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(7)南海電鉄高野線(大阪府、和歌山県)=64・5キロ

深山幽谷走り信仰の地へ

【上の写真】高野山の入り口、南海電鉄高野線の終点・極楽橋駅に停車する特急「こうや」
【下の写真】高野山・金輪塔とシャクナゲ(5月中旬撮影)

 南海電鉄高野(こうや)線は、大阪市浪速区の汐見橋駅から和歌山県高野町の極楽橋駅まで64・5キロの長距離を結ぶ。ただ、高野山に向かう電車は、南海本線の難波駅が起終点となっている。

 5月中旬、始発駅とされる汐見橋から乗車した。築54年を経た駅舎は、昨年3月に開通した阪神なんば線桜川駅の真上に立つ。改札口には、駅ができたころの路線を描いた観光案内図が張ってある。

 南海本線と交差する岸里玉出(きしのさとたまで)駅まで4・6キロ。ここで高野線の普通電車に乗り継ぎ、堺東駅で特急「こうや」に乗車した。4両編成のスマートな車両は、難波−極楽橋駅間を約1時間半で結ぶ。

 沿線は大規模な住宅地が多く、平たんな線路を時速100キロほどで突っ走る。だが、長いトンネルで和泉山脈を越え、さらに紀の川を渡ってしばらく先、九度山(くどやま)駅を通過した付近から山地に入ると、一気に深山幽谷の世界に変わった。

 進行方向の右側は、緑滴る風景が広がり、はるか下方に渓流が垣間見える。左側は山の斜面が線路際に迫る。橋本−極楽橋駅間には、展望デッキなどを設(しつら)えた展望列車「天空」も走っている。急カーブや急勾配(こうばい)、トンネルが断続する区間を時速30キロほどでゆっくりと上る様は、まるで登山電車。80年の昔、よくぞ鉄道を敷いたものだと、先人の努力に脱帽する。

 終点の極楽橋駅は海抜538メートルの高みにある。そこでケーブルに乗り換え、さらに330メートル上って高野山駅に着いた。ここから町中までの約3キロをバスで移動する。

 空海が密教修行の場として拓(ひら)いたこの地は、「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界遺産に登録されている。南海電鉄のサイトには「山上宗教都市」と紹介される。

 真言密教の聖地とされるが、道を教えてくれたお年寄りは「拝みに来る人より観光客が多い」と嘆く。その日も大型バスが走り抜け、にぎやかに歩き回る外国人たちに出会った。それでも坊さんに案内される巡礼姿を見かけると、やはり信仰の地と感じる。

 寺院の庭はどこもシャクナゲの花盛り。先のお年寄りは「シャクナゲは6月初めまで、それからはアジサイがきれいよ」と言っていた。

 (次回は6月28日の掲載予定です)

南海電鉄高野線

【2010年5月24日掲載】