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| 芦生研究林にも広がるシカの食害。食害が発生する前(1999年、左)には豊かに繁っていた低層植物が裸同然になっている(2006年)=いずれも鹿取悦子さんの定点観測による撮影 |
京都大芦生研究林(南丹市)でハチやチョウ、ガなどの昆虫が大幅に減少していることが、京大農学研究科の藤崎憲治教授(昆虫生態学)らの調査で分かった。シカが背の低い植物を食べ尽くし昆虫が生息できなくなっているためだ。シカの食害の影響は農作物だけでなく、生態系全体に広く及んでいる実態が浮かび上がってきた。
調査は2006年春から夏にかけて実施。特定のエリアで昆虫採集を繰り返し、1984〜87年に京大の研究者が同じ場所で実施した調査結果と比較した。
その結果、ハチやチョウなど花粉を求める昆虫は一回の採集で84〜87年には平均75匹捕れたが、06年は5分の1の15匹にとどまった。
また、誘蛾(ゆうが)灯を使ったガの採集調査では、平均的な自然状態では草を食べるガが全体の34%を占めるのに対し、芦生研究林ではわずか4%だった。
いずれの結果も、シカが低い位置にある草木を食べてしまい、昆虫が生息できなくなっているためとみられる。ガの調査では、背の高い木をエサにするガの割合が平均的自然より増え、生態系の変化が顕著なことを裏付けた。
藤崎教授は「芦生の食害は想像を超えており、背の低い植物ではトリカブトなど毒草ばかりの状態になっている。植生の変化で花粉を媒介するハチやチョウなどの昆虫が減れば農業にもダメージを与える」と警告。シカの個体数を減らす取り組みが急務と指摘する。
■地球温暖化の間接的影響か
シカ害の深刻化の背景には▽天敵の不在▽積雪の減少▽スギ、ヒノキなど人工林の増加▽狩猟の減少−の四つの要因がある。中でも近年の積雪の減少で冬を超せる子ジカが増加。生息域も急速に広げている。専門家はこうした事態について「地球温暖化の間接的影響の典型」と指摘する。
昆虫への影響は各地で確認されている。10月に大阪市内で開かれた日本鱗翅(りんし)学会の研究会では、九州や西日本各地でシカ害によってチョウが植物群とともに姿を消したという報告が相次いだ。同学会長の石井実・大阪府立大教授は「これ以上放置すれば絶滅する種類も出てくる」と警告する。(解説)
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