京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ >ほんまの近江
インデックス

(5)新たな聖地

物語の続きファンと共に
旧豊郷小の校舎で開かれた「けいおん!!」のイベント。全国から訪れた大勢のアニメファンでにぎわった(豊郷町石畑)

 4月29日、滋賀県豊郷町でアニメファンが集う催しが開かれ、全国から1300人が訪れた。場所は、テレビアニメ「けいおん!!」の舞台に酷似していると話題になった旧豊郷小。今も人気は根強く、埼玉県の会社員(31)は「物語の世界に入り込んだ感じがした」と大喜びだった。

 1937年に完成した校舎は米国人建築家ヴォーリズの設計。10年ほど前、解体か保存かで議論された校舎が再び注目されたのは2009年4月。番組の初回放送後から校舎のモデルをめぐり、ネット上で情報が飛び交った。2時間後には所在地が知れ渡った。

 全国からファンが詰めかけ、同町産業振興課の清水純一郎さんも「観光の町ではないのに、こんな形で人が集まるとは」と驚いた。

 この好機を町の活性化に生かそうと、地元も動き始めた。町商工会などの有志が校内にカフェを設けたり、軽音楽ライブを開催。8種類のコースターを町内で分散して販売し、校舎外にも足が伸びるように工夫した。

 商工会青年部の宮川博史さん(41)は「話すと普通の若者で、礼儀正しかった。豊郷のファンになって何度も来てほしい」と願う。違うアニメで話題になった埼玉県久喜市と比較し、ファンの間では「アニメの西の聖地」とも言われる。

 一方、ひこにゃんがいる彦根市は「ゆるキャラの聖地」として話題を集める。全国のゆるキャラが集まる「キグるミさみっと」が毎年秋に開かれ、昨年は7万5千人が訪れた。

 3年前に始まった「さみっと」は彦根商店街連盟などでつくる実行委が主催。ゆるキャラを見て泣く子のそばで親が笑うなどの光景が広がり、予想以上の反響があった。

 実行委の荒川深冊副委員長は「こういうイベントがなかったので始めたらヒットした」と話す。彦根城など既存の観光資源とは違う角度から新しい客層を取り込み、「最初から人が来るかは分からなかった。新しい視点からアイデアを出すと、新しいファンがつくられる」と話す。

 新たに生まれた「聖地」を、どう生かしていけばいいのか。北海道大観光学高等研究センター、山村高淑准教授は「アニメもゆるキャラも、背景にあるのは地方の歴史や文化。ブームで終わらせないためにはいかに訪問者を受け入れ、地域のファンにもなってもらえるかが鍵」と指摘する。(おわり)

アニメ、ゆるキャラ全国区

 「けいおん!!」は軽音楽部の女子高生の日常を描いたテレビアニメで、2009年と10年に全国放送された。「ひこにゃん」は彦根城築城400年祭のキャラクターとして07年に登場。現在は彦根市のマスコットとして活躍している。

【2011年5月25日掲載】