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石門の教え

 <石門の教えの出(いで)しふるさとはわれらが誇り>。亀岡市の山あいにある東別院小の校歌の歌い出しである。山河清らかな風土を差し置いても仰ぎ慕うのが、石門心学の祖・石田梅岩だ▼江戸中期、この地から京都へ出て商家で奉公をしながら自学自習を重ね、現在の中京区内の借家で老若男女が無料で聴ける講席を開いて「人の人たる道」を説いた▼とりわけ商人は利をかすめ取ると低く見られていた時代。人には職分があり、「売利を得るは商人の道。武士が俸禄を得るのと同じ」と商業活動を正当化し、町人を中心に広まった▼ただし、得る利益の正当性は「先も立ち我も立つ」よう相手先を満足させてこそ。私利私欲を戒め、「正直」「勤勉」「倹約」の実践を訴えた。近江商人の「三方よし」とも相通ずる日本の商人道の原点とされる▼しかるに、この道にもとる商売が後を絶たない。破綻した女性向けシェアハウス運営事業のでたらめさにあ然とする。物件オーナーとして募った会社員らに近隣相場も返済能力も無視して販売したとされ、億単位の借金苦をもたらした▼しかも後ろ盾を、金融庁が高収益の優等生として持ち上げてきた地方銀行が担っていたようだ。大きな混乱と痛みを招いたバブル渦の反省はどこへ行ったのか。梅岩は何と言うだろう。

[京都新聞 2018年05月21日掲載]

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