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(2)沖島

淡水に浮かぶ 支え合い
沖島の漁業を考える沖島小の授業で、担任の先生と話す小川さん(中央)と本多さん=近江八幡市・沖島小

 「2時間半かかってウナギが1匹釣れました」。沖島小(近江八幡市)6年の小川愛佑菜さん(11)が、体験してきたウナギ漁の映像を見ながら授業で発表した。網の中のウナギを足で触ろうとする姿が映し出されると、同じクラスの本多眞彌さん(12)も楽しそうに笑顔を浮かべた。

 約850年前に源氏の落ち武者が開拓したと伝わる沖島。淡水に浮かぶ島としては国内で唯一、人が住んでいる。対岸の堀切新港から定期船で約10分。畑で取れた野菜や自家製のエビ豆を近所に配るなど、約350人が支え合いながら暮らす。大半の島民が漁業を営んでいるが、漁獲量は年々減っている。

 小川さんの祖父、満さん(71)は定期船の船長をしながら、毎年6〜8月はウナギ漁に出る。近年は、増えすぎたカワウが仕掛けのエサを食い尽くしてしまうといい、「本当に釣りにくくなった」と厳しい表情で話す。昨年度の沖島漁業協同組合の漁獲量は、ピーク時の6分の1に当たる約1千トン。正組合員の数も3分の2の約100人まで減った。

 外来魚を使ったペットフードを昨年9月から販売するなど、同漁協も工夫を重ねる。森田正行組合長(61)は「外来魚で新たな産業を生み出し、島の雇用創出につなげたい」と狙いを話す。昨年は琵琶湖のウナギなどを振る舞う「沖島うなぎ祭り」を開催して観光客に島をPRした。今年はブラックバスのコロッケや外来魚のみりん干しの販売にも乗り出す計画だ。

 沖島を支えている漁業について学ぶために、沖島小では今春から6年の授業で児童がみりん干し作りや、ふなずし作りなどを体験した。エビ漁に参加した本多さんは「漁師さんの網をひきあげるスピードが早かった」と驚き、小川さんは「ウナギ漁を観光客にも体験してもらい、島をPRしたらいい」とアイデアを浮かべた。沖島の漁業の今後について話し合った授業では、2人は直面する「課題」よりも「明るい展望」を多く書いた。

 一方で島を離れる若者も多く、島内では高齢化が進む。沖島小の児童数はわずか10人だ。「多くの人に沖島に来てもらいたいけれど、島の人の優しさや支え合う文化は変わってほしくない」と小川さん。島を取り巻く環境が変わりつつある中で、沖島で生きる人々の思いを次世代へと引き継ごうとしている。

島には自動車1台だけ

 沖島 周囲は6・8キロ、面積は1・52平方キロメートル。主産業である漁業とともに1965年ごろまでは石材業も盛んだった。人口は58年のピーク時で、151世帯813人。道路は両手を広げたほどの幅で、島内には自動車が1台だけあるという。

【2011年7月21日掲載】