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いのちを尊ぶ場に

 通勤時、バス停で待っていると登校中の小学生があいさつをしてくれるときがある。「おはようございます」と応じ、背中のカバンを見ながら元気でねと願う▼子どものころを振り返る。楽しいことばかりではなく、勉強が分からなかったり、同級生や先生との関係で悩んだりした。一方、苦手なことを乗り越えた喜びもあった▼いま、学校の現実はどうか。「いのちを尊ぶ安全な場所ではないように思う」。出版された「問わずにはいられない 学校事故・事件の現場から」(あうん社)に寄せられた遺族の問いを反すうする▼各地のいじめの被害や、京都市のプール水泳事故で亡くなった小学生、滋賀県で柔道部の部活動中に亡くなった中学生の親など21編の手記。笑顔の遺影も掲載されている▼高校から指導を受けたその日、長男がいのちを絶った兵庫県の西尾裕美さん(57)は「私は誰かを責めるのではありません。でも、学校の現状をできるだけ多くの人に知ってもらい、考えてほしいのです」と訴える▼深い悲しみをこらえ、繰り返さないために、やっとの思いで言葉にした胸の内をしっかりと受けとめたい。とりわけスポーツ事故は原因を徹底究明し、医学を含めた専門知識を持てば防げるはずだ。学校をいのちを尊ぶ学びの場に変えねばならない。

[京都新聞 2015年11月24日掲載]

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