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iPS細胞、生殖医療応用で意識差 研究者と市民・倫理観調査

iPS細胞の医療応用
iPS細胞の医療応用

 京都新聞社は11~12月、市民と京都大iPS細胞研究所の研究者を対象に、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の医療応用に関する倫理観をアンケートした。計6問の質問のうち、iPS細胞からできた精子や卵子で子どもをつくることの是非を尋ねた問いについて、認めると回答した市民は7割超だった。一方、研究者は6割を下回る結果となった。iPS細胞の生殖医療への応用には、市民より研究者が慎重な姿勢を示している現状が浮き彫りとなった。

 市民については、京都市と大津市の街頭で、16歳以上の男女107人に実施。さらに同研究所の研究者182人にメールで質問し、54人から回答を得た。

■作成は研究者が積極的

 研究用にヒトのiPS細胞から生殖細胞を作ることの是非を尋ねた問いには、市民75%が賛成したのに対し研究者は96%と、より積極的な姿勢だった。しかし不妊症の男女がiPS細胞を使って子どもを誕生させることに賛成する回答は市民71%、研究者56%と逆転した。応用に反対する研究者からは「子どもの生涯にわたる影響が分からない」など、安全面を不安視する声が上がった。市民と研究者の賛成理由には「両親の遺伝子を持った子であることに変わりはない」「不妊症の解決に有効」などが見られた。

 現段階では、ヒトのiPS細胞から精子や卵子の作製には成功していない。しかしマウスのiPS細胞からは既に、精子や卵子を作ることができており、ヒトでの作製も現実味を帯びている。アンケート結果からは、生殖細胞を操作する技術の現状をよく知る研究者が、応用に慎重な姿勢を示している傾向がうかがえた。

■研究者にも感情的な違和感

 一方、iPS細胞を使って、ブタなど動物の体内にヒトの臓器を作って移植する技術への賛成は、市民が63%だったが、研究者は76%に達した。賛成する市民と研究者のいずれも、「臓器が不足している中、患者の助けになる」などの理由を挙げる回答が多かったが、反対する市民からは「種の壁を越えてほしくない」という意見があった。研究者にも「気味が悪い」など感覚的な違和感を訴える声が散見された。

 生命倫理や死生学を研究する上智大の島薗進教授(68)は、生殖医療に関する市民と研究者の意識差について「生殖細胞を操作することで次世代に影響があり得るという事実を、市民が十分に認識できていないからではないか」と分析。動物の体内でヒトの臓器を作ることにいずれも積極的だった点については、「研究者は世代を超えた影響がないとみて積極意見が多かったのだろう」と推測する。

 その上で「いずれにせよ『治療』という目的のためなら何でもしてよい訳ではない。治療法確立のために行われる研究全体に目を配って考えるべき」と強調した。

【 2016年12月31日 23時40分 】

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