京都大好きトーク!門川市長とゲストの“きょうかん対談”

第二十四回「融合」 一緒に考えよう、未来の京都のまちづくり
京都に息づく歴史と伝統、人々のつながりがイノベーションを引き起こす
門川大作京都市長 × 高橋智隆さん (ロボットクリエーター) × 石原律枝さん (蒔絵師)
門川京都市長・高橋智隆さん・石原律枝さん 対談写真
門川京都市長・高橋智隆さん・石原律枝さん 対談写真
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<プロフィール>
高橋智隆(たかはし ともたか)/1975年生まれ。大津市出身。2003年、京都大工学部物理学科卒業と同時に、学内入居ベンチャー第1号となるロボ・ガレージを創業。代表作は宇宙ステーションに送り込んだ「キロボ」、組み立てキット商品「ロビ」など。ロボットと共生する未来に向け、人間型の小型ロボットの普及を目指している。東京大先端科学技術研究センター特任准教授。著書に「ロボットの天才」。10年に関西財界セミナー特別賞、京都創造者賞を受賞。
石原律枝(いしはら りつえ)/1977年栃木県出身。京都精華大美術学部卒。裏千家学園茶道専門学校卒業(茶名 宗律)。京都市産業技術研究所漆工コース修了。2006年より金工作家の兄と営む工房「是空庵」で、茶道具、和小物、インテリアなどの漆工芸の制作に取り組む。10年に京都府美術工芸新鋭展(京都工芸ビエンナーレ)入選。アスニー山科で金継ぎ講座の講師を務めるほか、茶道指導助手も務める。

自然な対話もできる京都発のロボット「ロビ」
高橋智隆さん門川市長 本日のゲストは、京都大学の学内入居ベンチャー第1号「ロボ・ガレージ」の創業者でロボットクリエーターの高橋智隆さん、そしてここ京都市産業技術研究所(市産技研)の漆塗りエレベーターの制作者で、蒔絵(まきえ)師の石原律枝さんのお二人です。この子が今話題のロボット「ロビ」君ですね。
高橋さん はい。200ほどですが言葉を認識しますので会話もできます。ね、ロビ君。
ロビ君 なに!なに!
高橋 自己紹介して。
ロビ 僕ロビ、ロボットなんだ。
高橋 何ができる?
ロビ テレビつけたり、お留守番したり、ゲームしたり、踊ったり、いろいろできるよ。
人型ロボット「ロビ」高橋 テレビのチャンネルも変えられますし、人感センサーを使って防犯機能を持たせたり、ゲームやダンスもします。
高橋 踊って。
ロビ いくよー(音楽に合わせてダンスする)。
高橋 自分で音楽も流します。
全員 (拍手)
ロビ 疲れちゃった。
門川 すごいですね。
高橋 「ロボットは産業になる」といわれながらなかなかでしたが、ようやくここまできました。今後は家電製品のネットワークを、ロボットがコントロールするようになると思います。
門川 親しみやすい美しいデザイン、しかも相手を見て自然な対話までできるロボットが生まれてきているとは驚きです。ロビ君、ありがとう。

市産技研の顔!京都ならではの「蒔絵エレベーター」
石原律枝さん門川 さて、分野こそ異なりますが、ともにものづくりに携わるお二人の京都との関わりや日頃感じていることから聞かせていただけますか。
石原さん 私は出身が栃木で、中学校の修学旅行で訪れた京都に憧れ、大学から京都に。その後、裏千家学園に入り、そこでお茶の道具を通して蒔絵に出合い、専門的に学ぶことになったんです。京都はあらゆるところに匠(たくみ)と呼ばれる方がいて「まち中が先生」。しっかりと基礎から学べ、自然に人とのつながりもできるまちだと思います。
高橋 私は生まれたのが京大病院。高校と大学が立命館で、卒業後に京大に入り直し、そこで起業して―と、ずっとこの辺りをうろうろ。だから京都が特別だとは感じていなかったんですが、ある時気付いたんです。皆が理由をつけて京都に来たがることに。国内だけでなく海外の取引先の方までもが「大丈夫。われわれが行きますから」と。
門川 うれしいですね。
高橋 特に海外の方から日本を象徴する場所として意識されていると感じますね。私のロボットも、ポップカルチャーといった日本文化の一つとして紹介されることが多く、「日本的なロボットが"京都"から生まれている」とすごく興味を持っていただいている。そんな気がします。
門川 人と人とのつながりが濃いまち。海外から日本の象徴として注目されるまち。どちらも京都ならではですね。京都では、文化芸術・ものづくりの伝統の縦糸がつながると同時に、芸術家や研究者、職人といった今を生きる人々が横糸でつながり、まち全体を紡いでいる。お二人の話に、伝統文化だけでなく、今生み出されているものを含めたすべてが京都だと改めて感じました。そういった新旧の融合の一つとして、石原さん作の市産技研の顔「蒔絵エレベーター」がありますが、制作には大変なご苦労があったとか。
石原 はい。建物に蒔絵を施す体験は初めてで、しかも動くもの。どう絵を付けようかと悩みました。桜に紅葉という雲錦模様は昔ながらのモチーフですが、それをどう現代の蒔絵にするかがチャレンジでした。ちなみに制作場所は築80年の小さな自宅。エレベーターの扉は巨大ですから鉄板の重さに床がたわむほど(笑)。3カ月、毎日必死に取り組みました。
門川 初めて見たとき、感動しましたよ。
石原 ありがとうございます。市産技研が建て替えられたので、幕が開くイメージで「動く蒔絵」を意識しました。
高橋 動きがあると、見え方が違いますよね。ロボットも自動車もそうですが、止まっているのと動いているのとではまるで違う。
門川 今度は高橋さんとコラボレーションで、漆塗りのロボットはどうですか?(笑)それで京都をPRしていただいて。
石原 ぜひお願いしたいですね。

