京都大好きトーク!門川市長とゲストの“きょうかん対談”

第二十三回「伝統」 一緒に考えよう、未来の京都のまちづくり
「京都・日本酒サミット」から広がる日本文化と伝統産業の素晴らしさ
門川大作京都市長 × 佐々木晃さん (京都酒造組合理事) × 葉石かおりさん (エッセイスト、きき酒師)
門川京都市長・佐々木晃さん・葉石かおりさん 対談写真
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<プロフィール>
佐々木晃(ささき あきら)/1970年京都市生まれ。大学卒業後、産業機械販売会社勤務を経て、1893(明治26)年創業の家業・佐々木酒造に入社。2010年に代表取締役に就任し、02年から京都酒造組合理事。京都市や大学との共同研究による新商品開発にも積極的に取り組む一方、日本酒関連の講座やイベントを通じて、新たな日本酒ファンを増やす活動にも力を注ぐ。
葉石かおり(はいし かおり)/1966年東京都生まれ。日本大学文理学部卒。ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経てフリーに。女性のライフスタイルを主なテーマとして新聞・雑誌などに寄稿する一方、きき酒師として酒蔵や酒場の取材、講演などを行い、女性の視点で酒文化の魅力を発信する。「日本酒テイスティングBOOK」「おひとりさまの京都」など著書多数。10月末に「京都開運水めぐり」を刊行。宮崎織物役員も務め、和装講師の資格も持つ。

しなやかで、たおやかな京都の日本酒
佐々木晃さん門川市長 本日は、10月12日開催の「京都・日本酒サミット」を前に、新しい酒造りに京都市と共に取り組む佐々木酒造の4代目・佐々木晃さんと、エッセイスト・きき酒師としてご活躍の葉石かおりさんをお迎えしました。まずお酒に精通されている葉石さん、京都の日本酒はいかがですか。
葉石さん だしの利いた、やさしい味の京料理に、すんなり溶け込むようなお酒が多いですね。とてもしなやかで、たおやか。とがっているところがなく、すっとなじむお酒だと思います。何か一つが突出するのではなくバランスよくまとまっていて、やさしさがあると感じますね。
門川 さすが、うまい表現!ご著書でもお酒の魅力を多彩に表現されていますが、そもそも、きき酒師の資格を取られたきっかけは?
葉石 30歳を過ぎたころ、何か資格が欲しくなって。着物も日本酒も大好きで何か和に関係するものがいいなと思っていたところ、雑誌にちょうどきき酒師の講座が紹介されていたんです。勉強し始めたら、のめり込んでしまって。
門川 今では日本酒の魅力を伝えて全国で活躍しておられる。素晴らしいですね。佐々木さんは今年「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2013」SAKE部門で見事ゴールド賞を受賞。しかし実は、日本酒の道まっしぐらというわけではなかったとか。
佐々木さん そうなんです。兄が二人いますので、もともと家を継ぐ気もなく…。次兄の蔵之介が継ぐことを前提に大学の農学部に進み、卒論も「酒米の研究」だったんです。ところが突然「俳優になる」と言いだして、私に「継いでくれ」と。気が済んだらまた帰ってくるやろと留守番のつもりで安請け合いしたんですが、ずっと帰ってこないので、ようやく腹をくくりました(笑)。
門川 「腹をくくって」からは、さまざまな新しい試みに取り組まれていますね。
佐々木 ええ。10年ほど前に京都市産業技術研究所(市産技研)さんと一緒に新しい酵母を、近年ではやはり市産技研さんとノンアルコール飲料の開発をしています。日本酒の米と米麹(こうじ)を使った新しい飲み物です。昼の宴会での乾杯用に使っていただいたりと、徐々に広まっています。ありがたいことです。

