京都大好きトーク!門川大作市長とゲストの“きょうかん対談”

第二十七回 住む人も訪れる人も、歩きながらあいさつを交わせるまちに
門川大作京都市長 × 小山薫堂さん (放送作家、脚本家、「京都館」館長、下鴨茶寮代表取締役社長)
門川大作京都市長・小山薫堂さん 対談写真
門川大作京都市長・小山薫堂さん 対談写真
門川大作京都市長・小山薫堂さん 対談写真
門川大作京都市長・小山薫堂さん 対談写真
門川大作京都市長・小山薫堂さん 対談写真
料亭「下鴨茶寮」にて

<プロフィール>
小山薫堂(こやま くんどう)/1964年熊本県生まれ。放送作家として「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」など多くの番組を手掛ける。2009年第81回米アカデミー賞外国語映画賞、第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した「おくりびと」で脚本を担当。同年から東北芸術工科大教授。熊本県のPRキャラクター「くまモン」をプロデュース。14年4月から京都市の京都観光おもてなし大使、同9月から「京都館」館長。著書に「小山薫堂が90歳のおばあちゃんに学んだ大切なこと」など。

「京都が日本を代表する」という気概で
小山薫堂さん門川市長 本日は、「くまモン」の生みの親、そして京都市の首都圏向け情報発信拠点「京都館」新館長・小山薫堂さんをお迎えしました。京都に深い愛着を抱かれ、現在は料亭「下鴨茶寮」社長の顔もお持ちですが、そもそも京都との関わりは?
小山さん 生家が貸し衣装業を営んでいたので、子どものころ西陣への仕入れにわくわくしながらついて来たのが始まりです。京都の大学に進みたいと思いつつ、結局東京の大学へ。でも京都がどこよりも好きで、学生ながら河原町のバーにボトルキープして拠点をつくった気になっていました。仕事を始めてからも大阪出張なら泊まりは京都で、次第になじみの店や友達も増えました。そんな僕がまさか京都の料亭を引き継ぐなんて、夢にも思いませんでしたね。
門川 この伝統ある「下鴨茶寮」を引き継がれるときは、どんな思いで?
小山 まず考えたのは、働く皆さんがここを愛して誇りを持って発信してほしいということでした。同時に歴史ある料亭ですので、水が少しずつ岩にしみ込むような変革を心掛けました。そして京都の方々が誰かと出会い、何かを始めるきっかけになる場になればいいなと。
門川 その試みの一つが、各界でご活躍の方々が交流する「下鴨茶寮文化茶論(さろん)」。いいですね。小山さんは京都が大事にしてきたものの本質をつかみ、京都を良くしようと実践されている。うれしいです。
小山 僕はくまモンのプロデュースで熊本に携わってきましたが、熊本のまちでは「あそこのお寺はすごい。かくかくしかじかでこんな歴史があって…」とまち唯一ともいえる観光資源を、大切な宝物として紹介してくれます。しかし京都にはそういう資源にあふれている。そう思うと「京都が日本を代表する」くらいの気概で、京都に来た人を地方にいかに流してあげるかを考えてもいいと思います。

人を喜ばせたときの幸福感は宝物
門川大作京都市長門川 おっしゃる通りですね。全国の国宝の2割、208件が京都市にあります。1件といっても例えば国宝「醍醐寺文書聖教(もんじょしょうぎょう)」は1件で7万点。二条城の重要文化財の襖絵も1件で1016面もあります。質・量ともに計り知れない日本の宝が京都市に集中しているんですね。これらを守るのは大変で、全力を注いでいるところです。一方で歩いていると出合う何げない街角の面白さも京都の魅力。京都市では2010年に「歩くまち・京都」憲章を制定していますが、小山さんが日頃歩いて感じる京都の魅力とは?
小山 京都はどこを歩いてもわくわくします。まちのちょっとしたたたずまいや昔のお店の看板、まるで映画のセットの中を歩いているような気分になる場所もあります。これだけ都会でありながら、地蔵盆にも出合いますし。若い方が一人で営むカフェや小物屋さんも面白いですね。ああいうのは東京にありそうでない。個性的なお店を探し歩く喜びがあるなと、いつも思います。
門川 伝統的なものと新しいものの混在も、京都の特色。路地に小さなお店がたたずむ風景は、昔ながらの町割りが残るまちならではかもしれません。
小山 そうですね。都会でありながら、すぐ近くに山が見える。都会と田舎の絶妙なバランス。和と洋のバランスもすごく良い。だから、思わず歩きたくなる。実際、僕は京都に来て歩数計をつけるようになったんです。東京では少ないときは1日2千歩くらいですが、京都では1万歩歩くように。「歩くまち・京都」憲章は歩くことを軸に市民を巻き込もうとする、そのコンセプトが素晴らしいと思います。ただ、それがまだ市民の方々にはうまく伝わっていないのが歯がゆい。歩くといえばこの前熊野古道を歩いたとき、知らないおじさんが6本入りのアイスキャンディーを持ってきてくれたんですよ。お遍路さんの接待みたいに。暑い中いただいたその1本がオアシスのようで。「何でくれるんですか」と聞いたら、「特売の日ならたった250円で買えるアイスキャンディーで、6回も感謝されるんや」と。ご本人が気持ちいいというわけです。こんなふうに、人を喜ばせたときの幸福感は宝物だと思う。京都市民の100人に1人でもいい、京都に来た人を喜ばせる取り組みができればまちの魅力がもっと増すのではないでしょうか。
門川 京都市民と来られる方が出会い、お互いが喜びを実感できるまちにしたいですね。
小山 それが一つのブランドの作り方。ブランドとは「楽しそうだ」と思わせる何かが大切です。ネーミングの力も大きい。“憲章”と聞くと、市側が一方的に告知している印象を受けてしまいます。例えば、皆で一斉に電気を消す「100万人のキャンドルナイト」というイベントがありましたが、「100万人が歩くまち」とでも言えば誰もが参加したくなるのでは?

