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(3)町家

先人の財産 活用を模索
町家の土間を改装して居住空間にした柴山商店。太いはりや井戸なども残る(大津市京町1丁目)

 格子の向こう側に別世界が広がる。大津市中央2丁目の「初田家住宅」。広間や土間を抜けると、土蔵の白壁の映える庭が広がる。住人の初田由喜子さん(61)は「ゆとりある間取りで、落ち着きます」。10月の大津祭では、市内を巡行する曳山(ひきやま)を2階から眺める。

 NPO法人・大津祭曳山連盟の白井勝好理事長は「江戸時代は大津祭を2階から眺める風習はなかったと考えられる」と話す。昭和初期ごろの道路拡幅で家を後退させた際に構造が変わり、2階が部屋になった町家が多いという。白井理事長は「参勤交代で通る大名を見下ろさないように2階は虫籠窓(むしこまど)の物入れだった」と語る。

 町家は商業者のための木造住宅で、江戸から昭和初期にかけて建てられたものが多い。大津市は2004年に中心市街地で行った調査では1651軒、09年は1516軒を数えた。近江八幡市の旧市街では437軒(08年)あり、彦根市や日野町でも多くの町家が残っている。

 時代とともに変遷してきた町家は近年、減少傾向にある。大津市では危機を抱いた市民が町家保存運動を始めた。築百年以上の町家を「大津百町館」として運営し、町家の良さをPRする。自治体も保存に力を入れ、大津市は町家風改修に補助を出す制度を設ける。彦根市や近江八幡市は保存地区を指定し、町家の改修時には街並みに合うような規制をしている。

 だが、町家を将来的に活用していくためには多くの課題も残る。

 大津市は空き家見学会で移住希望者に町家を紹介する事業を行っているが、賃料や改装の範囲などで折り合いのつかないケースが目立つ。近江八幡市でも同様の取り組みがあるが、契約成立は1件にとどまる。

 一方、町家を現代の暮らしに合わせて大胆に改装した住民もいる。大津市京町1丁目のちょうちん店「柴山商店」。旧東海道に面した店は奥に住居があり、2000年に大改装した。

 2階まで吹き抜けの土間だったスペースを板張りにし、太陽光を利用した床暖房も導入。町家の風情を残しつつ、快適に暮らせるように工夫している。柴山直子さん(46)は「今の生活に合わせて、町家を変えることはいくらでもできる。先人が築いた財産をなくすのはもったいない」と話している。

国の登録有形文化財は22件

 滋賀県内の町家 県教委によると、国の登録有形文化財に指定されているのは初田家住宅など計22件。大津市では「大津百町」と呼ばれた中心市街地が中心で、住宅のほかに料亭などもある。彦根市や高島市などにも有形文化財に登録された町家が残る。

【2011年7月22日掲載】