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(3)ものづくり県

産官学連携で経営改善
多種多様のばねや部品を製造する宮川バネ工業の工場。滋賀に移転して30年近くになる(東近江市園町)

 名神高速道路の八日市インターチェンジを出て約10分。精密ばねメーカーの宮川バネ工業(東近江市園町)の工場では、規則正しいプレス音が軽快に響く。デジタルカメラのスイッチに使う小さな部品など、大きさや形状が異なる多種多様なばねの設計、生産を行っている。

 もともと大阪で創業したが、取引先の松下電工(現パナソニック電工)の彦根工場完成がきっかけになり、1984年に本社移転した。高速道路や東海道新幹線も利用しやすい環境で、顧客も京阪神だけでなく、名古屋方面まで広がった。宮川卓也社長(60)は「結果として滋賀への進出は正しかった」と話す。

 県内には大手企業や関連する中小企業の工場が集積し、県民総生産の約4割を製造業が占める。この割合の高さは全国トップで国内有数の「ものづくり県」だ。

 ところが近年、大規模な工場の県内進出は低調だ。近畿経済産業局の調査では、面積千平方メートル以上の工場立地件数は2011年上期(1〜6月)は13件。前年同期比で3件増だが、08年は過去10年で最多の47件もあった。同年秋のリーマン・ショック以降は20数件にとどまり、県企業誘致推進室は「県の財政難で手厚い資金的な補助ができないのが実情」と漏らす。

 工場の新規誘致が難しい今、既存の企業への支援が本格化している。野洲市は昨年5月、東京大と立命館大の支援で「市ものづくり経営交流センター」を発足させた。製造業OBをインストラクターとして養成。東大がまとめた大手製造企業のノウハウを生かし、中小企業の生産性の向上やコスト削減などを図っていく。

 昨年、市内の電子部品工場で不良品の発生率を4割近く改善し、年間1800万円のコスト削減に成功した。吉野弘一センター長(53)は「自治体の税収増につながり、地域活性化にもなる」と話す。

 また、県などは今秋、ものづくりと環境の2分野で、企業や大学と連携して技術開発を図る「しが新産業創造ネットワーク」を設立。新たな可能性を探って動き始めた。

 円高や欧州の金融不安など厳しい経済局面が続いているが、ものづくりを支える意欲は衰えていない。村田製作所(長岡京市)のOBで、野洲市ものづくり経営交流センター第2期養成講座を受講する越村安洋さん(62)=東近江市=は「日本の強みは改善力。高品質な製品を作ってきたわれわれの知恵や経験を現役世代に伝えたい」と張り切っている。

付加価値額は全国13位

 滋賀の工業 2009年工業統計調査によると、県内には2976事業所(従業員数4人以上)あり、従業員数は14万8292人。製造品出荷額をみると、6兆1159億円で全国16位。付加価値額は2兆2020億円で全国13位。

【2011年11月27日掲載】