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(3)紀州鉄道(和歌山県)=2・7キロ

親しまれるレールバス
終点の西御坊駅に停車中のレールバス。線路はかつての終点・日高川駅跡まで残っている(和歌山県御坊市)

 久しぶりに紀州鉄道を訪ねた。JR紀勢線の御坊(ごぼう)駅を始発に西御坊駅までの2・7キロを走る。保有路線が日本一短い私鉄だったが、2002年に千葉県の成田空港近くにできた2・2キロの芝山鉄道に最短の座を譲った。

 京都駅発の特急「オーシャンアロー5号」で御坊駅に着いたのは午前10時半過ぎ。ここの0番ホームが紀州鉄道の専用線で、間もなくかわいいレールバスが到着した。白いボディーに「キテツ2」とある。「キテツ」は紀州鉄道の愛称「紀鉄」を表す。7年前に乗ったのは「キテツ1」だったので、どうしているのかと運転士に聞くと、「元気ですよ」の返事。紀伊御坊駅の車庫前にその姿があった。  かつて国鉄駅が町外れにできたため、昭和初期に町の有志が「御坊臨港鐵(てつ)道」を設立、国鉄駅から市街地を経由して日高川河口の港までレールを敷いたのが始まりという。

 地元では今も「臨港」と呼ばれるようで、2歳くらいの子どもを抱いた若い男性が「休みになると、この子が『リンコー乗ろう』とうるさいんですよ」と笑う。地元の人に親しまれている線だなと感じたが、客数は往復とも数人。朝夕は多いのかもしれない。  小さな車両は住宅地や田んぼの中をトコトコと走る。時速20キロからよく出ても30キロくらい。学門(がくもん)、紀伊御坊、市役所前の3駅を経由して、終点までわずか8分だ。

 和歌山県はみかんどころで有名だが、車窓からみかんの木を見ることはほとんどない。帰りにのぞいたJR駅前の土産物店の話では、紀鉄沿線ではあまり作っていないと言う。

 終着の西御坊駅は木造の古い建物で、朝のうちだけ駅員が詰めているとの案内が張ってある。正規の駅名標近くにもう一枚、手書きされた木製の駅名板が傾いた駅舎に似合う。

 車止めの先にトラ模様の柵があり、線路はさらに南に延びている。この先、日高川駅までの0・7キロは20年ほど前に廃線となり、線路だけが残る。「使用中止」と表示された踏切警報機もあった。錆(さ)びたレールの周りには雑草が生い茂り、ところどころにガラクタが置いてある。かつての終着駅跡にはホームの残骸(ざんがい)があり、線路上に背丈ほどに伸びたアロエが赤い花を揺らせている。

 西御坊駅から人気(ひとけ)のない商店街を抜けて東に数百メートル、地名「御坊」の由来となった西本願寺日高別院が立つ。御坊市文化財の本堂や鼓楼、鐘楼、あるいは県の天然記念物である樹高30メートルのイチョウなどが静かなたたずまいを見せる。土蔵造りの民家が残る門前町も味わい深いが、下校中の小学生しか見かけない町なかは寂しいものだ。

 (次回は2月22日に掲載予定です)

紀州鉄道

【2010年1月25日掲載】