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(2)伝統産業

技生かし時代の新製品
彦根仏壇の見本市で、彫刻の実演を披露する井尻さん(左)。のみを持つ手に力が入る=彦根市

 彦根市で今月上旬に開かれた彦根仏壇の見本市。職人による制作実演が行われた。10種類ののみを使い分ける彫刻師の井尻一茂さん(40)=米原市下丹生=の技を、来場者が足を止めて見入った。「大胆に彫って、躍動感を出すんです」と井尻さんは言う。

 会場には、樹木の葉の間を飛ぶ鳥を描いた木彫りも並んだ。彦根仏壇の前面上部に取りつける「前狭間(ざま)」。板を数段重ねて厚みを出し、立体感が出るように工夫されている。

 江戸時代から続く彦根仏壇の制作は、小さな木片の部品を組み立てて仏壇の屋根を造る宮殿(くうでん)や蒔絵(まきえ)など7工程に分かれる。各工程を専門に担う職人が、その技を弟子や子どもに伝えてきた。祖父から彫刻を学んだ井尻さんは「祖父の彫り物は、迫ってくるような力強さがあった。それを目指している」と話す。

 国の伝統的工芸品に指定されている彦根仏壇。しかし生活様式の変化とともに、仏壇の需要は激減した。県によると、生産額は1991年の56億円をピークに、2009年は30億円まで下がった。

 厳しい現状を受け、彦根仏壇の仏具店や職人の有志が今年9月、伝統技術を応用したインテリアの新ブランド「柒(なな)プラス」を立ち上げた。連なった四角い木枠の奥に、信仰の対象物を置くオブジェなど、既存の仏壇のイメージとは大きく異なる製品を提供する。

 プロジェクト代表の吉田彰浩さん(42)は「仏壇は時代の生活様式になじみ、使われ続けてこそ技術が継承される。今後も新しい祈りの形に挑戦したい」と将来を見据える。

 伝統の技を生かし、新商品を生み出そうという動きは、湖東特産の麻織物、近江上布でも見られる。

 県麻織物工業組合(愛荘町)の職員が羽織る、涼しげな風合いのシャツ。鎌倉期に始まったとも伝わる近江上布の染色技法を用いて開発した洋装生地「asaco」で仕立てている。「触ると違いが分かりますよ」と担当者も太鼓判を押す。

 染色や糸加工は職人による手作業とこだわりを貫く一方で、自動織機を使って価格を下げた。同組合担当者は「まずは近江上布の技術に触れてもらうことが大切。そのために用途を広げる工夫は欠かせない」と語る。

 形を変えながら守り抜かれていく伝統の技。育んできた技術に時代を超えて親しんでもらうために、職人たちの挑戦は続く。

※柒は染の九部分が七

信楽焼など湖国に3品目

 伝統的工芸品 経済産業省が指定し、現在、全国には211品目。「製造工程の主要部分を手作業で行う」「日常的に使われている」などの条件を満たしている工芸品が対象。滋賀では彦根仏壇、近江上布、信楽焼の3品目が指定されている。

【2011年11月26日掲載】