京都大好きトーク!門川大作市長とゲストの“きょうかん対談”

第三十四回 琳派400年! 「世界の文化首都」への飛躍を目指して
門川大作京都市長×河野元昭さん(京都美術工芸大学長)×木村英智さん(「アートアクアリウム」アーティスト)
門川大作京都市長・河野元昭さん・木村英智さん 対談写真
門川大作京都市長・河野元昭さん・木村英智さん 対談写真
門川大作京都市長・河野元昭さん・木村英智さん 対談写真
門川大作京都市長・河野元昭さん・木村英智さん 対談写真
門川大作京都市長・河野元昭さん・木村英智さん 対談写真
京都芸術センター(京都市中京区)での座談会に出席した皆さん

<プロフィール>
河野元昭(こうの もとあき)/1943年東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了(美術史)。95年同大学院人文社会系研究科教授。2014年4月から現職。東京大学名誉教授、秋田県立近代美術館名誉館長。琳派400年記念祭呼びかけ人。専門は琳派、円山応挙、葛飾北斎など江戸時代の日本美術。著書に「琳派 響きあう美」など多数。
木村英智(きむら ひでとも)/1972年東京都生まれ。和をテーマに、金魚などの魚が泳ぐ様子を照明や音響などを使って演出する「アートアクアリウム」という芸術表現を確立。水槽に埋め込んだ京友禅に投影した映像と金魚で柄を表現するなど、伝統文化と融合させた作品も手掛ける。今年は国外初の試みとして、イタリア・ミラノでアートアクアリウムを展開。

芸術、それぞれの道のきっかけ
河野元昭さん門川市長 今年は、琳派の祖とされる本阿弥光悦が京都・鷹峯に光悦村を築いてから400年。本日は琳派研究の第一人者である京都美術工芸大学学長・河野元昭さん、そして水槽で泳ぐ金魚を和の文化と融合して見せる新しい芸術「アートアクアリウム」アーティスト・木村英智さんをお迎えしました。まずお二人がこの道に入ったきっかけは?
木村さん 私はもともと観賞魚の販売・輸入などの仕事をしていて30歳を目前に、人生を転換するなら今だと “セミリタイア”し、いろいろ見たり考えたりする時間を取ったんです。その中で、魚がきちんと鑑賞されるステージが世界に一つもないことに気付いた。培ってきた観賞魚の知識・経験にクリエーティブな表現を組み合わせ、自分の魂を込めた新しいアートの世界を作ろうと思い立ったんです。芸術分野の勉強経験は全くなく、いろんなものを見て触れる中で湧き起こった欲求を、単純に爆発させただけなんですが。
門川 すごいですね。自然に湧いてくる創造力!
河野さん 私の場合は幼いころから絵を描くのは好きでしたが、大学ではもともとフランス文学を志望。ところが当時フランス文学は大人気、私の成績で進むのは無理だったので入りやすい美術史に進んだ。そこでまず西洋美術史を志したのですが、同期に現在文化庁長官の青柳正規さんがいて、彼がフランス語の原書をパーッと読むのを見てとてもかなわないなと。それで琳派を専攻することになり、50年です(笑)。

ものづくりと人づくりが文化芸術の礎を築く
木村英智さん門川 その琳派の権威に京都に来ていただき、ありがたいです。ところでここ元・明倫小学校は、京都の文化を象徴する所でもあります。明治2(1869)年に明治天皇が東京に行かれ、京都の人口は33万人から20万人に激減。その時京都の先人は、まず江戸時代から続く地域の自治の力で日本最初の64の小学校をつくりました。次に明治13(1880)年、今の市立芸大につながる日本初の公立画学校ができ、市立工業学校(現・洛陽工高)も。当時の基幹産業だった染織、漆工、金工、陶芸などの技術を習得する近代的な学校です。
河野 明治13年に画学校が! 東京芸術大の前身が授業を開始したのが明治22(1889)年ですから、10年も早い。
門川 さらに琵琶湖疏水と発電所ができ、市電が走りました。全て、日本初。今につながる文化芸術の礎、ものづくり、人づくりが、まちが一番ピンチの時に行われた。すごいですね。その番組小学校の一つがここです。今は京都芸術センターとなり、文化庁の分室の役割もある。木村さんは昨年からこの明倫学区、三条室町にお住まいですね。
木村 はい。三条室町の住所にこだわりました。私は江戸っ子で、東京での活動の拠点は日本橋室町1丁目。日本橋の文化は上方から下(くだ)ったものがあったからこそと知り、興味を持つようになりました。東海道の両端が江戸は日本橋、京都は三条大橋といいますが、実は三条室町の交差点辺りが呉服関係では起点とか。日本を掘り下げるならここだと思い、念願かなって手に入れた住所なんです。祇園祭の鷹山もありますし。
門川 今は「休み山」ですが、復興に向けこのたび、地域の方のご尽力で財団を設立。また189年ぶりに後祭(あとまつり)でお囃子(はやし)が復活しました。木村さんのアートアクアリウムは、東京、京都に続き、この間イタリア・ミラノでも見て感動的でした。京都の姉妹都市フィレンツェのヴェッキオ宮殿では着物などの展示もしていただきました。
河野 古い、異空間ともいえる所で着物ですか。素晴らしかったでしょうね。
門川 友好50周年の記念でした。京都美術工芸大学は、フィレンツェと同様に伝統工芸が息づく東山区にキャンパスを設ける計画がありますね。
河野 都市と美術はどの民族でも表裏一体。ですから新キャンパスをまちなかに置くのは大きな意義があります。予定地周辺には俵屋宗達の杉戸絵がある養源院、長谷川等伯の障壁画を持つ智積院などもあり、美術工芸を学ぶ環境として大変理想的です。
門川 近隣の下京区崇仁地域という都心に市立芸大が戻ってきます。それと相まって、職人さんの町での学びは大きな刺激になりそうですね。
河野 伝統を守る匠(たくみ)の技は、世界最高水準。それを学生が直接教わり、そこに自分の個性や新しい時代の息吹を加えて発展させる。その教育体系が京都東山キャンパスで確たるものになります。

