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ジャズの店

 近江八幡市の川岸春喜さん(60)が自宅横にジャズ喫茶を開いて半年余りになる。会社の定年が近づき、京都の店に通った20代のころの夢がよみがえって早期退職した▼ヴォーリズ建築風にした店はレコードとCDがいっぱいあり、滋賀県内各地から客が訪れる。「グレン・ミラーをかけて、と75歳くらいのおばあちゃんが来られたことも」と川岸さん。地域の人も気軽に楽しんでもらえたら、という▼退職後に、そばの店を開く男性が多いという話は聞いたことがあるが、ジャズもそうなのだろうか。そばとかけてジャズととく。その心は…熱いのもクールもいけます▼草津市の中嶋守さん(65)がJRの駅近くにジャズバーを開いて1年余りになる。定年退職を迎えて「同世代のたまり場に」と思い立った▼フォークソングがはやっていた高校生のころ、深夜ラジオでジョン・コルトレーンを聴き、のめり込んだ。同好の友人は周りにいなかったが、同級生だった女性が来店して「私も聴いていた」と打ち明けた▼スイングジャーナル誌の編集長を務めた故久保田二郎さんが、社会に出ると音楽から離れてしまう若者に「ジャズはいっこうに日本に定着しない」とぼやいたのは40年前のこと。男たちはジャズに帰ってきた。やっとたどりついたのかもしれない。

[京都新聞 2015年04月03日掲載]

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