いよいよ11月着工、四条通の歩道拡幅
四条通歩道拡幅後のイメージ(大丸京都店前から西方を望む)門川 なるほど!小山さん。すてきですね。これまで京都を訪れた方に毎年アンケートを行い、「良くなかった」点は懸命に改善してきました。その一つに、車の渋滞があります。対策として乗用車を止め公共交通に乗り換える「パークアンドライド」運動などを展開。その結果、移動手段に何を使うかという10年ごとの調査で、自動車と答えた方が28%から24%と4ポイント減、鉄道・バスは3.3ポイントアップしました。「歩くまち・京都」憲章でも、「世界一公共交通の便利なまちにする」とうたっています。そしていよいよ四条通の歩道の幅を最大約2倍に、車道を4車線から2車線にするんです。。
小山 四条通には、車がずらりと止まってますよね。
門川 そんな現状を打破して、まちをもっと元気にしようと、商店街をはじめ各方面と協議し8年がかりで合意形成しました。人口100万の大都市で、中心地の道路を公共交通優先道路にする全国にも例のない画期的な取り組み。市民も観光客も買い物や歩くことがより楽しめるように、バス停も車道に張り出す「テラス型」に。11月に着工し、来年秋に基本工事を完了させます。
小山 それは、楽しみですね。
門川 さらに京都駅八条口も京都のおもてなしの玄関らしく、「歩くまち・京都」を軸にした公共交通優先の場所に。八条通の車道を6車線から4車線に減らして歩行者空間を広げる。駅前広場のマイカー駐車場をなくして、バスなどに乗り継ぎがしやすい配置にします。こうした工事を11月から始め、2年後の12月には完成させるんですよ。

一人一人の笑顔や声掛けが、まちの魅力につながる
小山 僕は「歩くまち」の究極の姿は市民の皆さんが健康になること、京都の平均寿命が上がることだと思います。京都には和食の店をはじめいろんな健康要素がそろっているので、“日本一健康なまち”を標榜してもいい。
門川 公共交通機関を使って歩いておなかをペコペコにすかせたら、おいしいものが待っている…。
小山 ソクラテスが言ったように「空腹こそ最高の調味料」。熊野古道でへろへろになって食べたおむすびが、僕の最近のベストです。どんな三つ星レストランよりもおいしい。これって誰もが感じられる幸せで、食べるときの気持ちを少し変えれば、本当に豊かな食を味わえることになります。
門川 そうですね。朝10分早く出て、歩く楽しさを感じる。近所の子どもが通学路でおじいちゃん、おばあちゃんに「おはよう」とあいさつする。そしてお地蔵さんもいるまちを歩いて、公共交通に乗る。帰りは職場の仲間と車中でコミュニケーションを取る、車窓から趣ある町並みを眺める…。何げない日常生活も「歩くこと」でもっと楽しむことができますね。最後に、小山さんがこれからの京都に望むことをお聞かせいただけますか。
小山 道路や景観は行政で整えられますが、究極的には一人一人の笑顔や声掛けが、まちの魅力になります。今日、市長に京都弁独特のイントネーションで「おはよう」と言われ「うわあ、いいな」と思ったのですが、外から来た旅人はこの京都弁を聞くだけでテンションが上がる。ですからもっと声を掛け、日本一あいさつがすてきなまちになるよう市民が変わる―それが京都の魅力を一番増すことだと思います。
門川 熊野のアイスキャンディーをくれたおじさんのように。住む人も、訪れる人も歩きながらあいさつを交わせば、温かい気分に包まれるわけですね。本日は「歩くまち・京都」の実現に向けて素晴らしいアイデアをいただきました。本当にありがとうございました。




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