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「匠の精神文化」

 京滋各地の庭園で、紅葉が例年より早く盛りを過ぎようとしている。<散(ちり)紅葉ここも掃(は)きゐる二尊院>(高浜虚子)。先人たちは散り落ちた葉にも、季節の移ろいや揺らめき、はかない美を感じとった▼外交官として欧州赴任経験もある近藤誠一・元文化庁長官は南丹市での講演で、日本の伝統とは対照的な西洋の自然観の例として、仏・ベルサイユ宮殿を挙げた。直線や円形、左右対称などを人工的に配した庭は、自然を克服し、厳密に区別した合理主義の結晶だという▼「数字では計ることができない非合理性や無駄、揺らぎを自然から学んできた匠(たくみ)の文化を、世界に発信すべき」と近藤氏は語った。その行事を主催した京都府は、専門職人や工芸作家などが多く住む丹波2市1町を「匠ビレッジ」とアピールする事業に力を入れている▼亀岡市では全国で数少ない天然砥(と)石が山で採掘され、料理や彫刻、建築など多様な面で京の文化を支える▼南丹市園部町では戦国武将がまとった陣羽織と同じ技法のビロード生地が手作業で生み出されている▼いずれもコンピューターで制御できない、手触りなど人間の感覚が技の根底にある。今の社会は経済性と効率が追求され、人々の営みは情報通信に網羅される。散った葉の姿を尊ぶような精神文化を大切にしたい。

[京都新聞 2016年12月04日掲載]

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