京都大好きトーク!門川大作市長とゲストの“きょうかん対談”

第二十六回 京都映画人の思いが詰まった「太秦ライムライト」、6月14日封切り!!
門川大作京都市長 × 福本清三さん (俳優) × 海老瀬はなさん (女優)
門川大作京都市長・福本清三さん・海老瀬はなさん 対談写真
門川大作京都市長・福本清三さん・海老瀬はなさん 対談写真
門川大作京都市長・福本清三さん・海老瀬はなさん 対談写真
門川大作京都市長・福本清三さん・海老瀬はなさん 対談写真
門川大作京都市長・福本清三さん・海老瀬はなさん 対談写真
「太秦ライムライト」の撮影も行われた東映太秦映画村

<プロフィール>
福本清三(ふくもと せいぞう)/1943年生まれ、兵庫県香住町(現・香美町)出身。58年に東映京都撮影所に入所。数多くの映画やTV時代劇に出演、斬られ役として活躍。2003年にはハリウッド映画「ラストサムライ」に出演。04年第27回日本アカデミー賞協会特別賞受賞。現在俳優や殺陣師で構成される「東映剣会」の会長も務める。14年公開の映画「太秦ライムライト」に主演、京都を舞台にした「父のこころ」にも出演。共著に「どこかで誰かが見ていてくれる」「おちおち死んでられまへん」。
海老瀬はな(えびせ はな)/1985年生まれ、宇治市出身。2005年京都女子短大在学中に「2005京都きものの女王」に選ばれる。同年松竹の新人女優オーディション「STAR GATE」でグランプリ受賞。06年の映画「釣りバカ日誌17 あとは能登なれハマとなれ!」でデビュー。09年の映画「築城せよ!」、10年の映画「京都太秦物語」でヒロインを演じるなど、映画、ドラマ、舞台などで幅広く活躍。「太秦ライムライト」では、福本さん演じる大部屋俳優・香美山清一の妻役(回想シーン)で出演。

映画はキャメラに映る人だけでなく、スタッフ全員でつくるもの
福本清三さん門川市長 素晴らしい映画「太秦ライムライト」がいよいよ公開。この映画の主演で、「5万回斬られた男」の異名を取る福本清三さんと、その妻役の海老瀬はなさんに登場いただきました。福本さんは、15歳で東映京都撮影所に入られたそうですね。
福本さん 中学を出たら住み込みで働き、手に職をという時代。僕も田舎から京都に出て、知り合いを通じて撮影所に。あっという間に50年が過ぎました。当時は一番映画がはやったころで、「じゃあ明日から来い」と誰でも入れてもらえたんです。
門川 いやいや、福本さんはえび反りという命懸けともいえる独特のポーズなどで存在感を放ち、斬られ役を究められた。ハリウッド映画「ラストサムライ」で抜てきされたのも、それらが絶賛されたからですね。
福本 とんでもない。ただ、その作品の撮影現場でも、映画はキャメラに映る人だけでなく、スタッフ全員でつくるものだと改めて実感しました。俳優・スタッフが一丸になると、それが画面ににじみ出るんだと。
海老瀬さん 分かります。みんなが本当に一つになった映画は、画面から伝わりますよね。
福本 それを僕は最初、映画「仁義なき戦い」で深作欣二監督から教わりました。「映画の主役は一人じゃない、画面の1コマ1コマで主役が変わっていくんだ」と。大部屋俳優の名前も覚えてくれていた深作監督の下で、みんなの気持ちが盛り上がって、素晴らしい映画が生まれた。
門川 太秦での映画づくりの神髄ですね。そんな数多くの名作がどんどんと創作されてきたのが映画の都・京都。そこで生まれ育たれ、「きものの女王」でもご活躍の海老瀬さんは、いま京都のまちにどんな思いを?
海老瀬 短大卒業後東京に出て、初めて京都の良さに気付きました。路地を入れば町家があり、歴史や伝統を感じる場所がそこかしこにある。住んでいるころは当たり前でしたが、自分の言葉遣いや雰囲気も京都の空気に育てられたなと。久々に撮影で戻ると改めていい所だと思いますし、すごく落ち着きますね。
門川 豊かな自然に寺社、能・狂言、茶道、華道などといった伝統文化とそれを取り巻くものづくりが継承されてきた京都。その土壌の上に、映画という総合芸術産業が育った。逆に言うと「東洋のハリウッド」とも称された太秦で、素晴らしい映画が撮り続けられることが、京都が京都であり続けることにつながるのだと思います。

