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(4)阪堺電鉄軌道(大阪府)=18・7キロ

レトロ感残し街中悠々
天王寺駅前を出発する阪堺電車。右後方はJR天王寺駅ビル(大阪市阿倍野区)

 JR天王寺駅前の交差点を囲む歩道橋の陰に、小さな小屋とホームが隠れ、両側の道路を自動車が行き交う。「阪堺(はんかい)電車」の略称で呼ばれる阪堺電気軌道上町(うえまち)線の始点、天王寺駅前駅である。同社の路線は大阪唯一の路面電車で、この駅も電停と呼ぶ方が似合う造りだ。

 阪堺電車は明治の半ばに馬車鉄道としてスタートしてから110年余の歴史がある。天王寺駅前から住吉公園駅までの上町線4・6キロと、天王寺駅の約1キロ西北にある恵美須町駅から浜寺駅前駅までの阪堺線14・1キロの2路線を有し、住吉大社の北側で両線が平面交差する。

 あまり広くない道路の真ん中を悠々と走る電車は、色とりどりの塗装で、企業や学校の広告も多い。

 阪堺線の一部には安全地帯のない停留場も見受けられたが、路面から離れて専用の軌道を走る区間では、普通の郊外電車風の駅ホームがある。堺市内には片側4車線の大通りの中央を緑地帯に囲まれて走る広々とした区間もあった。

 10人あまりの乗客とともに十数分で上町線終点の住吉公園駅に着いた。木造駅舎の表示は右から左へ「住吉公園驛(えき)」と旧字体、すぐ隣にある南海電車住吉大社前駅の高架に隠れるように立つ。

 駅から左数十メートル先に住吉大社があり、家並みの間から、最近架け替えた太鼓橋の朱色の欄干が冬日に輝く。

 大社を少し散策して住吉鳥居前から我孫子道(あびこみち)行きに乗った。阪堺線の中ほどにある我孫子道駅には、同社の本社や車庫が置かれる。

 本社を訪ねて、業務部事務主任の小林広和さんに話を聞き、さまざまな車両が並ぶ広い車庫を案内してもらった。

 現在、同社には38両が在籍し、かつては京都や大阪の市電から移籍した車両もあったという。車庫の奥に、廃車になった京都市電が往時の塗装で留め置いてあった。昭和3〜6年に製造された古い車両も10両が現役、木製の窓枠が温かみを感じさせる。鉄製に代わってはいるが、日よけのヽがらり板も付いている。

 小林さんは「乗客数がやや減り気味なのが苦労です」と話す。いずこの鉄道も同じ悩みを抱えているようだ。

 沿線には住吉大社をはじめ、歴史のある寺社や与謝野晶子生家跡、千利休屋敷跡、堺の刃物伝統産業会館など見どころも多い。600円の1日乗車券で、これらの名所旧跡を訪ね歩くのも楽しいと思う。

 この後、浜寺公園そばの浜寺駅前駅まで足を伸ばし、阪堺線で恵美須町駅へ戻った。市街地の真ん中、レトロな雰囲気が残る駅のすぐ近くに、通天閣が夕日を浴びて立っている。

 (次回は3月29日に掲載予定です)

阪堺電鉄軌道

【2010年2月22日掲載】