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(4)マイセン

町の産業見て、食べて、体験 佐野惠子
マイセンの絵付けの様子。間近で見学することができる(筆者撮影)

 ドイツは陶磁器の名産国である。ヘキスト、バウシャー、ドレスデン、ローゼンタール…。まだまだあるが、中でも日本人に最も人気があるのが、マイセンではないだろうか。

 このマイセン、今年で生誕300周年の節目を迎えた。美しいフォルムとデザイン、何より艶(つや)やかな純白に心を奪われる。ヨーロッパで初めて白磁器の製造に成功したのがマイセンであり、その成功の陰には熱狂的な東洋磁器ファンの存在とそれにこたえた職人の存在があった。

 当時ヨーロッパでは、東洋の磁器を「白い金」と称し、王侯貴族の間で絶大な人気があった。時のザクセン王アウグスト2世は、自国でこれが作れないものかと、宮廷錬金術師のベットガーに命じ、彼とチルンハウス伯爵が研究を重ねた。その結果、主成分の発見、窯の温度の解明から、西洋磁器の歴史が始まったのである。

 マイセンというのは地名であり、そのまま磁器の名前にもなっているのだが、1710年から現在に至るまでこの町で一貫して製造されている。歩いてみると、町のあちらこちらで製品を目にすることに気づく。食器というイメージが強いが、町中では教会の鐘や壁画、照明など屋外でも多く見つけることができる。今もなお磁器は町の基幹産業なのだ。

 300年にわたり製造された磁器は、およそ23万種類を超えるというが、その大半を国立マイセン磁器製造所で保管、展示もしている。ここでは、もちろんマイセンの品々を購入する事もできるが、カフェとレストランが興味深い。

 メニューに「マイセンの時間旅行(Meissener Zeitreise)」というものがある。代表的な絵柄が施された食器でコース料理が味わえるそうだ。心憎い表現だ。カフェでは「紅茶・コーヒー・ココアの三つの飲み物を楽しむ」というメニューがあり、マイセン食器を実際に使うレクチャーがセットになっている。

 さらに上級者向けのお薦めは、マイセン磁器を自分で描ける体験コース。基礎コースでも3日間も時間をかける本格的な内容だ。「見る」「食べる」「体験する」そして「買う」ことができるトータルな町だと、あらためて町の産業を認識した。

 京都には京焼に代表されるように、清水焼、楽焼、音羽焼、御室焼、粟田口焼などの伝統技があり、マイセン焼よりもさらに歴史が古い。共通して感じることは、ドイツの職人も京都の職人も求めに応じて試行錯誤に挑み、今日においてもその製品を見ることができることである。(京都センター主宰)

【2010年8月16日掲載】