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(2)文化ホール

人を育てる“舞台装置”
ラ・フォル・ジュルネで演奏する「さきらジュニアオーケストラ」。熱の入った演奏に多くの人が耳を傾けた(4月30日、大津市・びわ湖ホール)

 4月29、30日。大津市のびわ湖ホールは家族連れや若者ら計2万8千人でにぎわった。催されたのはミニコンサートを集めたクラシックの祭典「ラ・フォル・ジュルネ」。妻、4歳の娘と訪れた大津市の安藤成司さん(34)は「多くのコンサートは子ども同伴お断り。音楽に触れるいい機会」と楽しんだ。

 同ホールは1998年、県がオペラ専用劇場として開館。井上建夫館長は「滋賀は『文化不毛の地』と言われてきた。創造発信の拠点が必要との考えが、オペラ劇場に結びついた」と振り返る。

 制作力の強化に力を注ぎ、自主事業は年180本に及ぶ。09年度は県外の来館者がオペラで68%、全体でも44%を占めた。同館の沼尻竜典芸術監督は「手軽なものがあふれる現代こそ質にこだわりたい」と内容の充実ぶりを強調する。

 県内には43の公立文化ホールがあり、人口100万人あたりの数は関西で1位、全国でも7位(全国公立文化施設協会など調べ)を誇る。75年度以降、県は5つのホールを開設。各市町でも建設が続き、個性的な事業を始める施設も出てきた。

 栗東市の芸術文化会館さきらは5年前、小中高校生のジュニアオーケストラを創設した。初心者の育成から始め昨年11月、初の定期公演を開いた。

 今春はラ・フォル・ジュルネにも出演し、宇治市から訪れた女性(38)は「こんなオーケストラがある街がうらやましい」と耳を傾けた。井上眞次館長は「ホールは人を育て、街をつくる拠点。地域への愛着もはぐくむ」と胸を張る。

 また、草津市のしが県民芸術創造館では創作ミュージカルに取り組む。オーディションで選んだ出演者をプロが指導し、06年度から毎年公演を続ける。舞台制作の核となる人材も育ちつつあり、運営する県文化振興事業団の柴田英杞副理事長は「舞台をやり遂げる達成感が、地域で活躍する人材育成にもつながれば」と期待する。

 びわ湖ホール館長を務めた京都橘大の上原恵美教授は、滋賀での活発な動きを歓迎しつつ、「ホールの規模などが重視され、設置目的やビジョンを見失っている例も見受けられる」と指摘する。財政難で自治体の文化予算が削減される中、「地域を育てるという視点が公共ホールの存在意義。文化は利益追求の道具ではなく、将来への投資だ」と強調する。

併設型、多目的に活用

 県内の公立文化ホール 県内最初の開館は1954年度に完成した大津市の滋賀会館だが、財政難などで昨年3月末で廃止された。多くのホールは図書館や集会所、会議室、公民館を併設。地域文化の拠点として多目的に使われている。

【2011年5月22日掲載】