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素直な愚問

 会議などで「何てバカな質問をしたんだ」と自己嫌悪に陥った経験は誰にでもあるだろう。冷たい視線を浴びると文字通り穴に入りたくなる▼もし質問者が偉大な学者なら、どうだろう。日本人初のノーベル賞を受けた湯川秀樹さんは、京都大教授を定年間際になっても学内の研究会に顔を出し、とんちんかんな愚問を発しては若手を困惑させたそうだ▼容赦なく撃退されると、湯川さんは「あ、俺アホや」と落ち込んだというが、時折、誰も思いつかなかった新鮮な視点を提供し、議論を大いに活気づけたという。京大の後輩にあたる数学者の故森毅さんが著書で回想している▼実績や肩書に関係なく、研究者として対等であろうとした湯川さんの人柄と、当時の京大の自由な気風をほうふつとさせる。そんな湯川さんの「愚問」は、恥やプライドを超えた「知りたい」という思いの表れだろう▼日本出身者として25人目のノーベル賞に輝いた大隅良典さんも同じ趣旨のことを故郷の高校生に語っている。「興味のままに、自然体で」「大事なのは、子ども時代に誰もが持っている『これは何だろう、どうなっているんだろう』という素直な気持ち」と▼きょう10日、ストックホルムで晴れの授賞式に臨む。自称「へそ曲がり」の酒豪学者のスピーチが楽しみだ。

[京都新聞 2016年12月10日掲載]

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