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コラム凡語:明治維新150年

 幕末から明治にかけて来日した外国人にとって、日本は驚きの国だった。気さくで陽気で幸せそうな人々、雑草一つないほど手入れされた耕地。美しい自然景観は多くの欧米人をうならせた。

 庶民の生活も開放的だった。家屋は開けっぴろげで、無人の店でも持ち逃げする客はいない。ある外国人は宿屋に時計と金を預けて数日間出かけたが、戻ってみると、出発時と同様、ふたのないお盆の上にそのまま残っていた。

 近代史家・渡辺京二氏の著書「逝きし世の面影」からは、明るく勤勉で善良な当時の日本人の姿が伝わってくる。子どもを大切にし、男たちが街中で幼児を抱いて一緒に遊んでいる姿も外国人の目には印象深く映ったらしい。

 日本はその後、近代化を急速に進めて欧米と肩を並べ、敗戦を経て短期間で先進国となった。一方、風景は幕末の人が卒倒しそうなほど大きく変貌した。人々の心の中の変化は、計り知れない。

 渡辺氏が「古き日本の死」と表現するように、明治以前の時間はもう戻らない。ただ、当時の暮らしや生き方には妙に懐かしさも感じさせられる。物がなくても世の中を信用して生きていけた時代への憧れだろうか。

 今年は明治維新から150年。近代化とともに日本人が忘れてきたものはないだろうか。じっくり考えてみたい。

[京都新聞 2018年1月1日掲載]

【 2018年01月01日 14時30分 】

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