【京都新聞電子版/生涯学習・公開講座 特集2009年春号】
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現代社会学科公開講座

“核とゲルニカ”の世紀を超えて
―止むことのない空からの恐怖―

京都女子大学
現代社会学部教授
前田 佐和子 氏

20世紀は「戦争の世紀」といわれる。空爆が始まり、世界のあちこちで今もなお、空からの被害にあえぐ町がある。太平洋戦争末期、京都女子大学の前身である京都女子専門学校の寮があった馬町一帯も、空襲の被害を受けた。今回、京都女子大学では、核と空爆の2つの視点から、戦争の問題を考える。担当の前田教授に、話を伺った。

 夢と憧れの宇宙が、軍事利用の最先端に

この春、北朝鮮が気象衛星ロケットの発射を行ったばかり。世界各国は、実質的な長距離弾道ミサイルの発射試験用ではないかと警戒し、隣国である日本に激震が走った。このように、近年では、宇宙空間を利用したミサイル攻撃が技術の最先端となり、私たちの夢と憧れの象徴だった宇宙に、軍事色が広がりを見せている

公開講座では、宇宙環境科学について長年、研究を続けてきた前田教授が、まずは昨年5月に制定された「宇宙基本法」について解説する。「これまで日本では、1969年の国会決議により宇宙開発と利用について、平和目的に限る(=非軍事)と定められていたのに対し、宇宙基本法では、国連の宇宙条約に準じて、日本の安全保障の名のもと、防衛のための宇宙開発が、認められました。平和の概念が、非軍事から非侵略に転換されたのです。」と説明。平和をめぐる、現在の宇宙開発の問題点を明らかにする。

 核、戦争犯罪の歴史について、二人の専門家を迎える

今回の講座では、現在の問題を知るとともに、これまでの戦争の歴史について深く掘り下げる。

空爆の最も脅威である核について、フォトジャーナリスト豊ア博光氏が講演。 同氏は、核をテーマに30年にわたり、世界中を撮影し続けてきたジャーナリストで、著書『マーシャル諸島 核の世紀 1914~2004』で、日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞を受賞している。講演では、世界の核実験場からウラン鉱石採掘場、原発事故など、現地で撮影した写真をスライド上映する予定。

また広島市立大学広島平和研究所教授の田中利幸氏が、「犯罪と責任:無差別爆撃による大量虐殺」をテーマに講演。同氏は、日本とオーストラリアを本拠地に、戦争犯罪を研究する専門家で、『空の戦争史』など著書も多数。講座では、無差別爆撃の歴史をわかりやすく解説してくれる。

 今だから、考えてほしい 核と空爆の現実

20世紀は空爆が始まった時代。 画家・ピカソの作品「ゲルニカ」に象徴されるような、暴力の不条理、戦争の悲惨さは、21世紀になった今も世界のどこかで続いている。
一方で、平和に見える日本でも、温暖化問題により、CO2削減のために原子力発電に期待が高まり、問題も見え隠れしている。 原子力発電の使用済み燃料に含まれる劣化ウランは、湾岸戦争やイラク戦争で、大量に使用された劣化ウラン弾の材料となるもので、平和利用としての原子力発電が、軍事利用と地続きになってはいないか、厳しく検証される必要があると前田教授は危惧する。
世界に拡散する核と、止むことのない空爆の現実は、大きく俯瞰して見る必要がありそうだ。

ニュースや新聞の情報だけではわかりにくく、一部の専門家にしか見えてこないのも実情。 前田教授は 「今回の講座を通して、一人ひとりが情報を正しく把握し、知ってもらう場になれば─」と話す。
平和を考える公開講座。みなさんも足を運んでみては、いかがだろう。

(取材=杉谷淳子/ライター)
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