京都大好きトーク!

第四十三回 京都・パリ友情盟約締結60周年!文化の力で交流を深化!
門川大作京都市長 × 金剛永謹さん(能楽師、金剛流26世宗家) × ジャン・マチュー ボネルさん(在京都フランス総領事)
門川大作京都市長さん・金剛永謹さん・ジャン・マチュー ボネルさん 対談写真
門川大作京都市長さん・金剛永謹さん・ジャン・マチュー ボネルさん 対談写真
門川大作京都市長さん・金剛永謹さん・ジャン・マチュー ボネルさん 対談写真
門川大作京都市長さん・金剛永謹さん・ジャン・マチュー ボネルさん 対談写真
門川大作京都市長さん・金剛永謹さん・ジャン・マチュー ボネルさん 対談写真
金剛能楽堂(京都市上京区)での座談会に出席した皆さん

<プロフィール>
金剛永謹(こんごう ひさのり)/1951年二世金剛巌の長男として京都市に生まれる。56年「猩々(しょうじょう)」で初舞台。98年金剛流26世宗家を継承。重要無形文化財総合指定保持。金剛能楽堂財団理事長、日本能楽会常務理事、金剛会理事長。京都市立芸術大客員教授。84年京都市芸術新人賞、2004年京都府文化賞功労賞、10年京都市文化功労者、16年度第67回芸術選奨 演劇部門 文部科学大臣賞など受賞。
ジャン・マチュー ボネル/1971年フランス・ランス生まれ。パリ政治学院(国際関係)卒業。慶應義塾大に交換留学の経験がある。95年フランス原子力発電所建設会社(フラマトム)に入社。98年フランス外務省入省。2005年在日フランス大使館広報部長。16年9月、在京都フランス総領事に就任。アンスティチュ・フランセ関西館長、および同館の日仏音楽交流事業である京都フランス音楽アカデミーの実行委員長も務める。

記念の年がいよいよスタート!
金剛永謹さん門川市長 本日は能楽師・金剛流二十六世宗家の金剛永謹さん、在京都フランス総領事のジャン・マチュー ボネルさんをお迎えしました。まずは金剛さん、第67回芸術選奨の演劇部門における文部科学大臣賞のご受賞、おめでとうございます! 受賞理由として「京都が育んできた能の表現の一つの頂点を極めた」などと、絶賛されていましたね。
金剛さん ありがとうございます。京都の能楽師の活動や関西風の能の特長をお認めいただけたのかなと思い、光栄です。京都の能は東京と少々違いがございましてね。言葉の調子の違いが表れるのか、東京はスッと早いのですが、こちらはまろやかでゆったりなんです。
門川 能の発祥の地・京都ならではのご活躍。奥深い歴史・文化を生かされ、感動を与えられ、うれしいですね。さて、今年は京都・パリの友情盟約締結60周年です。そのプレ事業で昨年秋には新作能「面影」を上演されました。金剛さんがシテ(主演)を務められて。
金剛 そうですね。数年前に「アンスティチュ・フランセ関西(旧・関西日仏学館)の90周年記念に、この施設をつくったクローデルの戯曲を使ってお能を」とお話をいただき、実現したものです。
ボネルさん フランスは京都・九条山に90年前、文化施設「関西日仏学館」をつくりました。のちに京都大の近くに移り、跡地は今、アーティストが滞在しながら活動する「ヴィラ九条山」になっています。当時、学館設立を推進したクローデルは、フランス大使でありながらアーティスト。彼が日本の伝統芸能のために書いた戯曲(初演は歌舞伎)を基にした能は、日仏交流の特別なシンボルです。ですから私も見た時には感動しました。
門川 本当に感動しましたね。フランス、全国から来られた方々が感動される姿にまた感動。
金剛 実は、私は10歳ごろから“オペラ狂い”だったんです。雄大なオペラに比べ能は小さいと思っていたのですが、年を重ねるうちにその素晴らしさが分かってきまして。例えるならオペラはビッグバンで、能はブラックホール。感動は同じでも、表れる姿は対照的です。オペラの本場出身のクローデルの戯曲にはもちろんオペラ的要素がありましたが、今回は徹底的な「能化」を試み、能の特徴である吸い込む・吸い寄せるようなものにしました。
門川 フランス人の戯曲が能になり、冷泉家時雨亭文庫の冷泉貴実子さんが詞章を監修。伝統の継承と同時に新たな試み、最高ですね! 約100年前、劇詩人クローデルを日本に送ったフランスは、8年前には総領事館を大阪から京都に移された。文化予算が日本より1桁多いといわれる国の「文化で心を通じ、創造を」という哲学の表れでしょう。そのフランスの方々が、日本文化を実に深く理解しておられる。
ボネル クローデルは日本の心を本当によく理解した芸術家で、だからこそ書けたんですね。そして、日本の心が最も理解できる地は京都。日本の伝統・歴史が一番感じられる都市だから、フランスの文化機関も今、ここに集中しています。私も含め日本が大好きな者にとって京都で過ごすことは、まるで子どもがお菓子屋さんにいるのと同じ。全部見たい! 全部が感動なんです。そして日本に数週間滞在するフランス人には、京都の町家がとても人気。本当の日本の伝統的な生活を経験したいと。
門川 町家に泊まり、家主や地域の方にいろいろ教わるなど、交流を深める人も多くなってきました。本来の「民泊」ですね。京都には、フランスの方もたくさん暮らして活躍しておられる。そして今年は、日仏交流160周年でもあります。
ボネル 日本とフランスは政治・経済・文化、どの分野でも強いつながりがあり、この160年の交流はフランスにとっても歴史的成功の一つ。国と国との関係はもちろんですが、民間の交流もより深まってほしいですね。ガストロノミー(美食学)、スポーツなどで、すでに強い絆が生まれていますが。
門川 本当にさまざまな分野で交流が進み、深まっています。昨年10月には、7回目となる現代アートのイベント「ニュイ・ブランシュKYOTO」を市内32カ所で開催し、大盛況。
ボネル もともとパリで始まったお祭りが、世界各地に広がっています。ニュイ・ブランシュ(白夜祭)はフランス語で「徹夜して寝られない」という意味。本物のニュイ・ブランシュは朝の6時ごろまで続きます。そのころには疲れてしまって「クロワッサンとコーヒーでも買おう」となるんです(笑)。今年は両国の160周年を祝う重要なイベントになります。
金剛 海外公演で驚くのは、どの国に行っても能を好きな方が必ずいらっしゃること。フランスで感じたのは、やはり文化度の高さ。能を本質的に理解する人が一番多く、外国では唯一の能舞台もあります。演劇が本当に好きな国民性ですね。

