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(1)似たもの同士

代々伝わる職人の技と心 佐野惠子
街中にある木工の専門店。イースター前とあって、ウサギの置物であふれていた(ドイツ・フランクフルト、筆者提供)

 ドイツと聞いて何を連想されるだろう。サッカー、ゲルマン民族、三国同盟、ビールにワイン、ハムにソーセージ、ゲーテにベートーベンなどさまざまなイメージが湧(わ)くに違いない。ライン川下りやロマンチック街道など観光名所も多く、日本人にも馴染(なじ)み深い国だ。

 「環境にいいことしていますか」という意味合いで、京都市がエコ活動推進に用いている「Do You kyoto?」この言葉、ドイツ初の女性首相メルケル首相が使われたとか。実は、京都とドイツは意外にも共通点が多い。

 例えば、雅(みやび)で華麗な京都の品格を支えてきたのは、職人たちの技だ。私自身、京都の職人は本当に素晴らしいと、いつも諸外国で胸を張ってお国自慢をしている。その職人とドイツのマイスターとが非常に似ている事に気がつく(ちなみにドイツのマイスターは、専門性が高く制度に則し熟練した職人を指す)。

 例えば、京都には京焼(清水焼)があり、ドイツにはマイセン焼、ドレスデン焼に代表される陶磁器がある。京刃物に対してゾーリンゲンの刃物、伏見の酒にはドイツビールやワイン等が呼応する。まだまだ羅列はできるが、今日はドイツの木工製品をご紹介したい。

 京都には京指物があるが、ドイツにも伝統的な木工製品を現在も見ることができる。代表的なものでは、ザクセン州エルツ山地のザイフォン村のくるみ割り人形や煙出し人形。工房ごとに特徴があり、世界的にそのコレクターがいるほどの人気商品だ。人形は、ろくろを用い、すべて手作業で作られる。人形作りは大半が家族でまかなう小規模工房で、現在150工房ある。

 同じような人形と一見思いがちだが、どの工房にも何百年も前から代々受け継がれてきた形があり、同じモチーフでも色合いや顔の描き方が微妙に異なり、どの工房で作られたか分かる。現代でも彼らは自分たちが受け継いできた技術、デザインに誇りを持ち、それをまた後世に伝える努力をしつつ、新しい商品開発も試みる。いずれも精密で技術の高さに感激するだけでなく、職人の意気込みが伝わる。ザイフォン村の職人さんは、どこか京都の職人さんと精神的にも似ているように思えてならない。

 私は歴史ある京都のもの作りの技と情熱を海外で紹介したいと思い、昨年12月、一念発起でドイツ・フランクフルトに「京都センター」を設立した。肌で感じるフランクフルトのいまを、伝えたい。

佐野惠子

さの・けいこ 京都市生まれ。帝塚山大大学院を卒業し、関西の美術館や芸術大の学芸員を務めた。伝統産業に造詣が深く日本とドイツの伝統産業の橋渡しを目指し「京都センター」を開いた。

【2010年4月19日掲載】