京都大好きトーク!門川市長とゲストの“きょうかん対談”

第二十二回「未来」 一緒に考えよう、未来の京都のまちづくり
京都人の「得意わざ」を生かして「世界の京都」へ
門川大作京都市長 × 鷲田清一さん (哲学者) × 麻生圭子さん (エッセイスト)
門川京都市長・鷲田清一さん・麻生圭子さん 対談写真
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<プロフィール>
鷲田清一(わしだ きよかず)/1949年京都市生まれ。京都大学卒業。大阪大教授、同大学総長を経て、現在、大谷大学教授、せんだいメディアテーク館長。専門は哲学。近年は、医療や教育など社会の問題発生の現場に哲学の思考をつなげる「臨床哲学」を実践。著書に「モードの迷宮」(サントリー学芸賞)、「『聴く』ことの力」(桑原武夫学芸賞)、「『ぐずぐず』の理由」(読売文学賞)、「京都の平熱」など多数。
麻生圭子(あそう けいこ)/1957年大分県生まれ、東京都育ち。80年代に作詞家として活躍。小泉今日子や中森明菜、徳永英明などのヒット曲を手掛ける。結婚を機に96年から京都に在住。現在はエッセイスト。99年より町家で暮らし始める。その体験をつづった「京都で町家に出会った。」の他、著書に「東京育ちの京都案内」「東京育ちの京都探訪」「京都がくれた小さな生活。」など。近著に「京都早起き案内」。

京都の魅力と誇りを表す六つのコンセプト
鷲田清一さん門川市長 麻生さんは、京都に暮らされて18年目ですね。京都のまちはいかがですか。
麻生さん 私が来た当時はちょうど京町家再生の動きが始まったころ。その後「町家ブーム」で、昔の建物を工房やお店などに使う人たちが増えてきました。木の温もりと芳香、中にいると癒やされることを京都の人も再発見され、改めて大切にするようになりだしたんですね。
門川 京町家暮らしを始めるまでの体験、素晴らしさを本にも書いておられますね。
麻生 この間、京都は私が好きな方向に動いてくれているなと思います。例えば建物の高さ規制。あえて高さを制限する条例を作って、まち並みを守る決断をされたことは「さすが京都だな!」と。京都人でもないのに、誇らしく思ったりします。
門川 今や素敵な京都人ですよ。鷲田さんは、まちなか育ちでしたね。
鷲田さん 西本願寺の少し北の下町育ちです。ずっと京都に住み続けていますが、改めて深く関わったのが2000年ごろ。京都市基本構想の起草委員長として、100人近くの各界の方々と議論してまとめました。初めて「京都って何?」と考え、今後どういうまちになるべきかをめぐって会議を重ねたのは、京都と向き合う良い機会でした。
門川 その結果、京都を六つのコンセプトで打ち出された。
鷲田 はい。京都人がひそかに「得意わざ」と自負してきたものをまとめました。「めきき」「たくみ」「きわめ」「こころみ」「もてなし」「しまつ」です。「めきき」は、ほんまもんをちゃんと見分ける力を市民が持っていること。実は習い事をする人の割合が京都は全国1位。普段から芸事もたしなむから、皆さん、目が利いてくる。
門川 確かに、京都の人には審美眼があります。
麻生 生活の中に文化が根付いているからですね。
鷲田 「たくみ」は職人さん。京都はものづくりのまちですよね。「きわめ」は、何かをとことん追求する姿勢。「こころみ」は、京都の人は意外と新しいもの好きで、小学校や水力発電、市電など日本初も多い。現在の産業も最先端技術を持ち、進取の気性に富んでいます。「もてなし」はホスピタリティー。接客のみならずケアの心も意味します。最後の「しまつ」は無用なぜいたくを控えること。こういう得意技をきちんと見直し、自信を持とうと呼び掛けました。さらに、これらが、世界が抱えるいろんな問題解決のヒントになるのではと提起したのです。
門川 一言にしにくい京都の魅力・誇りを、六つのコンセプトでまとめていただいた。麻生さんが誇らしく思ってくださる京都の根本は、まさにこれですね。

