京都大好きトーク!門川大作市長とゲストの“きょうかん対談”

第二十八回 「一大文化サロン」としての京都が、未来を担う若者を育てていく
門川大作京都市長 × 井浦 新さん (俳優、クリエーター) × 小山明美さん (ホテルコンシェルジュ)
門川大作京都市長・井浦 新さん・小山明美さん 対談写真
門川大作京都市長・井浦 新さん・小山明美さん 対談写真
門川大作京都市長・井浦 新さん・小山明美さん 対談写真
門川大作京都市長・井浦 新さん・小山明美さん 対談写真
元離宮二条城「清流園」にて

<プロフィール>
井浦 新(いうら あらた)/1974年、東京都生まれ。映画を中心にドラマ、ナレーション、新聞や雑誌の連載など幅広く活動。NHK「日曜美術館」の司会を担当。京都国立博物館文化大使を務め、日本の伝統文化の価値を広く伝えるために、一般社団法人 匠文化機構を立ち上げる。
小山明美(こやま あけみ)/1971年長野県生まれ。ハワイパシフィック大卒。95年からシェラトンワイキキホテルに勤務。99年に日本へ帰国後、京都ブライトンホテルに入社。現在、コンシェルジュの国際ネットワーク組織「レ・クレドール・ジャパン」の正会員。2013年2月よりザ・リッツ・カールトン京都のコンシェルジュ。京都観光おもてなし大使。京都伝統産業ふれあい館イノベーション検討会議外部委員も務める。

新鮮なまなざしで京都の魅力を掘り下げる
井浦 新さん門川市長 旅好きで、京都にも度々足を運ばれる俳優の井浦新さん、日本を代表するホテルコンシェルジュ・小山明美さんをお招きしました。まずは、お二人の京都との関わりは。
井浦さん 初めて京都に来たのは小学生の時。旅好きの両親と一緒でした。子どものころは歴史・文化や風土、手仕事に関心のあった父と全国各地を巡り、最近は興味深い伝承が残る、京都でもマニアックな場所へ。カメラとノート、ペンを手に、京都の歴史をつなぐフィールドワークのような旅を楽しんでいます。
門川 特に印象に残っているのは?
井浦 去年、鞍馬の火祭を担う氏子さんとのご縁があり、お祭りを内部から記録させていただいたこと。火の粉を浴びながらの撮影でした。いにしえから続く人間と火の深い関わりに触れ、鞍馬は京都の中でも独自の発展を遂げてきたと感じましたね。
門川 それは得難い経験ですね。旅のプロとして、京都のさまざまな顔を案内してくださっている小山さんは?
小山さん 私は学生時代からの海外生活を経て、15年前に帰国。京都のホテルにコンシェルジュとして就職しました。でも、当時は京都も日本文化も全く知らずに戸惑ってばかり。お茶席にお客さまを案内しながら、自分が正客(しょうきゃく)の場所に座ってしまうほどでした。「これはまずい」と勉強を始め、お寺や神社には季節ごとに、美術館などにもよく足を運んでいます。今は京都にどっぷり漬かり、もう動きたくないですね(笑)。
門川 お二人は新鮮なまなざしで、京都の魅力を掘り下げてくださっている。ありがたいですね。市でも、京都人が地元の価値を再認識して次の世代に伝え、発信する仕組みづくりを始めています。東京五輪を見据えて、京都の小・中学生が自分たちの文化を日本語でも英語でも説明できるように。それが、ほんまもんのおもてなしにつながると。小山さんは国際的なコンシェルジュのネットワーク「レ・クレドール・ジャパン」正会員でもありますが、プロのおもてなしには相当なご苦労も?
小山 いろいろなお客さまにぴったりな場所をご案内できるように心掛けています。食べ歩いたお店は5千軒ほど。寺社にはお手伝いに行くなど、信仰への理解が深まるうちに徐々に受け入れられて。やっとここまできたとの思いですけど、まだ道のりの10分の1、もしかしたら100分の1かもしれませんね。京都は奥が深いですから。

