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英国の芝

 自然な草花の風景を楽しむイングリッシュガーデンは日本でも人気だが、本場では家々で芝生の手入れにはうるさい。美しく保つのは大変な手間で、つい見比べての「隣の芝生は青い」は英国のことわざだ▼こだわりは来週開幕するテニスのウィンブルドン選手権にも。2週間の大会のため1年かけ緑鮮やかな芝コートを養生する。1877年、芝をならす器具の修理代集めの試合が始まりというから芝抜きに語れない▼やがて各国強豪が競う最高峰の大会に発展する一方、英国選手が勝てなくなった。主要産業の金融、自動車も外資に席巻された状況をなぞらえ「ウィンブルドン現象」と呼ばれた▼そんな対外開放への積年の思いも噴き出したのだろうか、英国民は欧州連合(EU)からの離脱を選んだ。大陸との壁が英国の経済、社会活力を損なっても、丹精込めた芝生に踏み込まれる不安が勝ったのかもしれない▼心配なのは国民の分断だ。英国に伝わる美しい芝生作りの極意「水をやり、芝刈りを続けよ」を思い出してほしい▼世界的人気の「ハリー・ポッター」シリーズの著者J・K・ローリングさんは恐怖と対立をあおる論戦に対し、読者ではなく作者として「物語の結末は私たちによって書かれる」と訴える。いばらの道を選んだなりの責任が伴う。

[京都新聞 2016年06月25日掲載]

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