京都大好きトーク!門川大作市長とゲストの“きょうかん対談”

第三十三回 京都会館再整備 ロームシアター京都いよいよ竣工! 新たな文化芸術の拠点に
門川大作京都市長 × 小澤征爾さん(指揮者) × 澤村諭さん(ローム社長)
門川大作京都市長・小澤征爾さん・澤村諭さん 対談写真
門川大作京都市長・小澤征爾さん・澤村諭さん 対談写真
門川大作京都市長・小澤征爾さん・澤村諭さん 対談写真
門川大作京都市長・小澤征爾さん・澤村諭さん 対談写真
門川大作京都市長・小澤征爾さん・澤村諭さん 対談写真
京都の音楽文化などについて語り合う門川市長、小澤さん、澤村さん(左から)

<プロフィール>
小澤征爾(おざわ せいじ)/1935年奉天(現中国・瀋陽)生まれ。桐朋学園短大を卒業後、単身渡欧。59年フランスのブザンソン国際指揮者コンクールで優勝。60年以降、カラヤン、バーンスタインに師事。73〜2002年ボストン交響楽団、02〜10年ウィーン国立歌劇場のそれぞれ音楽監督を務める。
澤村諭(さわむら さとし)/1950年京都市生まれ。75年立命館大卒。77年に東洋電具製作所(現ローム)入社。2005年に取締役営業統括本部長。07年に常務、09年専務を経て10年4月社長に就任。公益財団法人ロームミュージックファンデーション理事。

伝統と最先端との融合で結ばれた音楽の絆
小澤征爾さん門川市長 本日は世界的指揮者の小澤征爾さん、そしてローム社長の澤村諭さんと懇談できてうれしいです。小澤先生はよく京都にいらっしゃっていますが、初めて来られたのはいつですか?
小澤さん 中学の修学旅行の時です。祇園を歩いたり、妙心寺に行ってとりこになったり、あんな楽しい思い出はないというくらいでした。妙心寺はその後京都に来るたび訪ねていましたね。それから兄貴が奥さんともども京都好きで、かつて九条河原町に宿屋を建てたんです、女性専門の。
門川 先進的ですね。
小澤 女性専用ホテルのはしりですよ。だから僕は泊めてもらえなかった、男だから(笑)。その後、ニューヨーク・フィルハーモニックでバーンスタインのアシスタントをしていた時に日本公演があり、京都の歌舞練場に踊りを見に行きました。バーンスタインが楽屋で舞妓さんと話す写真がありますよ。そして今、僕たちの音楽塾(小澤征爾音楽塾)を一緒に作ってくれているロームさんは、京都の会社ですからね。
門川 すてきなご縁が続きますね。さてそのローム・澤村社長は京都のご出身。
澤村さん 私は生まれてからずっと京都で、会社もローム。関わったところは全部、京都です。幼いころは何も思いませんでしたが最近、つくづく良いまちだなと。いろいろなところ全てに物語があり、その歴史の積み重ねで成り立っている。そして古いものを大切にする一方、新しいものも結構取り入れる。そういう独特の雰囲気が好きですね。
門川 最先端技術を開発するロームさんが、クラシックの小澤先生の音楽塾を支援する。それも古きも新しきも大切にという流れ、理念に沿いますね。
澤村 50年にわたる音楽文化支援は創業者の佐藤研一郎の強い思いから始まり、事業活動を通じて文化の進歩向上に貢献することをわれわれは企業目的に掲げて継続して実施しています。

京都のまちが育てた京響
澤村 諭さん門川 私も京都に生まれ育ち、ちょうど澤村社長と同い年。育ったのは京友禅をはじめとする伝統産業の地域です。昼間は機織りの音が響いていましたが、夜は仕事を終えた職人さんが趣味でやる謡曲が聞こえていた。日常生活で文化芸術を楽しむ。そういう生き方が京の文化を支えてきたと感じますね。一方戦後すぐ、私が小学生のころに京都会館ができ、新しい音楽の動きも盛んになった。京響(京都市交響楽団)が開く京都会館の子ども向け音楽会などにはよく行ったものです。
小澤 当時の京都市長が「オーケストラを作る」と言って、指揮者カール・チェリウスを迎えて楽団を作った。これは僕ら音楽を勉強する者にとってはショックでしたよ。自治体がオケを。一番あり得ないことが起こったわけですから。
門川 私は京響の楽団長なんです。外国の方に「楽団長、楽器は何ですか」と聞かれると、「私は“ほらを吹いて”います」と言って通訳の人を困らせる(笑)。「京響を日本に、世界に冠たるオーケストラに発展させる」と言うと、広上淳一さん(京都市交響楽団常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザー)が「それはもう、ほらじゃなくなったよ」とおっしゃってね。広上さんが来て7年、演奏力は飛躍的に上がりました。
小澤 それは宝ですよ。まちの人が誇りに思うようになってきたら、素晴らしいもの。

