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(10)北条鉄道(兵庫県)=13・6キロ

旧宿場町に残る五百羅漢
【写真上】北条町駅で並ぶカラフルなレールバス(兵庫県加西市)
【写真下】五百羅漢

 JR山陽線の加古川駅と福知山線の谷川駅とを加古川線が結ぶ。国鉄時代にはこの線から4本の盲腸線が分かれていたが、もと北条(ほうじょう)線の北条鉄道だけが残った。

 北条鉄道は、兵庫県小野市のJR粟生(あお)駅から加西(かさい)市の中心部にある北条町(まち)駅間13・6キロを、日に17往復のレールバスがつなぐ。車両3両、従業員14人という小さな第三セクター、乗客数は1日千人にも満たないが、地域の足として25年間走り続ける姿がある。

 加古川から北へ16キロあまり、神戸市内から神戸電鉄の粟生線も入る粟生駅に7年振りに降り立った。昨秋改築された駅舎が妙に目立つが、一面の田畑と少しの住宅に囲まれた駅周辺の静かな環境はほとんど変わらない。

 乗車した車両も前と同じ「フラワ2000−1」。サルビアの花を散らしたピンクの塗装は、新車から10年を経て少しくたびれた感じがある。

 稲穂が出始め、早くも案山子(かかし)の立つ田んぼの中を走り、小さな集落をいくつか過ぎて、22分で北条町駅に到着した。

 待合室を兼ねた観光案内所では、常駐の吉田さんが町の魅力を説明してくれた。「駅に着いたらまずここを訪ねてほしい」と言う。話を聞くほどにあちこち行ってみたくもなるし、駅のレンタル自転車を利用する手もあるかなと思いつつ、とりあえず1キロほど離れた羅漢寺(らかんじ)まで歩いてみることにした。

 北条は、西国街道の宿場町であり、また、1200年以上前に開かれた酒見寺(さがみじ)の門前町として栄えた。国の重要文化財である酒見寺の多宝塔を始め、多くの文化財が残る。古い町家や商家が連なる通りでは、珍しい袖卯建(そでうだつ)や虫籠(むしこ)窓も見る。

 450体の石仏「五百羅漢」=写真下=が並ぶ羅漢寺は、町並みの外れにあった。寺の人が「いつごろ、何のために作られたのかは分からない」と言う謎を秘めた石仏群は、一体ごとに異なる素朴な表情で、地蔵とはまた違う安らぎや親しみを覚える。

 旧家の間を歩き回り、汗みずくで駅に戻ったのは出発から2時間後。東には5世紀前半の玉丘古墳など7基の古墳が残る史跡公園があるが、帰りの時間が気になって次の機会に譲ることにした。

(次回は9月27日の掲載予定です)

北条鉄道

【2010年8月23日掲載】