京都大好きトーク!

第四十四回 京都のさまざまな「出会い」が、新たな文化を生み出す原動力に!
門川大作京都市長 × 松本隆さん(作詞家) × 吉村由依子さん(亀屋良長女将)
門川大作京都市長さん・松本隆さん・吉村由依子さん 対談写真
門川大作京都市長さん・松本隆さん・吉村由依子さん 対談写真
門川大作京都市長さん・松本隆さん・吉村由依子さん 対談写真
門川大作京都市長さん・松本隆さん・吉村由依子さん 対談写真
門川大作京都市長さん・松本隆さん・吉村由依子さん 対談写真
国際交流会館kokoka(京都市左京区)での座談会に出席した皆さん

<プロフィール>
松本隆(まつもと たかし)/1949年東京生まれ。慶応大在学中の69年にロックバンド「はっぴいえんど」を結成し、ドラム・作詞を担当。その後作詞家となり、松田聖子をはじめ約400組に2100曲以上の歌詞を提供、シングル総売上数約5000万枚(オリコン1位は史上最多の52曲)。執筆やプロデュースなども手掛け、2017年には長年の創作活動が評価され紫綬褒章を受章。13年から神戸・京都に移住。
吉村由依子(よしむら ゆいこ)/1977年京都生まれ。同志社女子大生活科学部食物栄養科学科卒業。Le Cordon Bleuパリ校で料理ディプロム(資格)を取得し、レストランで研修後帰国。2001年に1803年創業の和菓子店「亀屋良長」8代目と結婚。和菓子の学校に通った後商品企画開発に携わり、斬新なアイデアの数々で老舗の経営を立て直す。若い女性を中心に人気店となり、テレビ出演・雑誌掲載なども多数。

多彩な魅力を持つまち・京都
松本隆さん門川市長 本日のゲストは、日本の音楽シーンを半世紀近くリードしてこられた作詞家・松本隆さんと、京菓子老舗「亀屋良長」の女将として目覚ましいご活躍の吉村由依子さんです。まずは松本さん、紫綬褒章のご受章おめでとうございます。松本さんの歌といえば、「卒業(斉藤由貴)」や「風の谷のナウシカ(安田成美)」などが特に思い出深いですね。
吉村さん 私も「赤いスイートピー(松田聖子)」など、子どものころからよく耳にさせていただきました。
松本さん ありがとうございます。ファンの方も今回の受章を自分のことのように喜んでくれて、本当にうれしいです。
門川 今、京都にお住まいいただいているのもうれしい限りですが、そもそもどうして?
松本 僕は二十歳ごろ、ロックバンド「はっぴいえんど」を始め、最初は岡林信康さんのバックバンドをしていました。実ははっぴいえんどが始めた「日本語ロック」は、まず最初に京都の学生が支持してくれたんですよ。京都会館(現・ロームシアター京都)や京大の西部講堂などに来ているうちに、「第二の故郷」のようになって。住みたいなとずっと思っていたんですが、還暦も過ぎたのでそろそろ、と。京都は古いものを大切にしながら最先端のものを受け入れる柔らかなところがある、面白い都市だと思います。学生が多いからかな。
門川 学生さんが人口の1割、約15万人。その4分の3が他都市から来ておられます。
松本 京都はまちがコンパクトにまとまっていて、お医者さんもパン屋も和菓子屋も、何でも近くにある。東京に比べてすごく暮らしやすいですね。
門川 人口当たりのお医者さんは京都が一番、イタリアンレストランはミラノよりも多いとか。
吉村 それは驚きですね(笑)。