京都を語る上で大切な「旅人」の視点
小山明美さん門川 小山さんのような“観光のプロ”に支えられて、旅は掛け替えのないものになります。「観光こそ人なり」ですね。市でも、観光を盛り立てる人づくりを大学とも連携して進めています。観光学は幅が広くて奥が深い。文化芸術、宗教、食文化、心理学、もちろん語学も。人間が生きる上で大事なもの全てですね。ところで、各地を訪ねる井浦さんにとって「旅」とは?
井浦 まず、素直に楽しいこと。そして旅から学んだもの―出合った自然、文化財、人が、次第に自分の仕事に昇華できるようになってきました。例えば道を教えてくれたおじいさんの表情が、演技の本番中にふと自分の中によみがえる。モノと出合えば、どんな方がどんな思いで作ったのか思いをはせると、その心が感じ取れる。芝居とは元来虚の表現ですが、旅でつかみ取ったリアルなものをコラージュ(貼り付け)しながら人物像をつくっています。それと、京都と関わる上では「旅人」の視点も大事にしています。京都を客観視する、深く愛する、この両方の視点を持てるのは「旅人」故ですので。
門川 外からの視点は実に大切ですね。京都から離れて初めて京都の良さを知るとよく伺います。そもそも京都のまちも全国各地から、外国から学んだものが生かされています。それがさらに京都の中で独自の文化を醸成し、また全国に世界に大きな影響を与えている…。
 お二人は京都について、どうお感じになっていますか?

日本文化の本質が感じられる京都
門川大作京都市長井浦 いろんな祭りや神事を撮影したり、文化財に触れて感じるのは、京都が常にその時代の最先端を走ってきたということ。時代時代の「最新」の蓄積が京都なのだと思います。長い歴史を前につい見逃しがちですけど。今でも、古き良きものをしっかり受け継ぎながら現代に合うものをと挑む職人さんを目にするたび、新たなものを生み出そうとする京都の気質を感じます。
小山 他県から来た私たちにすれば、京都は素晴らしい文化であふれている。その感動を京都の方とも共有したくて、いろいろな形の勉強会を開いています。これからは私も裏方に回って、人を育てるのが使命かなと。
門川 京都に伝わる日本人の暮らしの美学、生き方の哲学をまず京都人自らが再認識し、説明できるようになりたいですね。この前、インドのモディ首相の来日直前、側近の方から電話がかかってきたんです。モディ首相は、東京での安倍首相との会談前に、京都を散策しながら日本とインドの未来について語りたいのだと。そこで東寺をご案内しました。和やかな京都での時間を経て、東京でも随分話が深まったようです。
井浦 日本の良さ、日本人の文化を感じられた上で、政治・経済の話も進んだのですね。
門川 ええ。日本文化の本質を、京都で感じていただけたのではないでしょうか。ことし7月、世界で最も影響力があるといわれている米国の旅行雑誌「トラベル・アンド・レジャー」誌の読者投票で、京都が世界一に選ばれました。これはすごいことで、国内以上に外国では大きな話題なんです。世界から尊敬のまなざしが注がれる日本の国民性・精神文化を再認識し、磨いていく活動の先頭に、この京都が立たせていただいているように感じています。最後に、お二人がこれからの京都に望むことは?

住んでよし、訪ねてよしのまちを
小山 市民の皆さんに京都の魅力をもっと知っていただきたいですね。伝統や古典に学び、その上で新しいことにチャレンジする。そして外国からのお客さまに京都を理解してもらうために、国際感覚を持つ人材育成が大切だと感じています。グローバル化の中、時には「敷居」を下げることも必要かもしれません。でも「一見さんお断り」といった昔ながらの慣習をはじめ、頑として譲らないところがあってもいい。ただ外国の方には「ノー」だけでは通じませんので、文化の背景を伝え、理解を促す姿勢も大切だと思います。
井浦 京都のまちは、それ自体が日本の姿を内外へ発信する「一大文化サロン」。そこにもっと注目されてはどうでしょうか。学生や若い職人・アーティストなどに、京都の本物、例えば貴重な文化財のある非公開の場所などを今以上に開いていく。そうして、日本文化の本質や美意識などを学んでもらい、日本の未来を創る若者を育てていく。それは京都でしかできないことです。それができれば、京都はさらに深く発展していくと思います。
門川 その通りですね。京都に伝わるあらゆる文化遺産・伝統行事は、その価値を再認識して生かさなければ次代につながらない。その仕組みづくりが大事ですね。京都には相手の立場に立ったおもてなしを重んじると同時に、それぞれの場に応じた特有のルールを守る頑固さもあります。訪れた方にはそうした文化を理解いただいた上で、「敷居」を越えやすくなるように心掛けることが大事だと思います。京都市では、東京五輪などを見据えた新たな観光振興計画を作って、191の新たな事業を盛り込みました。中でも欠かせない視点が、訪れる人・住む人が共に満足するまち。「世界が憧れる観光都市」、そして世界一安心安全な、優しさあふれるおもてなしのまち! 一人暮らしや認知症のお年寄りにとっても安全で、優しさがあふれている…。住んでよし、訪ねてよし、学んでよし、子育てしてよしの京都をつくっていきたいですね。ありがとうございました。




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