京都を日本の財産として未来へ引き継ぐために
麻生圭子さん麻生 京都って、ルールに縛られたまちだと東京の人は思いがちですが、実はとてもフレキシブルで新しいもの好き。いろんな顔があるのが面白いですね。稽古事といえば私、京都へ来て、このまちを歩くなら着物が似合うと思い、まず着付けを習ったんです。
鷲田 着物は、他の人が手伝わないとササッと着られないところも大事な部分。例えば子どもが着るときには、お母さんやおばあちゃんが手伝ってくれるでしょ。昔は3世代が一緒に住むのも当たり前で、着物を通して世代間のコミュニケーションが深まった。
門川 ある程度、手間暇がかかるのも一つの面白さ。そもそも文化というのは手間がかかるものですから。
麻生 そこが楽しいですね。以前、西陣織老舗のご主人から言われたのですが、着物は自分のためではなく人のために、特に夏の絽(ろ)や紗(しゃ)の着物は人に涼しさを与えるために着るものだと。「『暑い』という顔をしたらあかん」と(笑)。
鷲田 ファッションは自己表現というけれども、むしろホスピタリティー、他人を喜ばせて自分も喜ぶという心持ちが、一番大事なものですよね。
麻生 着物が着られるようになった後は、お茶も習い始めました。それまではお茶といえば作法が…と敬遠していたのですが、いざ習ってみると全てのルールが理にかなっている。所作や型も、一番自然に見えて美しいものが伝えられているのだと知りました。お稽古も特別な人が来るのではない。「京都には文化がある」といいますが、それは文化を持った人がいっぱいいるということですね。
門川 その通りですね。こうした京都に息づく文化、魅力を未来へきちんと引き継いでいこうと、京都市では景観・文化・観光の三つを柱とし、京都を日本の財産として守り、育て、未来へ引き継ぐ「国家戦略としての京都創生」に取り組んでいます。これまでに景観法や歴史まちづくり法の制定、観光庁と京都市の共同プロジェクト「観光立国・日本 京都拠点」などを実現。そして今、全力を挙げているのが屋外広告物の対策です。
麻生 写真を撮るとき「この看板がなかったら良い景色なのに」とよく思ったものですが、最近少なくなってきましたね。
門川 気付いてくださって、うれしいですね。市会でも全会一致で議決いただき、2007年に建物の高さとデザイン、屋外広告物の基準などを全市的、抜本的に見直す「新景観政策」を打ち出しました。そして、来年の8月に屋外広告物を新基準に適合させる経過措置期間が終わりを迎えます。市内の建物約4万軒のうち7割が新基準に合っていないという厳しい基準です。屋上の看板は駄目ですし、パチンコ店などの電飾看板も撤去していただかねばなりません。
麻生 お店の前に旗がピラピラとあるのも?
門川 それも規制の対象になります。多くの方々のご理解、ご協力を得ながら、現在、職員100人体制のローラー作戦で是正指導を進めています。国内外から「さすが、京都」とお褒めいただいているこの取り組み。これからあと1年、大仕事です。
鷲田 昔は看板とのれんはみんな、粋を凝らして作ったものですけれどね。
門川 ええ。良い看板ももちろんあって、昨年はそれを称える「京都景観賞」を創りました。応募は約800件もあり、140件に表彰などを実施。こういう見た目の美しさにも磨きを掛けています。京都が京都であり続けるための、お二人のお考えを聞かせていただけますか。

一番じゃなく一流を目指す
門川大作京都市長麻生 京都の人の価値観で驚いたことがあります。東京では皆、上に上がることを目指していて、例えば同じビルでも高層ビルの方が格好いい。とにかく上が良いという価値観です。ところが京都は奥を究めていくことに優先順位がある。そこに品が醸し出されるんですね。これからも、東京や大阪の価値観に惑わされずに、京都は独自の未来を目指してほしい。明治の初めに小学校や疏水をつくったように、京都にしかできないことを見極めて。
門川 一番じゃなくても、一流を目指す価値観ですね。
鷲田 グローバルな時代ですから、世界の中で京都を見ないといけないと思います。例えばパリのイメージを一言で言うなら、エレガント。ファッションから車の設計、まちづくり、外交まで、全てエレガンスに重きが置かれている。そんなふうに、まちがあらゆるものを貫く一つの価値を体現し、個性的だけれども普遍性を持つことが「世界都市」の条件でしょう。京都はその条件を十分に備えたまち。さらに超高齢化や環境・エネルギー問題などいろんな課題に対して大切にすべき価値を見つけ、どう生かすかというモデルを世界に提示する、そんな大きな責任が京都にはあると思います。
門川 おっしゃる通りですね。料理、ファッション、そして「クールジャパン」とも称される漫画やアニメなどの日本の文化。また東日本大震災以降、京都に伝わる日本人の生き方の哲学、暮らしの美学が今、世界で評価されています。外国の方からは「近代化で多くの国は個性を失ったけれど、京都には素晴らしい個性があり、現代につながっている」と、高い評価をいただきますね。
麻生 確かに、京都は個性を失っていない気がします。
門川 今年5月、世界の視点を大事にしながら30年後の京都のあるべき姿を示そうと、まさにオール京都で「京都ビジョン2040」をまとめました。「世界の交流首都・京都」を目指し、文化・芸術を通して平和のメッセージを発信しようとしています。そのためにはソフトパワー、人づくりが一番大事です。また、皇族の方に京都にお住まいいただく「双京構想」も掲げています。100年先、千年先の未来も「日本に、世界に、京都があってよかった」と感じていただけるよう市民の皆さまと一緒に取り組むとともに、国に対しても国家戦略として「世界の京都」を打ち出すことを、一層強く求めてまいります。これからもよろしくお願いします。



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