多くの思いが込められた「日本酒で乾杯」条例
葉石かおりさん門川 日本酒といえば、父がよく言っていたことを思い出します。「お神酒(みき)とは三つの『き』、『ありがたき』『もったいなき』『恐れ多き』という三つの気持ちを神様にお供えするお酒や」と。お酒を味わえるのは、自然の恵みや先人の知恵の積み重ねがあるからこそ。そういったことへの感謝の気持ちを忘れないというのは、人間の生き方全般にも通じることですね。こうした精神文化や伝統産業品でもある日本酒は、海外で大きな注目を集めていますが、国内ではこの10年でその消費量が約40%も減少。京友禅は最盛期の3%、西陣織は9%まで減っているなど、近年、古き良き伝統文化と共に、千年を超え日本人が大切にしてきた生き方の哲学や暮らしの美学までもが、失われつつあるように思います。こうした中、京都市では昨年末、市会議員のご提案で「日本酒で乾杯しよう」という条例(清酒普及促進条例)を全国で初めて制定しました。日本酒での乾杯を通して、京都に伝わる日本の素晴らしい精神文化、伝統産業に目を向けていただきたいという思いが込められているこの条例。今、全国で注目されています。さて、その日本酒の魅力をどうやって次代へつなげていくべきでしょう?
葉石 女性の社会進出が進み、働き方も変わってきている今、飲み手として女性にターゲットを当てることが大きなポイントになると思います。女性はチャレンジ精神や口コミ力がすごいですから、一人に日本酒の魅力を伝えれば、どんどん広まります。また女性は「ラベル買い」をしますから、京都らしい意匠をラベルデザインに採り入れるのも、一つの戦略だと思いますよ。
佐々木 日本酒を造る現場も日々進化しています。「杜氏(とうじ)の経験と勘で造る」といったイメージが強いかもしれませんが、今の酒蔵はいわばバイオプラント。新開発の酵母を使ったり、米の品種改良でDNAを解析したりと、最先端の技術にあふれています。経験と勘を大事にしつつ、新しい技術を積極的に取り入れることで高品質のものを造り上げる、そういった挑戦の気持ちを、常に忘れたらあかんと思っています。
門川 市産技研と共同で造られた酵母を使った、洋ナシ風味のお酒「京生粋」なども評判上々ですね。
佐々木 ありがとうございます。共同開発した酵母「京の琴」を使ったお酒ですね。最近は洋ナシや青リンゴなど、ちょっと軽いタイプの香りが人気なんです。それまでは清酒といえば甘く、重厚な香りでしたが、時代とともに移り変わってきています。
門川 進取の気性がある京都のものづくり。市産技研では今、食洗機や電子レンジにも対応できる清水焼をつくろうと陶磁器業界と一緒に頑張っています。お酒でもいろんな開発をしてきましたが、研究室だけではイノベーション(革新)は難しい。でも、市産技研の職員、杜氏、酒屋の大将とみんなが一緒にお酒を酌み交わす「ノミニケーション」から、イノベーションが起こることも(笑)。伝統的なものづくりから先端産業までがあり、大学、多くの研究者、匠(たくみ)、職人、美しい自然にも恵まれた京都。私は、そうしたまちの特性をつなぐあらゆる取り組みに、行政がしっかりとコミット(関与)していくことが大切だと考えています。11月には、伏見区のらくなん進都に大学の技術を中小企業に橋渡しする拠点「京都市成長産業創造センター」を開所します。ここ京都だからこそできる日本酒振興策については、どのようにお考えですか?
葉石 京都は和の文化の粋。海外の方もたくさん来られますので、やはりそれを意識して打ち出していくことが大切だと思います。その点で大きなファクターとなるのが着物。女性が着物で平杯などをいただくと色っぽく、所作も美しく見えます。着物と日本酒とセットで、日本文化の魅力をトータルにお伝えできればと思いますね。
佐々木 そもそも京都のブランド力にはすごいものがあり、京料理に漬物、お茶とそれぞれが一流。私たち酒造りに携わる者は京都ブランドの一つとして、他の業種の方々に恥ずかしくないものを造らねばという思いも強いです。みんなで京都を盛り上げて全国に、世界に、京都と日本酒を広めていけたらと思っています。
門川 今、伝統産業はどこも厳しい状況ですが、日本酒は全国津々浦々で頑張っておられます。被災者支援で訪れた宮城、福島にもいいお酒がありますね。「日本酒で乾杯」条例は大きな発信力があって、同様の取り組みが全国に広がっています。いいお米と匠の技により受け継がれてきたお酒に今一度光を当て、京都だけでなく日本各地で地域を盛り立てる取り組みにつながればうれしいですね。

いよいよ開催。「京都・日本酒サミット2013」
門川大作京都市長門川 さて、「京都・日本酒サミット」では、全国150の蔵元のお酒などが楽しめます。
佐々木 はい、私どもはもちろん、京都の蔵元は皆、出展します。京料理と一緒に味わったり、伝統産業製品の体験、展示、販売コーナーでも楽しんでいただけます。
葉石 私もきき酒師として参加いたします。
門川 サミットが開かれる10月、特にお勧めの楽しみ方は?
葉石 ちょうど肌寒くなってくる時期ですので、ぜひ燗(かん)を。冷や、常温、燗、さらにはカクテルベースと、さまざまに楽しめるお酒は世界広しといえども日本酒くらい。冷や酒を好まれる方もいらっしゃいますが、ことに燗にすると米の膨らみ、うま味、やさしさが一層現れます。ぜひ味わっていただきたいですね。それから、日本酒を心地よく楽しむには、お水をお酒と同量に取る「和らぎ水」が効果的。こうした飲み方のケアもさせていただきたいですね。
門川 「和らぎ水」、おもてなしの心として伝えたいですね。ちなみに、京都市の水道水も世界最高水準ですよ。これからも佐々木さん、葉石さんはじめ、多くの関係者の皆さまと共に、文化をも創造する日本酒の魅力、そして衣食住全てにおいて京都の優れた伝統文化を世界へ、未来へと発信してまいりたいと思います。本日はありがとうございました。



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