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(5・完)集落営農

「互助の心」 全国トップ
大豆の選別をしながら世間話に花を咲かせる「酒人ふぁ〜む」のお年寄りたち(甲賀市)
 甲賀市水口町酒人(さこうど)のビニールハウス。お年寄りたちが大豆を転がし、慣れた手つきで虫食いの粒を取り除いていた。「ほんま寒いね〜」「昨日テレビでな…」。農作業をしながら世間話に花が咲く。

 戸別で所有する農地と農機具を1団体に集約し、兼業農家が組織化して営む「集落営農」。1999年に発足した「酒人ふぁ〜む」は、全国1位の団体数を誇る滋賀県での先がけだ。

 約40ヘクタールでコメ、麦、野菜などを栽培している。メンバーは56戸の85人。休日にはサラリーマンが農機具を操り、平日は主婦らが収穫に精を出す。

 集落営農は江戸時代にあった村人の互助組織「結(ゆい)」の現代版だと、運営法人副組合長の福西義幸さん(63)は説明する。先祖からの農地を守りながら、地域コミュニティー活性化にも役立ち「10代から80代まで役割を分担して助け合う。ふるさとへの愛着がよみがえってきた」と言う。

 県内では農家がいる約1550の集落の半数近くで集落営農が営まれ、2010年は798団体で3年連続の全国トップだった。農家の8割を兼業農家が占める滋賀は先進地で、耕作放棄や農村コミュニティー崩壊の防波堤になっている。

 会社のように効率やコスト意識を徹底し、攻めの農業を模索するグループも出てきた。

 事業収益8100万、経常利益1400万円…。近江八幡市の「ファームにしおいそ」の代表理事、安田惣左衞門さん(69)は「この地域はかつて、本業のボーナス1回分を持ち出して毎年営農してきた。今ではメンバーにきちんと利益を還元できています」と笑顔で話す。

 メーカー子会社で社長を務めた手腕を生かし、01年の発足時から数値化したデータで営農を考える。価格低迷に悩む稲作は農法を工夫して労働時間を減らし、カルビー湖南(湖南市)が販売する菓子用のジャガイモを増やすなど、収益率の良い農産物の比重を高めている。

 湖国農業を下支えする集落営農だが、経済自由化を目指す環太平洋連携協定(TPP)交渉や米価続落など難題も待ち受けている。だが近江には豊かな土地と水があり、郷土に根差す若い世代もいる。「世界へ売り込める農作物を育てられる素地がある」と安田さん。そう信じ、新たな夢とビジョンを思い描く。=おわり

県内農地3割弱で運営

 集落営農 国の統計によると、2010年現在、県内の耕地面積5万3400ヘクタールのうち、28.5%に当たる1万5196ヘクタールで営まれている。土地を所有する非農家も含めた参加戸数は2万8367戸を数え、土地を持つ農家と非農家の41.1%が参加している。

【2011年1月29日掲載】