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(5)ビール

誇りと文化を受け継いで 佐野惠子
大手スーパーのビール棚。夕刻に行くと、このようにすき間が目立つ(筆者撮影)

 今年は東西ドイツ統一20周年になる。ベルリンの壁が壊された時、テレビにくぎづけになった方も多いであろう。早いものである。

 同じ節目つながりで今回はビールの話題をお届けしよう。今年の夏は格別に暑かった。日本だけでなくヨーロッパ内でも異常気象は見られ、ここドイツでも猛暑が何日か続いた。京都の暑さに比べればたいしたことはないのだが、やはり今季のビール消費量はドイツ全土で最高値を出したようだ。

 ドイツでは毎年10月第1日曜までの16日間、「オクトーバーフエスト」と呼ばれるビールの祭典が開かれる。このビール祭りは今年でなんと200年目を迎えた。

 中でもミュンヘンはメーンともいえる場所で、数千人から1万人収容できる大テントが連なっている。入り口に立って奥を見ても全く先が見えないほど。テントを出せるのはミュンヘン市内の歴史ある6社だけである。

 大テントの中では皆1リットルサイズのビールジョッキを片手に、どっしりと座りこんで楽しんでいる。生演奏が始まれば、皆で陽気に歌い踊り、そして乾杯、の繰り返し。面白いのは日本と違い、あまりおつまみらしきものを食べないことだ。

 唯一ともいえるのが、プレッツェルと呼ばれる塩味のパンぐらい。このお祭りの来場者は毎年700万人を超え、ビールはなんと600万リットルが消費されるという。恐るべき消費量だ。

 ビール王国のドイツは1300以上の醸造所がある。そこで作られる銘柄は6千銘柄以上と言われているが、そのすべてにおいて守られていることがある。それは1516年に定められた「ビール純粋令」だ。この法律に基づき、今でも麦、ホップ、水、酵母のみしか醸造に使用していない。これは世界最古の法令だとか。日本でもこのような古い法律を守っているところがあるのか知りたくなったが、さすがマイスターの国ドイツである。

 ビールは下面発酵ラガーと上面発酵エールに分かれる。日本でよく飲まれている琥珀(こはく)色のビールは、下面発酵ラガーだ。

 ビールを注ぐグラスも各社、サイズや形状に特徴がある。寸胴(ずんどう)型タンブラーグラスや、腰がくびれたような背の高いグラス、足の付いたグラスなどなど、自社製品の味と香り、そして色を楽しめるようにと、こだわりが感じられる。

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 ビアホールに常連はつきものだが、ドイツの常連には深いものがある。まず常連になるには、先輩の常連客の推薦がいる。審査は順番待ちで、2〜3年はかかると言う。常連と認められると、顔写真入りの会員カードがもらえ、棚に自分専用のジョッキが置ける。そのジョッキは親から子へと受け継がれる。彼らは誇りと文化も受け継いでいるのである。(京都センター主宰)

【2010年10月18日掲載】