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言い訳

 「ウルトラC」と言うとやや時代がかるが、安倍晋三首相が打ち出した消費税増税を再延期する方針転換にまず浮かんだ言葉だ。感嘆したのでなく、奇想天外という意味で▼「再び延期することはない」。1年半前、首相は確実に増税できる環境を整えると約束した。だが、ほど遠い景気の停滞、厳しい世論に大きなジレンマに陥ったのは確かだろう▼最大の足かせとみられた「リーマン・ショック並み」の再延期条件に押し込もうとはまさかである。伊勢志摩サミットの議長自ら「リーマン前に似ている」と主張し、新たな「危機」を回避する合意に率先して取り組むと言い出した▼簡単に言えば、増税できないのは国内景気のせいではない、危うい世界経済を支えるためという論法だ。アベノミクスの失敗との批判を避けるための強行突破策にもみえる▼だが、さすがに危機前夜と言うのは無理がある、と国内外から疑問の声がやまない。むしろ年明けの市場混乱から堅調さが戻りつつある世界で、日本だけ立ち遅れているのは明らかだ。再延期という結論は同じでも、理屈のすり替えでは正しい打ち手につながらない▼力まかせでウルトラCの難技がうまく着地できるのか。どのように国民が納得できる理由を説明し、今後の覚悟を示せるのか、注目したい。

[京都新聞 2016年05月31日掲載]

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