京都大好きトーク!門川市長とゲストの“きょうかん対談”

第七回「刷新」 あらゆるものが融合しながら「刷新」し続けるまち
門川大作京都市長 × 尾池和夫さん (前京都大学総長)真箏さん (芸妓、ジャズシンガー)
門川京都市長・尾池和夫さん、真箏さん 対談写真
門川京都市長・尾池和夫さん、真箏さん 対談写真
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<プロフィール>
尾池和夫/1940年に東京で生まれ、高知育ち。63年に京都大学理学部地球物理学科卒。京都大学防災研究所助教授、京都大学理学部長などを経て2001年に京都大学副学長、03年から08年まで第24代京都大学総長。09年に財団法人国際高等研究所所長となる。日本きっての地震学者で著書も多数、趣味は俳句。
真箏/京都市左京区生まれ。16歳で祇園甲部歌舞会の舞妓「真箏」に、21歳で襟替えして芸妓となる。京舞井上流名取。お座敷と両立させながらジャズバーなどでライブ活動を行い、1997年に女性ヴォーカルを集めたコンピレーションアルバムに参加。2001年「MAKOTO」としてメジャーデビューを果たす。

外から見た京都、内から見た京都
尾池和夫さん門川市長 尾池先生は京都人というイメージでしたが、ご出身は東京だそうですね。
尾池和夫さん 東京生まれの高知育ちですが、17歳の時、初めて京都に来てから50年以上京都暮らしです。「棒鱈(ぼうだら)が好きになりたる京住まひ」。とれたての魚を食べて育った同じ高知出身の妻が詠(よ)んだ句です。妻ともども、住めば住むほど京都が好きになって居ついています。
門川 奥様の句は、さりげない中に京都への深い思いが込められているようで素敵ですね。
尾池 「京都人はよそ者に冷たい」とよく言われますが、全くそうじゃないですね。京都の人は、遡(さかのぼ)ればみんなよそから来て住みついたんです。京都は、よそから来た人を受け入れる懐の深さを持ち、それを活かして大きな都市に発展する力を持った都市だと思います。
真箏さん 私は生まれも育ちも京都です。京都の美しい桜も紅葉も見慣れていましたから、以前は「なんでこんな普通の景色を、わざわざ遠くから見に来はるのやろ」と思ってました。舞妓になってじっくり見る機会が増え、あらためて「なんて雅(みやび)なんや」と感動しましたが(笑)。
尾池 実は、京都の紅葉も桜も、ほかの所のものより本当にキレイなんです。湿気の多い盆地の気候が、木の葉に糖分を蓄える。そして、豊富な糖分からつくられる色素が、紅葉や桜をより鮮やかにする。そんな自然の仕組みがあるんです。自然や気候風土、文化が全部つながっている。そういうところが、また京都はおもしろい。
真箏 その美しさに惹(ひ)かれて、世界中からお客さんが来られるわけですよね。観光に来られた方と京都を回ると、当たり前だった風景の素晴らしさや京都の魅力にいつも気付かされます。
門川 京都は、歴史や文化、芸術、自然風土、あらゆるものが融合して新たなものを生み出してきたまち。だから、いつも懐かしくて新しい。伝統を守りながらも、常に新しい魅力が生まれ続けている。近年は、京都議定書が誕生した、「環境都市」としても世界中から注目されています。京都人としての誇りと責任をあらためて痛感しています。