伝統と革新で、新たな価値を創造
吉村由依子さん門川 吉村さんは京都のご出身ですが、留学経験もおありですね。
吉村 はい。若いころは海外への憧れが強くて、大学で栄養学や調理学を勉強した後、パリの料理学校で修業しました。その後フランス料理のレストランで働いたりしていたんですが、嫁いで和菓子を学ぶうちに、そこに込められた日本人の美意識や感受性の豊かさにびっくり、感動しまして。今は、季節を感じられる和菓子の楽しさに若い方にも親しんでいただきたいと、いろいろと取り組んでいます。
松本 昨日「亀屋良長」のお菓子を買って食べたら、「あ、昔からよく知ってる味だ」と気付いて。「烏羽玉(うばたま)」は、京都の友達の家でお茶と一緒によくいただいていたんです。
吉村 それは光栄です。京都のテキスタイルブランドSOU・SOUさんとコラボレートしたものも、おかげさまで人気をいただいています。
門川 伝統と最先端のコラボ、すごいですね。一年で何種類くらい作られるんですか。
吉村 生菓子はおよそ2週間ごとに代わるので、100〜200種類ほどでしょうか。「吉村和菓子店」というブランドは10年ほど前、脳腫瘍を患った主人が「自分も食べられるお菓子を」と、体に負担の少ない素材を使って立ち上げました。「Satomi Fujita」は、パリの二つ星レストランでシェフパティシエだった女性が、たまたま参加した和菓子の講習会で衝撃を受けて帰国、縁があってうちに来てくれて始めたブランドです。
門川 革新的なお菓子の数々。ここに至るまでご苦労もあったでしょう。
吉村 洋も和もお菓子の基本は同じと気付いてからは、「これをアレンジしてみたら?」と次々にアイデアが浮かび始めたんです。でも、多くの職人は伝統を重んじる男性社会で育っていますから、最初は「できひん」と。何とか作ってもらい、売れて初めて真剣に耳を傾けてもらえるようになりました。今は職人も女性が8割、快く試作してくれて助かっています(笑)。
門川 すでに「女性活躍社会」ですね! その売れたお菓子とは?
吉村 昔からある懐中しるこの中に、松竹梅と亀・ハートの5種の形に抜いたゼリーを入れて、梅が出たら大吉と、おみくじのようにしてみたんです。大したアイデアでもないんですが。
門川 すごいアイデアですよ。後から考えればそれほどでないように思えても、初めて生み出すのが“創造力”。
松本 僕らの「日本語ロック」も、そんなもの昔からあるなんて言う人もいましたが、「コロンブスの卵」ですよね。こういう斬新なことをするところが、老舗として残る。
吉村 10数年前までは京菓子にチョコレートを使うなんてタブーで、百貨店でも最初は「和菓子売り場に並べられない」と言われました。
門川 「頑固に守り、大胆に変える」の見事な実践。その原動力は何だったんですか。
吉村 もともと私はお菓子についていろいろ考えるのがすごく好きで、楽しかったんですね。お客さんに喜んでもらえるのもうれしくて。
松本 自分が楽しいことをして、皆に楽しんでもらう。これが全てのキー。作詞も同じです。歌詞は歌い手に合わせて書くので、例えば聖子、明菜では全然違う雰囲気になります。ただ両方が、松本隆の詞にもなっている。半分は合わせ、半分は自分の流儀。そのミックスのおかげで作品が残ったのかなと。冗談ですが、僕の詞でヒットした歌手は一生食えるって(笑)。
門川 今度はぜひ、京都の歌を作っていただかないと(笑)。
松本 ある意味、京都発信のものが春に出るんですよ。シューベルトの歌曲集「白鳥の歌」の日本語版(原詩:ハイネ)を北山の京都コンサートホールで録ったんですが、すごく良い音になりました。
門川 うれしいですね。京都市交響楽団のホームでもありますから。
松本 京都に住まわせてもらっている者として、良い恩返しができたんじゃないかと。以前、日本の神話「古事記」のCDを邦楽の笛奏者・藤舎貴生(とうしゃきしょう)さんと作り、南座でお披露目もしました。20人ほどがバンバンと弾く三味線の息がぴったり。それはすごい快感で、終わるとお客さんの半分くらいが泣いていました。
門川 日本の古典とのコラボも。素晴らしいですね。

京都ならではの「人」のつながり
門川大作京都市長松本 僕は詞の人間だから、古典の言葉に引かれるのかなと思っています。そういえば言葉で好きな人といえば在原業平、西行、一休。全員京都の人なんですね。
門川 京都はすごい人が横丁に普通におられ、知らないうちにネットワークができる雰囲気がある。
吉村 知識のある方が周りにいて、一歩動けばいろいろ教えていただけるのが京都の良い所だと思います。良いご縁がつながると、またどんどん大きく広がって。
松本 「ご縁」は基本。僕は今左京区に住んでいますが、学生やアーティストが多く、「これから頑張るぞ!」というような絵描き、写真家、料理人なんかと知り合えて面白いですね。東京は企業単位の縦割りですが、京都では生活の中にアートや仕事がある。「今日、飯会あるよ」と誘われて行くと知り合い、「じゃあ何かコラボしよう」と始まる。この方が生きている感じがするし、革新的なものが生まれる。
門川 人と人で動く京都に今度、文化庁が機能を強化してやって来ます。昨年京都に立ち上がった文化庁地域文化創生本部のメンバーが言うには、東京ではあり得なかったが、京都ではお祭り等に住民として参加し、日常的なつながりの中でいろいろな人と会ってしょっちゅう話すと。そういうところで文化行政を議論するのは、日本の文化の未来にとって良いことだと思います。
松本 一番良い、理想ですよ。
門川 京都人が何より大事にしてきたこういう生活文化を、これからも大事にと思っています。昨年、文化芸術基本法の改正・施行で、食文化がようやく「文化」として明記された。市ではそれより前に「京の食文化」を独自の無形文化遺産にし、「京の菓子文化」も認定。これからも京都から生活文化を発信していきたいですね。
吉村 うちのお店のスタッフには台湾・中国・アメリカの人もいて、皆すごく熱心。彼女たちが日本人以上に吸収し、発信してくれるようになればありがたいです。
門川 まさに和菓子の国際化ですね! 音楽と和菓子という異なるフィールドのお二人がともに伝統を生かし、創造力を発揮。一人一人の幸せと人との出会いから新しいものが誕生、これこそ京都の強みだと改めて実感しました。
松本 その通りですね。私も楽しみながら創造していきたいです。
門川 今、世界は宗教や国家体制の違いなどから大変厳しい状況ですが、文化こそ平和の装置。世界の人が松本さんの歌を聞き、京都のお菓子を楽しむ。そんな風を京都から吹かせたいと思います。ありがとうございました。




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