「文化」で通じ合うパリと京都
ジャン・マチュー ボネルさん門川 10年前、市長就任早々に友情盟約50周年で私もパリに。その時の能公演でもフランスの方は真剣に見て、大絶賛。驚きとともにうれしさを感じましたね。
ボネル 実のところ、日仏の文化はいろいろな部分で違っています。例えばフランスの演劇と能とでは、感情表現や構造が全く違う。けれど共通点も感じられ、そこで混ぜ合わせることができます。例えば日本料理とフランス料理、全く違う二つの料理法を合わせて、素晴らしい“日仏料理”を生み出すレストランが京都にはたくさんあります。混交が新しい文化を生み出し、国と国に橋を架け、やがてはシンボルになる。とても大切なことです。
門川 特区制度でフランスの料理人が京都の老舗で日本料理を勉強したり、フランス料理で昆布だしを使ったり。面白いですね。また、京都とパリは歴史都市でありながら、同時に新たな文化もどんどん創造しています。パリ万博で建ったエッフェル塔もルーブル美術館のガラスのピラミッドも、最初は批判が多かったけど、今や立派なシンボル。パリと京都は同じように論争もしながら、共に「不易流行」を貫いてきた都市なんですね。
ボネル 二つの都市には、同じように挑戦すべき課題もあります。両都市とも貴重な文化遺産が数多くあり、毎日大勢の観光客が訪れる。観光客はむろん歓迎ですが、貴重な文化遺産にとっては問題となることも。文化都市をどのように保持し、発展させるのか。京都に赴任して痛感した、大きな課題の一つです。
門川 そうした文化と文化財を担う中枢、文化庁の京都への全面的移転が決まり、昨年には地域文化創生本部が京都に発足し、活動が始まりました。
金剛 文化庁が動くことは、能も含め文化の東京一極集中を打破し、いろいろなところに目を向ける端緒になるのではと期待しています。次代への継承には演者育成はもちろん、ファン層を若い方に広げることも急務ですから。京都市の高校では以前から能楽鑑賞教室を行っていただいており、本当にありがたいです。

「世界文化自由都市」の実現に向けて
門川大作京都市長門川 能をはじめ京都に伝わる日本の伝統文化やそれを支える伝統産業を再認識し、日本中を元気に。同時に世界と交流し、新たな文化をつくる。今、改めてその決意を強くしています。今年は、京都市が「世界文化自由都市宣言」を掲げて40年の節目の年でもあります。「全世界の人々が人種、宗教、社会体制の相違を超えて、平和のうちに自由に集い、自由な文化交流を行う永久に新しい文化都市」を目指すという宣言で、梅原猛氏、千玄室氏らが起草されました。この心をしっかり生かしたいと思います。
金剛 立派な宣言ですね。戦時中は空襲警報で能の会を途中でやめることもあったと聞いています。今、世界中でいろいろな紛争が起きていますが、市民レベルで交流して仲良くなれば、国同士で戦争しようとしても市民の間で反発が起こる。文化交流が大事なのは、そこだろうと思います。
門川 まさに、「文化が最大の平和装置」です。
ボネル 私もこの宣言にとても力強く、普遍的なメッセージを感じました。今の世界にはいろいろな宗教・政治の下での不寛容、矛盾、理解不能なことがたくさんあります。だからこそ、このような平和のメッセージが必要です。文化はオープンでなければ、また、他の国や地方、人から影響をもらわなければ発展できません。この宣言に、私も100%賛成します。まずは今年、ニュイ・ブランシュなどを通じて日仏の文化交流をより深め、皆で心に残る、美しい年にしていきましょう。
門川 素晴らしいですね。パリを舞台に日本文化を紹介する「ジャポニズム2018」も開かれますしね。文化は人々の暮らしや都市の在り方を映し、平和や環境保護の礎となる。このことを胸に一層の交流を! 引き続き、お力添えをお願いします。




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