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水防建築

 川は暴れる。自然相手に完璧な治水事業はあり得ない。豪雨による河川の氾濫や水害が起こるたびに思い知らされる。急峻(きゅうしゅん)な地形の日本で当然の危機意識を私たちが失っていたことを▼日本大理工学部の畔柳(くろやなぎ)昭雄教授は15年前、先人の危機意識が成した水防建築の現地調査を始めた。以来、氾濫時に備え、盛り土をして建てた避難小屋「水屋」を学生と各地の川辺に訪ねてきた▼水屋を残す家の当主は堤防の決壊を体験し、洪水時の行動を常から考えていた。いずれも高齢で、畔柳教授は「今、記録しておかないと風化してしまう」と話す▼集落が共同でかさ上げした避難場所「助命壇」や洪水の襲ってくる方向に舟形の敷地の舳先(へさき)を向けた「舟形屋敷」、持ち寄った畳を欄干にはさんで洪水を防ぐ「畳堤」。知恵と工夫の詰まった、さまざまな地域の災害文化を見つけた▼大阪市北区のグランフロント大阪南館タワーA・LIXILギャラリーで8月23日まで、畔柳教授の調査に同行した大西成明さんが撮影した水屋の写真や図面、模型、農具を展示している▼桂川沿いの桂離宮も、建物を高床式にすることで浸水を免れ、生きた竹を折り曲げて用いた独特の生け垣「桂垣」が、濁流の土砂を除くフィルターの役割を果たした。減災の知恵を語り継いでいきたい。

[京都新聞 2016年06月26日掲載]

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