京都大好きトーク!

第三十八回 京都市交響楽団60周年! 音楽文化創造都市・京都のさらなる飛躍を目指して
門川大作京都市長 × 岸田繁さん(ミュージシャン「くるり」) × 広上淳一さん(京都市交響楽団常任指揮者)
門川大作京都市長さん・岸田繁さん・広上淳一さん 対談写真
門川大作京都市長さん・岸田繁さん・広上淳一さん 対談写真
門川大作京都市長さん・岸田繁さん・広上淳一さん 対談写真
門川大作京都市長さん・岸田繁さん・広上淳一さん 対談写真
門川大作京都市長さん・岸田繁さん・広上淳一さん 対談写真
京響練習場(京都市北区)での座談会に出席した皆さん


<プロフィール>
岸田繁(きしだ しげる)/1976年京都市生まれ。立命館中学・高校を経て立命館大産業社会学部卒。在学中の96年、音楽サークルの仲間とロックバンド「くるり」を結成。作詞作曲、ボーカル、ギターを担当。98年シングル「東京」でメジャーデビュー。「みやこ音楽祭」(2004〜11年)や「京都音楽博覧会」(07年〜)の開催に携わる。京都精華大ポピュラーカルチャー学部客員教授。
広上淳一(ひろかみ じゅんいち)/1958年東京都生まれ。東京音楽大指揮科卒。第1回キリル・コンドラシン国際青年指揮者コンクールで優勝。ノールショピング交響楽団首席指揮者、日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者、リンブルク交響楽団首席指揮者、米国コロンバス交響楽団音楽監督などを務め、2008年から京響第12代常任指揮者。東京音楽大教授および京都市立芸術大客員教授。

京響×岸田繁 夢のコラボレーション
岸田繁さん門川市長 京都市交響楽団(京響)の創立60周年ということで、このたび京響に「交響曲第一番」を書き下ろされた「くるり」の岸田繁さん、京響常任指揮者の広上淳一さんにお越しいただきました。岸田さん、クラシックそれも交響曲の作曲は初めてですよね。
岸田さん はい。クラシックは子どもの頃父が家でレコードをよくかけていたので、ロックよりも先に好きになりました。京響の定期演奏会にも父に連れられてよく出掛けていたんです。2年ほど前に京響から今回のお話を頂いて、以前からいつか交響曲をつくりたいと思っていましたから、「喜んで」とお受けしました。
門川 その京響は広上さんが常任指揮者に就任して以来、チケット完売が続くなど絶好調。
広上さん 皆さんそう褒めてくださるけど、むしろ私は「よくぞここまで見守っていただいた」と市民の皆さんに心からの感謝を申し上げたい。高山(義三)市長が60年前に自治体初の楽団をつくられて以来ずっとですから。
岸田 市民の誇りですよ。
広上 岸田さんの存在は恥ずかしながら娘から教わりまして(笑)。「くるり」の楽曲を聴くと、すごい感性を持っておられることがすぐに分かりました。そして今回の交響曲にも目を見張らされたんです。本人は「独学です」と謙遜なさるけど、長年のステージ経験が生かされた5楽章、約50分の力作。ご自身の思いが見事に表現されており、感心しました。
岸田 ありがとうございます。
門川 どんな思いで曲づくりを?
岸田 これまでいろんな交響曲を聴いてきたので、とにかく先入観なくつくることを心掛けました。バンドの曲と比べてオーケストラの楽器でアンサンブルをつくるのは、大きな「まち」をつくるような感覚でしたね。複雑な和声などが難しい一方、何百年と続くクラシックの歴史に新しいものを取り入れる楽しさもありました。宮津の海を眺めながら、あるいは実家近くの北大路辺りで作業することが多かったです。
門川 以前「くるり」として、クラシックの本場・ウィーンでアルバムもつくっておられる。
岸田 はい。その前にたまたま旅行でウィーンに行ったんですが、京都との親和性をすごく感じました。旧市街には高い建物やネオンがほとんどなく、市電が走っている。「音楽の都だから、まちじゅうに音楽が…」と思ったら意外に静かで。そして京都に帰ると、ウィーンと同じようにやっぱり静かで音楽に集中できるんです。
門川 その京都では、広上さんのもとで京響の演奏力がさらに向上、公演終了後には楽団員がお客さまを見送るなど、市民との交流も深まっています。今回、京響を聴いて育たれた岸田さんとのコラボは実にうれしいこと。それぞれのファン層には年齢差がありますので、若い世代にも京響の魅力を感じてもらえてありがたいですね。
広上 京都市民148万人が年に1回、北山のコンサートホールに聴きに来られるなら、おそらく同じプログラムを何千回と演奏しないといけない。でもそれくらいポピュラーになる責任が京響にはあると思っています。ドイツのバンベルクでは、タクシーの運転手さんが「バンベルク・シンフォニカー(交響楽団)聴いたかい? ここのオーケストラは世界一!」と誇らしげに話すんですよ。
門川 京響も負けていられませんね。
広上 京響は褒められている今こそ、謙虚にならなければ。3年前からは高関(健)さんと下野(竜也)さんを常任指揮者にお招きするなど、とどまることなく進化を続けています。「われわれは良い音楽ならどんな曲も心を尽くして演奏します。だから見てください」。そういうスピリットを植え付ける仕事を60周年の今こそ、100年後も楽団が愛され続けるためにしていかなければと思っています。

