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(5)京阪電鉄 宇治線(京都府)=7・6キロ

名所結んで住宅地走る

【上の写真】「グッドデザイン賞」を受賞した京阪宇治駅(2009年4月6日撮影)
【下の写真】宇治川に面した宇治公園の桜(2009年4月6日)

 昨春、花に誘われ、京阪電鉄宇治線に乗って宇治公園(宇治市)を訪ねた。宇治線は、中書島〜宇治間を結ぶ7・6キロの短い盲腸線である。京阪地域から近い行楽地として知られ、大阪・淀屋橋から臨時の直通列車が入ったこともある。かつては宇治〜三条間の直通が走っていたが、いまは線内折り返し便だけになった。

 沿線には黄檗山萬福寺(おうばくさんまんぷくじ)や西国観音霊場第十番札所・三室戸寺(みむろとじ)などの古刹(こさつ)があり、終点の宇治は平安時代に別荘地として栄え、世界遺産の平等院や宇治上神社など、歴史的な建造物が数多く残る。「源氏物語・宇治十帖(じゅうじょう)」の舞台でも有名だ。

 中書島駅を出たのは朝8時すぎ。家並みをぬってゆっくり走り、高架を走る近鉄線をくぐってすぐに観月橋駅。ホーム右側に宇治川が流れ、観月橋が架かる。この先、六地蔵駅まで、宇治川や支流の山科川と外環状線に挟まれて走る。明治天皇・伏見桃山陵の小高い山が迫り、山裾(すそ)にJR奈良線が通る。

 六地蔵と木幡(こわた)駅の間で、十字に交差する堤の切れ目を通った。JR木幡(こはた)駅から続くこの堤は、戦前にあった陸軍宇治火薬製造所木幡工場への引き込み線跡だという。

 沿線にかつてあった茶畑は、開発の波にのまれ、ほとんど残っていない。電車は住宅や工場の間を抜け、中書島駅から15分で宇治駅に着いた。

 駅のすぐ南側に幅広い宇治川が流れる。1995(平成7)年に新築された駅舎は一風変わった横顔。私鉄の駅で初の「グッドデザイン賞」や第1回「近畿の駅百選」に選定されている。

 駅前広場から宇治橋を渡って左にとり、環境省の「かおり風景100選」に選ばれた平等院参道を少し歩き、平等院の手前で宇治川畔に出た。小さな橋から、中州の橘島、続いて塔の島に渡る。一帯は真っ盛りの花びらで覆われ、花の色と宇治川の藍(あい)色が見事な対照を見せる。塔の島右岸に架かる朝霧(あさぎり)橋の朱色が朝日に輝く。対岸に並ぶ桜も、少し霞(かすみ)がかかり、川面に映る姿が遠目に美しい。

(次回は4月26日掲載の予定です)

京阪電鉄 宇治線

【2010年3月29日掲載】