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寺田いも

 <つちのしたには、どんなさつまいもがかくれているかな?>。京都精華大出身の絵本作家はまのゆかさんの絵本「いもほり」(ほるぷ出版)は、芋掘りに挑戦する子どもたちの姿を優しいタッチで描く。幼い頃に体験した土の匂いや感触がよみがえる▼京都府内でサツマイモといえば、城陽市の木津川周辺で栽培されている「寺田いも」がある。ほくほくした味の良さで知られている▼木津川沿いでは江戸時代からサツマイモが栽培されてきた。それを生み出すのは砂地の畑だ。上流域は風化しやすい花こう岩が多く、木津川が絶えず大量の土砂を下流に運んだ▼寺田いもの栽培地「荒州(あらす)」も木津川堤防の決壊でできた。江戸時代には地域でサツマイモが「畑方第一の作物」となり、特に寺田村産は明治時代、他地域の価格の基準となった▼ただ城陽のサツマイモ栽培も1965年の64ヘクタールから現在は2割程度に減少している。荒州周辺では新名神高速道路の建設に伴う市の土地区画整理でサツマイモ畑が姿を消している。長い栽培の歴史と景観の行く末が心配だ▼荒州では芋掘り農園が開園し親子連れでにぎわう。ここも半分ほどに縮小したと聞いた。赤紫色の塊を手に子どもたちの笑顔がはじける。絵本のように楽しい思い出をつくれる場所が続くことを願う。

[京都新聞 2016年09月25日掲載]

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