日本人のDNAとして受け継がれる琳派
門川大作京都市長門川 独自の感性と日本の伝統文化を見事に融合させる木村さんは、この秋再び二条城でアートアクアリウム開催ですね。昨年は29万人もの方がご来場に。
木村 「琳派400年だから、それに絡めた展示を」と市長から言われ、実は困ったんです。というのも、そもそも作品に琳派が生かされているので。屏風(びょうぶ)、絵巻、着物の意匠や、特にプロジェクションマッピングなどの映像は、尾形光琳の絵にある川の流れなどを取り入れているのでまさに琳派。和を表現しようと参考になるものを探していくと、無意識に行き着く先が琳派なのだとあらためて認識しました。それは、400年続く琳派が、取り立てて美術を学んでこなかった僕らの中にも日本人のDNAとして脈々と受け継がれ、自然と湧き出てくるからだと思います。
河野 おっしゃる通り。あるテレビ番組の対談で、華道未生流笹岡家元の笹岡隆甫さんに「琳派はどう鑑賞したらよいか」と聞かれ、「日本人の中には琳派的なものがDNAとして生きていて、それを素直に発現させて見る、それが最高の鑑賞の仕方だ」とお話ししたことがあります。
木村 二条城では襖(ふすま)をテーマに、「琳派」を現代らしく、デジタルの手法を生かしたインタラクティブ(双方向)な仕掛けを取り入れた作品を展示します。金魚の動きに応じて、「たらしこみ」など琳派の手法を使ったものが表れたりといった世界初の試みです。
門川 楽しみですね。東京での作品も良かった。桜が一つも咲いていない、桜の展覧会。
木村 昨年3月の「江戸桜ルネッサンス」ですね。私がお屋敷の主人という設定で「どこよりも早い花見があるからお見せします」と招き、「桜はまだ咲いていないのに、ばかな」と思われながら来てもらうと…。
門川 着物、屏風、漆器、陶磁器の桜の意匠がずらり。あれは、すごかった。全部、京都の伝統産業品です。
河野 「おもてなし」の趣向ですね。それは見たかったなあ。
門川 きちんと物語になっているのが素晴らしい。そして暮らしの中にある美が、新しいアートに見事に溶け込んでいる。これは琳派の世界とも通じるのでは。

生活の美が生きるまち
河野 まさに! 生活の美は、琳派の重要な側面です。先ほど木村さんのお話にもありましたが、西陣出身の日本画家、故・加山又造さんが「日本の美を追求すれば、結局は琳派に行き着く」と言っています。琳派の根本理念は、国風文化が最も発達した平安時代の王朝美を、近世的な装いを与え復活させたこと。そこに日本の美のコアな部分が詰まっている。昔の寝殿造りは今で言うワンルームで、几帳(きちょう)や屏風といった空間を区切るための家具に絵を描き楽しんだ。それを見て和歌を詠む。つまり文学もアートも全て、生活と結び付いていたんです。宗達、光琳、酒井抱一(ほういつ)といった琳派の絵師は扇子も作るし、着物や器もデザインする。そういう生活の美が、今も生きているんです。
門川 京料理も含めあらゆるものに琳派があるまち、京都は、今「世界の文化首都」を目指しています。文化は経済に余裕が出てからという都市も多いけれど、京都は逆です。公立の美術高や音楽高があるのは京都だけ。芸術系大学もたくさんあります。
河野 ライバル校が多くて、困っているんですよ(笑)。
門川 切磋琢磨(せっさたくま)が大事ですね。今後も京都は生活の中にある文化芸術を大事にし、同時に経済の活性化、安定した雇用の創出に力を注いでまいります。皆さんに「ほんまもんのメードイン京都」に触れ、手に入れてもらうのも大切で、今度のアートアクアリウムでは販売も強化するつもりです。
木村 この秋の二条城ですね。
河野 私たちも京都伝統工芸館で行っていますが、販売は肝心。後継者の育成、クオリティーの維持に欠かせませんから。
門川 そして東京五輪・パラリンピックに向けて、京都ならではの文化・伝統産業などの活性化と世界への発信の取り組みも推進しています。文化芸術と産業の振興に力を入れ、市民生活の豊かさにつなげたいです。お力添えをよろしくお願いします。




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