ハードとソフトにハートを入れる
門川大作京都市長門川 いよいよ今年8月に京都会館が生まれ変わり、「ロームシアター京都」が竣工(しゅんこう)。来年1月のオープンからは、小澤先生が取り組んでおられる「子どものためのオペラ」など小学生向けの事業も予定しています。京都会館誕生時の思い出が重なって、感慨深いですね。オープニング事業は小澤先生が検討委員会の委員長として、井上八千代さんをはじめ幅広い分野の方と議論し、練り上げてくださった。ありがとうございます。
小澤 いえいえ。僕は建物は建てただけでは意味がなく、中身が問題だと思っています。5年、10年、20年先を見据え、継続性をもって進めなければいけない。相当大変ですが、費やすエネルギーは後で絶対戻ってくる。若い人が親しみ、まちの人も「行くのが喜びだ」となれば、素晴らしいですよね。
門川 ハードもソフトも大事、そこにきちんとハートも入れることですね。これから50年間、京都会館にロームさんの名前を冠し、応援していただくという素晴らしい関係もできました。
澤村 京都会館は市民から幅広く愛されてきた会館。ですからロームシアター京都になっても、親しまれ続けたい。今度はオペラもできるようになりますし、小澤先生をはじめ世界の音楽家にたくさん来ていただきたいですね。
小澤 今も昼間はにぎやかなかいわいですが、夜も人がいっぱい訪れる場所になればいいですね。
門川 ロームシアター京都の東側、公園からの道を再整備し、レストランやブック&カフェなども設けて人々が集う憩いの場にします。9月には市バスが地下鉄の駅から巡回するなどアクセスも便利に。京都に宿泊する外国のお客さまの4割は欧米などからなのですが、そこなら音楽会の後に食事するスタイルでしょう。なのにロームシアター京都周辺が夜しーんとしているのはもったいない。ロームさんはもとより、幅広い方と協力してにぎわいを作っていきたいですね。そしてもちろん子どもが音楽と触れ合う環境づくりにも力を注いでいきます。
小澤 音楽に関して、日本は歴史的にいいところをいっています。明治期、西洋文化を早く取り入れようと音楽を使った。津々浦々の小学校に足踏みオルガンが導入され、子どもだけでなく楽器を弾ける先生も育てられたんです。
澤村 確かに、小学校にはオルガンも、ピアノもありましたね。
門川 ある小学校に古いピアノがあったのですが、これがスタインウェイ。記録では今なら5千万円相当のものを地域で買って寄付された。また、戦後すぐに堀川高校に音楽科ができ、それが音楽短期大、後に京都市立芸大の音楽学部に。邦楽など伝統音楽を大切にしつつも、新しい音楽を若人に学ばせようという土壌が京都にはあったわけですね。その精神を受け継ぐように今、ロームさんも小澤先生と志を共にしていらっしゃる。

子どもたちの気持ちをつかむ音楽を
澤村 音楽を支援しているロームミュージックファンデーションは、設立以来25年間で414人の音楽学生を奨学生としてサポートし、多くの若者が海外にチャレンジしています。また、小澤征爾音楽塾では16年間で千人を上回る学生に最高の指導を受ける機会を作っています。素晴らしい音楽家が数多く生まれ、ロームシアター京都に集い、披露していただくことを楽しみにしています。
小澤 音楽塾では僕らがじかに若い人と関わり、少しでも豊かな音楽家になってもらおうと楽器ごとに指導し、シンフォニー(交響曲)やオペラも教えています。それからもう一つ考えているのは、小中高生にロームシアター京都に来て、とにかく演奏を生で聴く体験をしてもらいたいということ。特にオペラは筋をたどりながら自然と音楽が聴ける。そういうぐっと凝縮された経験が、その人の人生にとって何か良い出発点になったらと。それが「子どものためのオペラ」で、公演のほか練習も見てもらえたらいいなと思っています。
門川 以前から小澤先生は「子どもたちにオペラを感じさせたい」と熱心におっしゃっていましたね。未来を担う子どもたちがオペラで豊かな感性を養う。これは小澤先生からの最高のプレゼントじゃないでしょうか。ロームさんや学校現場と連携しながら、その志を生かしていきたいとあらためて思っています。
小澤 この間、みやこめっせ(京都市勧業館)で「子どものためのオペラ」をしたんです。会場はとても広くて床が真っ平らで、後ろの方は見えない。「どうやって子どもの気を引き続けようか」と困って思いついたのが、いつもはステージ上でする楽器紹介。「みんな、開演してからステージに入ってきてくれ」と頼みました。本番で僕が「バイオリン!」と言うとバイオリニストが走ってくる、「ティンパニー!」と言うと誰かがティンパニーを押して奏者が叩き、「ハープ!」と言うと台に乗せ押しながらハープを弾いて登場。それが大成功! 子どもたちにはそれだけでもいいのですよ。なるほどオーケストラとはこういうものだなと思ってもらえたらいい。これをロームシアター京都でもやりたいなと思っています。せっかく劇場ができて、子どもたちが来てくれるのだから、その気持ちをつかまなきゃ。
澤村 こんな感じでね、小澤先生はアイデアが次々と出てくるんですよ。
門川 京響も演奏力が世界で高く評価されています。ロームシアター京都のオープンがますます楽しみです。ありがとうございます。




第33回対談を印刷する

京都新聞COM 〒604-8567京都市中京区烏丸通夷川上ル