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(2)三岐鉄道北勢線(三重県)=20・4キロ

車内で温泉で“ふれあい”

【上の写真】終点の阿下喜駅横の転車台。奥に軽便鉄道博物館がある(三重県いなべ市)
【下の写真】狭い車内で語らう高校生たち

 盲腸線(行き止まり線)は近畿2府4県だけでも60を数える。京都から日帰り可能な範囲まで広げるとざっと100路線になるが、冬ならやっぱり温泉かと、三重県北部を走る三岐(さんぎ)鉄道北勢(ほくせい)線を訪ねた。JR関西線・近鉄名古屋線の桑名駅から西北へ20・4キロ、いなべ市の阿下喜(あげき)駅までをつなぐ。終端駅の近くには、天然温泉施設がある。

 特急も止まる大きな桑名駅の陰に、北勢線始発駅西桑名のちっぽけな駅舎があった。ホームに待つ3両編成の列車は、オレンジ色のボディーに朱色のラインを引いたかわいい車両である。

 レール幅は762ミリと、新幹線や関西の主な私鉄の標準軌1435ミリの半分少しだ。近くを走る近鉄の内部(うつべ)線と八王子線、富山県の黒部峡谷鉄道とともに残る「最後の軽便鉄道」である。車両幅は2・1メートル、小さな京都市営地下鉄東西線よりまだ30センチ狭い。ロングシートに掛けると、向かいの人とお見合い状態、天井にも手が届く。

 駅窓口で往復乗車券に温泉入浴券付きの割引乗車券を買った。千円ちょうどで、300円少しの割引になる。

 桑名の住宅地を抜けると、北に養老山地、西に鈴鹿山脈を望む田園風景の真ん中を時速30キロ程で走る。乗客は少なく、高校生の姿ばかりが目立つ。楽しそうに語らう生徒たちに、写真を撮らせてほしいと頼むと、「こんな格好でいいんですか」と言いながら快く応じてくれた。物おじしない若者に脱帽だ。

 きっかり1時間で終点に着いた。駅舎も、タクシーが数台並ぶ駅前ロータリーも真新しい。駅隣には、第1・3日曜日に公開される軽便鉄道博物館があって、かわいい転車台もある。レール上には、修復中という1931(昭和6)年製の電車がとめてあった。

 かけ流しの阿下喜温泉「あじさいの里」は、駅から徒歩2、3分。露天風呂の方はそう広くはないが、青空に流れる雲を仰いで足を伸ばす気分は何とも言えない。隣り合って空を見上げるおじいさんは「月に5、6回は来るよ」。12枚つづりの回数券が4千円で、銭湯並みの料金とサウナがうれしいと話す。

 従業員によると、土日は満員になることもあるそうだ。館内のレストランは広く、湯上がりの生ビールはことのほかおいしかった。

 (次回は1月25日掲載の予定です)

三岐鉄道北勢線

【2009年12月28日掲載】