京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ >フランクフルト便り
インデックス

(6)ドイツワイン

地域の味生み出す職人魂 佐野惠子
ライン川沿いに見渡す限り、広大なブドウ畑が広がる(ドイツ・フランクフルト、筆者撮影)

 ドイツの紅葉はもう終わりである。毎日落ち葉の掃除に明け暮れるが、ドイツの紅葉は赤色が見られず、黄色と茶色のみの世界である。

 紅葉の違いはあるが、クリやキノコなど秋の味覚を楽しめるのは日本と同じ。食とともにテーブルの上に欠かせないものと言えばやはりワインであろう。

 ドイツワインは日本でも有名になったが、ブドウ畑の面積はイタリアやスペインと比べても決して広くはない。だが質はかなり高く、ドイツ国内で生産される90%は原産地称号ワイン(QWPSR)であり、これは地域の特色を生かしたワインとも言い換えられる。ちなみにお隣フランスは50%以下だ。

 ドイツでは13のワイン生産地域に分類され、1本のボトルに対して1地域のブドウしか使わない。それぞれの環境や土壌、気候など最大限に特徴を生かして作られる。このため、同じ品種のブドウであってもそれぞれの地域の味を楽しめるのだ。

 味を生み出すのがワインマイスターの存在である。ドイツでは手工芸に限らず、食品でもマイスターは活躍している。日本の清酒を仕込む杜氏(とうじ)とワインマイスターは似ているが、異なるのは、昔からワインマイスターはワイナリーに属し、杜氏のように移動しないことがあげられる。

 今回、ラインヘッセン地域のワイナリーLouis Guntrum社を訪ねた。このワイナリーは1648年創業の老舗で、国内最良の地域とされるライン川沿いに自社ブドウ園を持つ。現在の当主で11代目。このブドウ畑の下には広大なセラーがある。

 入るとワインの香りが辺り一面に広がり、種類ごとに部屋の匂(にお)いが変わる。伝統的な木樽(だる)がある一方、現代的なステンレスの樽が整然と並ぶ。私はこの光景に非常に驚いた。しかし、話を伺ううち、伝統と革新の調和を図り日々邁進(まいしん)するオーナーとマイスターの挑戦にワイン作りに対する情熱を感じた。歴史に甘んじず、なおかつ歴史に敬意を持ちながら仕事に打ち込む姿は、京都の職人と相通じるものがあり、ここでも職人魂に魅せられた。

 セラー奥には、ワインの神様の像が祀(まつ)ってあった。名前はウーバン。収穫時期になれば、その手の上に取れたてのブドウを供えると言う。崇拝対象が違えどもその信仰する心はわが国も同じ。今夜あたり、秋の夜長の友に、ドイツワインはいかがだろう。(京都センター主宰)

【2010年11月15日掲載】