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まちくさ

 せわしない生活の中で、道端の雑草に目を留めることは少ないが、心に余裕がある時、逆にちょっと寂しい時、なぜかいとおしく思える▼どんな草も学名や和名を持つのに、ひとくくりに「雑」なる冠を付けられている。ところが生え方の面白さに着目し、擬人化して名前を付けると、途端に一つ一つのキャラクターが際立つ▼伏せた植木鉢がこけむした「プリンの森」。草同士が向き合う「再会」。そんなふうに名付け、写真と共にアート作品として披露し合うワークショップ「まちくさ」を京都市上京区のデザイナー重本晋平さん(31)が始めてちょうど10年▼各地の学校や地域行事で続けてきたが、子どもたちは「関係づけの天才」と感じるという。草を主人公に、周囲の環境や自身と絡めた物語を短時間で組み立て、表現する発想が豊かだからだ。ポストの下から手紙を出そうと背伸びしたり、すべり台の陰で雨宿りをしたりしているように、草を見立てる▼草への名付け一つから、その人の経験や思考、街の雰囲気も垣間見える。ワークショップではそれを共有し、交流できる▼考案したまちくさをスマートフォンで投稿し、他人の作品も見られる無料アプリも開発中だ。子らに負けないよう、発想を柔らかくし、心の余裕を持って街歩きを楽しみたい。

[京都新聞 2016年11月19日掲載]

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