京都のまち、ひとと音楽
広上淳一さん門川 岸田さんは10年来、梅小路公園で京都音楽博覧会を開催されるなど、京都を大事にした活動を続けていただいている。
岸田 京都は自分が生まれ育ったまちというのはもちろん、ソフト面でもハード面でも魅力があります。まちのサイズもちょうどいいし、いろんなジャンルの音楽をしている人が若者からお年寄りまで本当にたくさんいる。そんなまちは全国でもあまりないと思いますよ。地蔵盆、学校、いろんな場所でゆっくり教育していただいた実感もあって、「結果を急かされないまち」という印象。だから曲をつくるときは京都に帰ってくることが多いですね。京都の持つ「歴史」が時間をかけて何かをつくることに合っているんじゃないかと。
広上 一方で、いわゆる大都市では急かされる風潮が強い。そのために若い世代の中には、世の中が嫌になって夢を持てなくなってしまう人も多い。
門川 そういうとき、音楽が果たす役割は大きいと思いますね。音楽、芸術、人のつながりが果たす役割を、もっと皆が理解してつながっていければ。京都ではそういうまちづくりを志向する中、「小さな東京にならない」という決意で景観政策をはじめさまざまな独自の取り組みを行ってきました。
岸田 市長が「歩くまち京都」の宣言をされた時、「うまいこと言わはったな」と思いましたね。ちょうど船岡山に住んでいる時で、駅から遠いのでけっこう歩くんですが、歩くうちにいろんな場所、地域、山が目に入ってきます。
門川 歩くと健康に、公共交通に、環境に良い。景色が見られる、コミュニティーとも触れ合える。車で行くのと違って、お年寄りや子どもに声掛けもできる。さらに病気が減って国民健康保険にも良いと、良いことずくめなんです。
岸田 今も京都に帰ったら1日2万歩くらい歩くんですよ。音楽のことを考えながら散歩するのが好きなので、イヤホンはせず無音で。すると、ちょっと路地に入れば静かになるとか何か変化、色合いが感じられる。そのイメージを模写するように曲が生まれることもあります。
広上 私は東京出身ですが、子どもの頃父にしょっちゅう京都に連れてきてもらって。祇園祭や夜の四条などたくさん思い出があります。父が亡くなる直前に京響の演奏会に呼んだら、ニヤッと笑って「縁があるな、お前」と。ここはかつて先人が地形的にも風水的にも良いと分かって遷都したまちだと聞き、改めて「すごいまちだな」と思いました。楽団を生んだまち・京都を愛するよそ者の私としては、京都の人には「他と比べない、われわれはわれわれの信念で」と内に燃えるような気概を持ち続けていただきたいですね。
門川 ただ京都は、「よそさん」が良くしてきたまちでもあります。26代目の市長の私は京都で生まれ育ちましたが、これまで地元出身の市長は少ない。広上さんのように京都を飛躍させてくれる人が、どんどん外からも入ってこられる。このまちが守り育ててきた哲学、美学をみんなで大事にしながら、創造的にまちづくりを続けたいですね。

音楽文化創造都市・京都のこれから
門川大作京都市長門川 京都への文化庁移転が決まり、4月には地域文化創生本部(仮称)が立ち上がります。昭和の時代からのオール京都の国への働き掛けが実を結びました。世界文化自由都市宣言(1978年)で掲げた「文化を基軸としたまちづくりで、世界平和に貢献する」という都市の理想の実現に向けて大きく前進します。「文化で日本中を元気にし、世界から尊敬される持続可能な国・まちに発展させる」という気概を持って、全国の地方創生をけん引するお役にたちたい。その思いを強くしています。
岸田 僕が個人的に期待するのは、国や文化庁などの働き掛けに僕や広上さんのような芸術文化に関わる人間が応えていくこと。ジャンルを越えるというより意識しないやり方で、外からのアイデアもたくさん取り入れながらうまく煮込んで、それを京都の人たちが日常生活の中で後押しできるような形になればと思います。
広上 地理的にも人材的にも全てがそろう京都ですから、市民一人一人が誇りを持って大きく扉を開き、文化を世界中に発信するまちに。これを機にさらに発展していただきたいですね。
門川 まさに新たな文化行政のスタートです。文化が価値を創造し、人々を物心共に豊かにし、経済も活性化する。そういうふうに文化庁も機能を強化。国も新しい文化庁を目指しておられます。そして、日本の国の在り方の中にしっかり「文化」という横串を通す。私も京都の責任を感じながら、楽しく頑張ります(笑)。2月からは「東アジア文化都市」(〜11月)事業もスタート。開幕式典では京響と「くるり」も演奏してくれます。ところで、このたび改修する京都市美術館には、音楽会が開けるスペースもできるんですよ。
岸田・広上 それはいいじゃないですか。
門川 お二人もぜひそこで素晴らしい音楽を。東京オリンピック・パラリンピックに向けた長期的展望にも立ちつつ、2017年は日本中を音楽・文化で元気にしていきたいですね。よろしくお願いします。




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