京都発のイノベーションをけん引する「京都市成長産業創造センター」が開所
門川大作京都市長門川 意欲的なお二人ですが、日々ものづくりで大切にされていることは?
高橋 「人」を見直すことですね。故スティーブ・ジョブズさんの言葉にもあるように、これからは「人間性」の時代です。例えばリモコンのボタンが50個もあるテレビみたいに、現代の家電製品は、高性能・高機能を追求した結果、人間が置いてきぼりになっています。だからこそ、もう一度「人」を見直したい。人間の持つ感性を注視し、その微細な表現から多くを感じ取って、人と対話できるロボットにつなげたい。最先端のロボットだからこそ人間性を重視したい―。そんなことを思いながらコツコツ作っています。
門川 最新鋭ロボットも基本はやはり人間ですね。石原さんは、日々どんなことを?
石原 漆という自然素材、それから職人さんが一つ一つ心を込めて作られた道具にいつも感謝しています。そして基本を忘れずに、いろんな素材や現代のセンス・アイデアとミックスしながら、自分なりの技法を開発し、新しくキラキラと輝くものを作っていきたいなと。
門川 お話を聞いて改めて思うのが、京都はものづくりのまちであると同時に「ものがたりづくり」のまちということ。漆器、蒔絵、陶磁器といったものづくりである「物質文化」と、能・狂言、茶道、華道、香道など人の心に深く語りかける「ものがたり」を育んできた「精神文化」が、千年もの間刺激し合ってきたまち。そこに人づくりが加わって、素晴らしい感性や匠の技を生み、人間性あふれる高度で繊細なものが作られてきました。先端産業も、そのどれもが京都のものづくりの伝統に原型がある。私は、これからのものづくりは、幅広い分野の人々のさらなる融合が大切になると確信しています。そしてこのたび、伏見のらくなん進都に「京都市成長産業創造センター」が開所の日を迎えます。中小企業の技術者と大学の研究者とが、ともに新しいものづくりに挑戦する拠点で、コンセプトは「ひとつ屋根の下に」。研究分野の異なる人がひとつ屋根の下、さまざまな研究に取り組むラボ(実験室)を設ける。そこでの自由な交流からイノベーション(革新)につながる成果が挙がると期待しています。ところで高橋さんを中心に開発されたロボット宇宙飛行士「キロボ」は、この8月見事に宇宙に飛び立たちました。これもいろんな方々とのコラボレーションがあったとか。
高橋 はい。大学や企業とのコラボです。実は伏見の会社にも協力していただいています。私が樹脂で手作りしたプロトタイプ(原型)の複製を取ってもらう大切なパートを担ってくださいました。
門川 京都には、いろんな力のある企業がありますね。
高橋 京都の職人さんも、千年前と同じ技法で同じものを作り続けているわけではなく、それぞれの代で常に新しいものを作ろうというマインドがある。だから、その仕事がずっと生き続けるんでしょうね。
門川 石原さんの蒔絵のデザインも、伝統における一種のイノベーションですね。
石原 実は最初は「工芸品といえば古典文様」と思い込んでいたのですが、市産技研の先生に「あなたは大学で油絵を学んだんだから、それを生かしなさい」と叱られまして。以来、自分なりに新しい蒔絵の表現を考えるようになりました。
門川 伝統とは「伝える統(す)べる」と書く。ですが「伝える灯(あか)り」とも書けます。比叡山の「不滅の法灯」と呼ばれる灯明は1200年も光り続けている。常に芯を新しく替え、新しい油を注ぎ続けてきたから伝えられてきた。伝統とは油を切らさないこと。まさに「油断大敵」です。ものづくりの灯りを伝えるべく、お二人にはますます活躍していただきたいですね。私どもも、世界に誇る京都産業界の「技」と、大学のまちならではの学術機関の「知」、そして行政の「力」を融合させ、国の国際戦略総合特区制度も活用しながら、京都発イノベーションの実現に向けて取り組んでまいります。本日はありがとうございました。



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