次世代の活躍が京都の未来をつくる
真箏さん門川 誇るべきものがたくさんある京都ですが、最大の宝物は何といっても「人」。私は「人材」ではなく財産の「財」を用いて「人財」とすべきだと思っていますが、まさに京都には、優れた技や知恵を持つ「人財」がたくさんおられます。そうした各界で活躍される70名の方に、現在、「京都市基本計画審議会」委員として、今後10年間の京都の進むべき方向と政策を検討していただいています。尾池先生は、その会長を務めていただいており、このほど第2次案をまとめていただきました。
尾池 京都市基本計画(案)では、「10年後の京都の姿をみんなで共有しよう」と話し合ってきました。と言っても10年後、私なんか元気でいてられるかどうかわからない(笑)。ですから、まずは若い人の意志をしっかり浮かび上がらせたいと思いました。さまざまな意見が出てまとめるのが大変ですが、そこがいいと思っています。21世紀に大切にすべきことの一つは「多様性」だと思います。だから10年後、社会の中心で活躍する若い人たちが、自分たちでさまざまに考え大いに議論して「どんな京都にしたいのか」を追求していくことが重要だと思います。
門川 真箏さんには、おおむね35歳までの方で構成する「未来の担い手・若者会議U35」の委員として、若い人の意見を基本計画づくりに反映させるために、さまざまな活動をしていただいていますね。
真箏 U35の会議では学生から会社員、文化人の方などいろんな職業や団体の人が参加していて、議論も活発です。今年5月に「京都市基本計画第1次案」が出たときには、できるだけ多くの若者の意見を聞こうと、U35のメンバーがまちなかに出かけて「出前パブコメ(パブリック・コメント)」を実施したんです。一人一人の意見を聞きながら、私も未来を担う世代の一人として「京都の未来をしっかりと考えていきたい」という思いが本当に強くなりました。
門川 実は、その時の取り組みを、偶然通りかかった記者の方が見ておられましてね。その方は、U35のメンバーそれぞれの肩書きをご存知だったんですが、感動されていましたよ。芸妓さんやお坊さん、ラジオ局のDJなど、各界の未来を担う錚々(そうそう)たる方が、地下鉄の駅や高校などに出向き人々に声をかけて、熱心にパブリック・コメントに取り組まれているんですから。「京都はすごいまちやなぁ」と(笑)。
尾池 若い人たちには、どんどん多様な意見を出して、意見を戦わせて、新たなものを生み出してほしいですね。その意見を反映できる仕組みをつくるのが、私たち年長者の仕事だと思っています。

京都は千年後も元気で雅なまち
門川大作京都市長真箏 U35でいろんなテーマで議論していますが、突き詰めると、働きながら生活も充実させられるように職場や社会の環境を整えていく真の「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と家庭の調和)に行きつきます。働きやすく、暮らしやすく、ゆとりを持って生きていけるまち。そんな京都であってほしいと思いますし、自分たちでそういうまちにしたいと思います。
尾池 京都には、老舗や商店で女性が力を発揮し、また女性が尊重されてきた「女将さん」文化があります。男女ともに働きやすく、暮らしやすい社会をつくる土壌があると思います。
門川 「女将さん」は、京都のまちの繁栄を支えてこられました。その一方で、家庭ではしっかりと子育てをしてこられた。それを支えてきたのは、地域力、地域社会だと思います。現在、U35のみなさんには、「ワーク・ライフ・バランスの環境づくり」についても議論していただいていますが、みなさんの活動自体が、地域とのかかわりを深められていて、とても心強く思っています。
尾池 京都から「ワーク・ライフ・バランス」のモデルを発信できるといいですね。
門川 さて、最後になりましたが、お二人にとって「京都とは」?
真箏 京都は今も昔も「雅なまち」。どんな時代でも、その雅さを受け継ぎ、未来へ引き継いでいけるまちだと思います。私はジャズシンガーとしても活動しています。芸妓としては前代未聞だったと思いますが、「芸ごとは絶対におろそかにしない」という強い決意と信念を周りの方も理解してくれ、応援してくれています。伝統文化の中心で活動しながら、新しいことにもチャレンジできる。この気風が、京都をこれからも「雅なまち」にし続けていくのだと思います。
尾池 審議会では10年後の京都を考えていますが、私は、「これから千年後もいきいきと活躍しているまち」、それが京都だと思います。1300年間も、大きな都市のまま今も継続して栄え続けているまちは世界にないですね。京都が世界に誇る「みる・食べる・学ぶ」を基本にして、これからも京都は千年、さらに千年と栄え続けるでしょう。
門川 京都が千年もの間、発展し続けてきたのは、やっぱり人の力。そして、千年後の京都の発展を担っているのは、今に生きる私たちなんですね。お二人とお話しして、あらためてそう実感しました。今日はどうもありがとうございました。



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