京都大好きトーク!門川市長とゲストの“きょうかん対談”

第九回「環境」 「木の文化」が息づく、歩いて楽しい「環境」のまち
門川大作京都市長×ベニシア・スタンリー・スミスさん (ハーブ研究家、ベニシアインターナショナル英会話スクール代表)
門川京都市長・ベニシア・スタンリー・スミスさん 対談写真
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<プロフィール>
ベニシア・スタンリー・スミス/1950年、英国ケドルストンホールの侯爵家に生まれる。69年にインドで瞑想を学び、71年に香港を経て来日。東京、岡山で過ごしたのち、78年より京都で英会話学校を開くかたわら、ハーブ研究家として活躍。96年から大原の古民家に暮らし、NHKBS「猫のしっぽカエルの手 京都大原ベニシアの手づくり暮らし」に出演中。

木の文化を大切にするまち
ベニシア・スタンリー・スミスさん門川市長 今回はベニシアさんのお宅におじゃましています。築100年以上の古民家のたたずまいを生かされて、素敵なお住まいですね。
ベニシアさん 古い家には、時の流れがつくったいい雰囲気があるでしょ。この家も大切に手入れして、私があと100年ぐらいは住みます(笑)。
門川 私の家も昔ながらの古い家で、改修を必要としていたので、できるかぎり京都の木材を使って直してもらいました。木の家には、自然と調和しながら豊かに暮らす知恵や匠の技、そして何ともいえない温かさがありますからね。
ベニシア 私はこの家に出会ったとき、「人生の最期はここで迎える」と直感したんですよ。
門川 あるとき私の家の、新しくした床に傷が付いてしまいました。でも大工さんに「お湯をかけてタオルを当て、アイロンをかけてみなさい」って教えてもらって、妻がやってみたら本当にきれいに戻ったんです。
ベニシア ほんとに?すごい!
門川 木は木材になっても生きてるんだなって実感しました。
ベニシア 日本では家を建てるとき、古い家と一緒に庭の木なんかも伐(き)って更地にするでしょ。でもイギリスでは、自分の家の木でも、伐るときは隣近所の人の許可がいるんです。その木の眺めは隣の人のものでもあるから。私もこの家に引っ越して来たとき、生えていた木はそのまま残して周りに花壇をつくりました。古いものや、もらったものを工夫して、上手に生かして使うことを楽しんでいます。
門川 新しく買うのではなく、あるものを生かす方がむしろ豊かだという発想ですね。
ベニシア 私はプラスチック製品もなるべく買わないようにしています。いくら安くてもすぐ捨てないといけないものより、少し高くても環境にやさしくて長く使えるものの方がいい。健康への影響なども気になります。こういう考え方がもっと広がればと思います。
門川 「人類は長年、地球の利息で生きてきた。でも今、われわれは地球の元本まで食いつぶし始めた」と言われます。危機感を共有し行動を起こさないとだめです。まずは循環型社会にすること。そのために社会の在り方、一人一人の暮らし方を見直すことが大事です
ベニシア そうですね。私は畳を新調したとき、科学素材の畳が安くて使い心地も悪くないと聞きました。でも捨てるときのことを考え、いずれ畑の栄養になってもらうため、また科学素材を処理するときの環境負荷も考えて天然素材の畳にしました。
門川 台所にある薪(まき)ストーブも年季が入っていて素敵ですね。
ベニシア 薪割りは主人のストレス解消になってますよ(笑)。大原は、緑が豊かで木がいっぱいあるから、これを使わないともったいない。
門川 京都市は75%が森林です。その森の木を、京都は大切に守り育てながら、京町家が並ぶ趣き深い町並みや伝統産業、文化を育んできました。でも今は、そんな豊かな資源を生かしきれていません。そこで京都市では、市民会議をつくって知恵を出し合いながら、「木の文化」を大切にするまちづくりを進めています。
ベニシア とてもいいことですね。最近、会社勤めに順応できない若い人が私のところに相談にきますが、森林など自然の中でできる仕事があれば元気になるのにと思います。
門川 昨年は、京町家の伝統的な知恵と、現代的な環境技術を融合させた「平成の京町家」のモデルとなる住宅も完成しました。京都らしい環境に配慮した建物の認証基準もつくっているところです。また、間伐材をペレット(固形燃料)に加工する工場をつくったり、木のある暮らしを提案・普及するために「京の山 杣人(そまびと)工房」を立ち上げるなど、「木の文化」が息づく仕組みづくりを進めています。

スローライフにふさわしいまち

門川大作京都市長ベニシア お茶を煎(い)れましたのでどうぞ。レモンバーム、レモングラスなどをブレンドしたハーブティです。
門川 いい香りです。ハーブ研究家として有名なベニシアさんは、テレビなどでもご活躍で私の妻も大ファンです。ハーブは今、何種類くらい育てておられるんですか。
ベニシア 前はもっと多かったのですが今は200種類ぐらいです。今度はぜひ奥さまといらしてください。
門川 ありがとうございます。ハーブを育て、家の手入れや家事もして多彩な活動をされている。さらに京都のまちや近くの山をよく歩かれるそうですね。
ベニシア ハーブの講演などでよく言うんです。「ハーブを飲むだけでは健康になれへんよ」って(笑)。歩くことならどこでも誰にでもできます。体の健康だけでなく、人は坂を登って息が荒くなるような運動をすると、脳細胞が増えるんだそうです。
門川 何よりも歩くと心が生き生きしますね。
ベニシア そうです!不眠症に悩む人が多いけど、よく歩くとよく眠れます。私は「京都一周トレイル」も全部歩きました。悩みごとがあっても、自然の中を歩くとどうでもよく思えてくる。
門川 歩く、また歩く、すると悩みも忘れて笑みが浮かぶ。まさに"歩(ほ)・歩(ほ)・笑(え)み"ですね(笑)。
ベニシア 京都は、歩きたい人にとてもいいまちです。緑が豊かで、社寺、史跡など歴史的な場所や小さな良いお店もあるし。
門川 京都市では、人と公共交通優先の「歩くまち・京都」の実現を目指して、昨年「歩くまち・京都」憲章を制定しました。京都は、歩いてこそ本当の魅力を実感できるまち。クルマではなくて、「歩くこと」を中心とした暮らしを、市民のみなさんや観光客の方にも大々的に呼びかける、全国でも初めてのとりくみをしてるんですよ。
ベニシア 大賛成です。私は大原の家から岩倉までなど、時々2時間ぐらい歩きます。これぐらい歩くと、帰ってからのビールのおいしさといったら!
門川 歩くと健康にいい、近所の方とコミュニケーションにいい、景観を楽しめる、地域の様子がわかって危機管理にもなるなどいいことづくめ。よくそう言うんですが、「ビールがおいしくなる」も加えないといけませんね(笑)。
 さて、最後に伺いますがベニシアさんにとって京都とは?
ベニシア 京都には本当の日本が残っている。ほかのまちは外国のどこかにもありそうで、日本じゃないように思えます。特に大原は豊かな自然、昔ながらの暮らし、ゆったりした時間の流れがあり、忙しくても気持ちに余裕のあるスローライフが過ごせます。
門川 京都には、ものの豊かさより心の豊かさを大切にする日本の伝統の生活が息づいている。そんな暮らしの知恵や日本の心を次の世代に伝えていかねばならない。京都から環境共生の新しい生き方のモデルを市民ぐるみで発信していこうと、決意を新たにしました。ありがとうございました。



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