京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ > 華包(はなつつみ)
インデックス

(7)燕子花包

京都華包研究会  笹岡隆甫
燕子花包の折形図 「燕子花包」(遠州六世貞松斎米一馬筆「華包」より)
燕子花包の折形図 「燕子花包」(遠州六世貞松斎米一馬筆「華包」より)


日月和合の色に身をひきしめ


燕子花(かきつばた)

 「杜若」とも書く。湿地に群生し、5~6月に紫色の花をつけるアヤメ科の植物。「伊勢物語」の「から衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬるたびをしぞ思ふ」と「かきつばた」の5文字を詠み込んだ歌から古来、能や工芸、茶の湯の題材にも。





 すっと伸びた若い緑の葉の間に、凛(りん)とした濃紫(こむらさき)の花を咲かせる杜若(かきつばた)。尾形光琳をはじめ、多くの絵師たちに愛されてきた初夏の花の代表です。

 いけばなの世界でも、この花は別格。杜若を生ける際には、まずその場を清浄にして、自分の身も清めてから花に向き合いなさい、と伝えられています。そこまで大切にされた理由は、その花色にあります。「太陽と月が向かい合うとき、紫の雲がたなびく」との一文が古書にあり、紫は、日月和合の色として最上の色に位付けされました。杜若は、この最上位の紫を花色に持つことから尊ばれ、軽々しく生けてはならないとされたのです。

 さて、今回のアレンジは「新しい日本文化の創造」をコンセプトにものづくりを展開しているテキスタイルブランドSOU・SOUとのコラボ作品。テキスタイルデザイナーの脇阪克二さんが、杜若をテーマに直筆で描いてくださった和紙を用いています。一点ものの貴重な華包に、アヤメ科の仲間である花菖蒲(はなしょうぶ)も取り合わせ、初夏の清々(すがすが)しい明るさを演出しました。


京都華包研究会  笹岡隆甫 (ささおか・りゅうほ)

 1974年京都市生まれ。華道未生流笹岡家元。京都華包研究会同人。

新緑に、濃い紫の花が一層際立つ 葉先まで凛としたたたずまいが、初夏の爽やかな風を誘う(京都市左京区・未生流笹岡家元)
新緑に、濃い紫の花が一層際立つ
花材=カキツバタ、ハナショウブ、ハウチワカエデ、カスミソウ
葉先まで凛としたたたずまいが、初夏の爽やかな風を誘う(京都市左京区・未生流笹岡家元)
花材=カキツバタ

【2018年05月11日付京都新聞夕刊掲載】