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別れの時節

 仏教に基づく終末期の看取(みと)りの原型は平安時代に成立した。影響を与えたのは今年、没後千年を迎えた僧・源信である。主著「往生要集」には、臨終の病人と看取る側の心得や作法などを記す▼源信はまた、比叡山の横川で同志25人による念仏結社を作った。結社では病人が出れば交代で昼夜を通して看病するなど、現在の緩和ケアの先駆けだったとも聞く。翻って時代が進んでも決して変わらない、死別の苦を思う▼3月は国内外でさまざまな別れの光景が広がった。東日本大震災から6年。別離の深い悲しみは癒えない。「守れなくて、ごめん」。家族を亡くした悔悟の言葉が胸を突いた▼お隣の韓国では、多数の国民から「絶縁」された朴槿恵(パククネ)大統領が弾劾訴追によって罷免された。英国も別れの交渉へ。議会の承認を受けたメイ首相は、欧州連合(EU)に正式に離脱を通知する▼「さようなら」と題する谷川俊太郎さんの詩がある。大好きな両親の元を離れ、独り立ちを決めた「ぼく」の思いを、子どもの語り口調で表す。<きっといちばんすきなものをみつける/みつけたらたいせつにしてしぬまでいきる>▼別れることで、かけがえのない何かを見つける。何かに気づく。それは明日への一歩でもあろう。別れによって、大事なことを学ぶ気がする。

[京都新聞 2017年03月27日掲載]

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