言うと周囲の見る目が変わります。京都のブランド価値はものすごく高いですね。でも、京都の人は京都のことをあまり知らないのが実情ではないでしょうか。僕自身、三十三間堂を訪れたのがつい最近と、決して大きなことは言えないのですが(笑)。
門川 京都人は京都に修学旅行に行きませんからね(笑)。でも今は、小学校や中学校で、京都のことを学ぶカリキュラムが充実しています。小学生全員が「ジュニア京都検定」に挑戦したり、冬休みには世界遺産の社寺などを子どもたちに無料で公開したり。中村さんの世代はもう体験しているかな?
中村 はい。ちょうど始まったころでした。
佐渡 いいですね。子どもたちには、身近にある世界遺産や国宝級の文化財にもっと触れ、親しんでもらいたい。そうした体験が、世界でも活躍できる創造力を育みます。これを僕は世界で通用する「パスポート」だと表現しているのですが、それを手に挑戦する音楽家が、京都からたくさん育ってほしいですね。

市立芸大を日本の音楽文化発信の拠点に

門川大作京都市長門川 市立芸大音楽学部では、来月から設立60周年を記念した豪華な演奏会を行いますが、私はこの市立芸大から、日本ならではの音楽文化を発信していきたいと思っています。
佐渡 市立芸大には素晴らしい先生方がたくさんいらっしゃるし、日本の音楽家の中でも市立芸大出身者はかなり多い。僕もその1人であることを誇りに思っています。学生時代は演奏技術だけを追求しがちですが、音楽を通じていかに社会の役に立つか、どう社会と結びつくか、そんなことを考えるのも大切だと思います。僕は、阪神・淡路大震災、そして東日本大震災以降、音楽には人々の心を豊かにし、感動や勇気を届ける大きな力があると強く感じています。これからの市立芸大には、今まで以上にそういった面での教育にも力を入れていってほしいですね。
門川 佐渡さんのお話にあったように、海外に目を向けると、おのずと自国の文化的な価値を再発見することになります。市立芸大には、日本の伝統音楽を総合的に研究する国内唯一の公的研究機関「日本伝統音楽研究センター」が、2000年に設置されています。さらに来春には、京都の行事や儀礼、伝統音楽・芸能を研究し、支える人材を育てる新たな研究コースとして、大学院に「日本音楽研究専攻」を設けます。演奏家だけでなく音楽文化を広く支える人材育成も含めて、音楽文化創造の礎をしっかりと築いていきたいと考えています。そうした礎から、中村さんら若き音楽家が大きくはばたいていってほしいですね。
中村 今日のお話を聞いて音楽って、楽譜を見て曲を演奏するだけではなくて、さまざまなことを見たり、感じたりすることが大切なんだと、改めて勉強になりました。せっかく京都に住んでいるのだから、身近にある寺社などにも足を運んで、京都のことをもっと勉強したいと思います。
門川 京都というまちの力の源泉は「人づくり」。人づくりの伝統という「縦糸」に、多彩で活発な音楽団体、音楽系の大学・高校などの「横糸」が合わさって、独自の優れた音楽文化が育まれています。佐渡さんのように、多くの先達が若き音楽家に愛情あふれるまなざしを注がれることで、未来の素晴らしい音楽家がさらに生まれると確信しています。本日はありがとうございました。



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