時代劇を大事にすることは、未来をつくること
海老瀬はなさん福本 その太秦を舞台にした「太秦ライムライト」には、京都が生んだ時代劇映画に思いを懸ける人たちがたくさん登場します。
門川 映画には深い学びがありますね。映画好きだった私の父の口癖は「映画は早学(はやがく)」。いろんなことが早く、そして深く学べると。文化庁長官を務めた故河合隼雄先生も、大戦で世界の信用を失った日本の電化製品などが、戦後世界で売れるようになった背景には、日本の映画や文学の影響が大きいとおっしゃっていました。とりわけ映画は日本人の生き方・精神文化を世界に発信した。中でも時代劇は日本独特の映画ジャンルです。それを継ぐ人々の思いを伝える「太秦ライムライト」の主人公は福本さんがモデルですね。
福本 お話をいただいたときはびっくりしました。僕が主役なんてとんでもないと。しかし京都市さんや多くの方の援助もいただき話がまとまって。最終的にお受けしたのは、時代劇の厳しい現状を脚本家の大野裕之さんがよく理解し作品にしてくださったのが大きいですね。時代劇が少なくなり立ち回りでも若い人がなかなか育たないのですが、映画では僕が演じる大部屋俳優がヒロインの新人女優に殺陣を教え、斬られ役をつなげていきます。チャンバラは時代劇の魂ですから。
海老瀬 私も演じるうち、福本さんと主人公が重なって、時代劇に対する思いがずしんと伝わってきました。時代劇に憧れて撮影所に入るヒロイン、途中で夢を諦めてラーメン屋さんになった人など、いろんな登場人物の思いが重なり、続けることの大変さ、大切さ、そして実際55年続けてこられた福本さんの偉大さを改めて感じました。
門川 ほんまに目頭が熱くなりましたね。この映画は、時代劇に精進してこられた大部屋俳優の生きざまが、私たちに進むべき道を示してくれています。京都を訪れる外国の方が「世界の国々が近代化で個性をなくす中、京都には素晴らしい個性、伝統が継承され、創造され続けている」と称賛される。同じことが時代劇にも言えます。時代劇を大事にすることは、歴史や先人の生き方を学んで未来をつくること。しかしテレビも含め時代劇の制作本数が激減している現状では、その継承は難しい。京都市では、映画やドラマをはじめロケ協力を年間200件以上行うなど、さまざまな取り組みを進めていますが、時代劇支援にも市民の皆さまと共に真正面から取り組んでいかなければと思っています。

魂を揺さぶる京都の映画人
門川大作京都市長海老瀬 京都にはすてきな場所がたくさんありますが、ロケでは使えないなど制限が多いのはちょっと残念です。京都の方に映画への愛情をさらに持っていただけたら、よりスケールの大きな京都映画ができると思います。
門川 おっしゃる通りですね。ある映画製作者の言葉に、ハッとさせられたことがあります。「京都にはほんまもんがいっぱいあるから、ほんまもんを見せるべきだ」と。それにしても映画人はセットでもとことんリアルを追求されますね。黒澤明監督は、セットのたんすの中に映りもしない着物を入れておくよう言われた。そんな映画人の気質が人々の魂を揺さぶるのですね。
海老瀬 私もスタッフさんに言われたことがあります。シーンでは開けないかばんに、きちんとお財布とハンカチを入れるようにと。それに東京の撮影所なら、衣装の着物も撮影後に「脱いだらそのままで」と言われるんですけど、京都だと「裾よけだけは自分で畳んで」とも。時代劇で知らないことだらけの私に、衣装さんらが細かなところまで叱ってくださるのがうれしいです。映画に関わる人全員がプライドを持って仕事をしている、まさに"職人"ですね。
門川 見えないところにも神経を張り巡らせる―その精神文化は、京都の強みである"極み"にも通ずる気がします。そういうほんまもんの映画づくりが、画面から伝わるのですね。すごいです。

「太秦ライムライト」のここが見どころ
福本 そんな映画製作には大変な予算が掛かるのですが、例えばお客さんお一人お一人からわずかでも出資してもらう仕組みが広がればと思っています。全国の映画好きの方に製作にも関わってもらえたら、映画を見に来る人ももっと増えると。
門川 京都市でも、昨年秋には市民の皆さまや企業から募った寄付金を製作費の一部に当てるスキームを新設しました。昨年度は6千万円余りものご寄付を頂戴し、「太秦ライムライト」も支援させていただきました。本年度も京都の映画やアニメなどの振興にと寄付を募っています。また、若手製作者支援の「京都映像フォーラム」や人材育成事業に加え、10月には京都国際映画祭も開催するんですよ。
  さて「太秦ライムライト」の公開まで間もなく。最後に、お二人からメッセージを。
海老瀬 すごく純粋な思いが詰まった映画で、見た後はきっと温かい気持ちになっていただけます。必ず心に響くと思いますので、劇場にぜひ足を運んでください。
福本 一番お伝えしたいのは、映画のサブタイトルでもある「どこかで誰かが見ていてくれる」。僕ら斬られ役のような目立たない存在でも、どんな仕事でも一生懸命やれば、絶対誰かが見てくれている―このメッセージが、多くの人の心に届けばと願っています。
門川 ほんまもんが凝縮された京都の映画「太秦ライムライト」が、時代劇復興の良い契機となりますように、ともどもに頑張りたいです。

大野裕之さん太秦の心を次世代へ
大野裕之さん (プロデューサー・脚本家)
 このたび、多くの方々のおかげで、「太秦ライムライト」が完成しました。構想から7年。自分も実際に時代劇のエキストラを何回もやらせていただき、殺陣を習い、真冬の夜の撮影現場で刀を抜いて走りました。拙い脚本かもしれませんが、太秦の魂を込めたつもりです。何より「日本映画を支えてこられた福本清三さんの主演作をぜひ見てみたい」という皆さんの思いの結晶です。映画は、スターだけではなく、画面の片隅にしか映らないエキストラや多くのスタッフら、表には出ない存在があって初めて成立します。本作は、映画界のみならず、全ての「縁の下の力持ち」のための応援歌なのです。他人に尽くすこと、仕事への謙虚な誇りを持つこと、卓越した技術のために努力を怠らぬこと…斬られ役の美学は私たちに多くのことを教えてくれます。日本の大切な心を受け継いで、若い世代へとつなぎたいと願っています。




第26回対談を印刷する

京都新聞COM 〒604-8567京都市中京区烏丸通夷川上ル