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(2)近江米

“新農家” 売り方に仕掛け
父母と3人で無農薬を中心としたコメづくりに力を注ぐ家倉さん。作るだけでなく、消費者へのPRイベントなどの仕掛けにもこだわる(長浜市)
 雪が積もる長浜市の倉庫。専業農家を継いで7年目の家倉敬和さん(30)は、金曜日を直販用のコメの精米に費やす。一年で最も気を使う作業だ。

 「安全でおいしい物を届けないと次はないですから」。磨いた米粒の色づきに目をこらし、香りに異常がないかを確かめる。

 電子サイト「お米の家倉」。父母と水田25ヘクタールを耕して実ったコメ120トンの約3割を、サイトなどを通じて消費者へ直販する。味わいの良さと環境に配慮した無農薬米を中心にそろえ、市価から倍額近い銘柄もある。高いものから売れ、最高値で5キロ5千円を超える「ミルキークイーン縁つながり」は完売した。

 農地の約9割を水田が占める滋賀は、京阪神にコメを供給する近畿の穀倉地帯。だが、県産を示す「近江米」は質と価格が低迷しているのが現状だ。

 かつては良質米として知られ、市場の評価を左右する一等米比率が1991年には過去最高の95%を記録した近江米。ところが10年産は、43%と全国平均から18ポイントも低かった。主な理由は温暖化だと考えられ、稲作最適地から外れつつあるという指摘もある。

 ある農業関係者は「ブランド米から、安い値ごろなコメになってしまった。湖国農業は正念場を迎えている」という。そんな逆風の中で、家倉さんら農家有志が農法や販売の工夫で売れるコメづくりに挑んでいる構図だ。

 山形県が昨秋、県外販売に乗り出した新品種「つや姫」が脚光を集めている。開発に10年をかけた新品種だ。「県品種でブランド米が育てば、県産米全体が活性化される」(同県新農業推進課)。人気の新潟県産コシヒカリに並ぶ売価を首都圏で保ち、京阪神の市場も見据える。

 迎え撃ちたい滋賀は出遅れている。13年前、県が独自開発した品種「秋の詩(うた)」の人気はいまひとつ。温暖化対応のブランド米の開発は、さらに3年かかる見通しだという。

 家倉さんも加わる湖北の若手農家グループ「コネファ」が、2月に大阪市内で農産物直販イベントを催す。大阪のデザイナーズ集団と組み、農作業の写真やコメ、野菜を会場に並べる異色の展示会。「都市の人と農をつなぐ活動を仕掛けたい」と家倉さん。コメを作るだけでなく売り、仕掛ける。新たな農家像を追い求めている。

17万800トン収穫 京阪神へ出荷

 近江米 2010年の収穫量は17万800トンで、主に京阪神へ出荷されている。専業農家は10年2月現在3248戸で、農家全体の13.1%と少ない。専業を中心とした4ヘクタール以上の認定農業者は09年度に1718戸。100ヘクタール以上のメガファームは5戸ある。

【2011年1月26日掲載】