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(11)和歌山電鐵貴志川線(和歌山県)=14・3キロ

「たま駅長」で活気再び
【写真上】たま駅長をモチーフにした「たま電車」。外観も車内もアミューズメントパークのよう(和歌山県紀の川市・貴志駅)
【写真下】猫の顔をした貴志駅舎。屋根はひわだぶきで、8月に完成したばかり

 猫の「スーパー駅長たま」がすっかり有名になった和歌山電鐵貴志川(でんてつきしがわ)線は、JR和歌山駅から東に14・3キロ、紀の川市貴志川町の貴志駅までを走る盲腸線である。もと南海電鉄の路線だったが、乗客数の減少などで撤退し、2006年に岡山電気軌道(岡山市)が和歌山電鐵を興してレールを引き継いだ。

 南海時代の04年秋にこの線を訪ねたとき、駅舎の周りをうろうろする2、3匹の猫がいたのを覚えている。駅の売店が野良猫を世話し始めたころか。そのとき見かけた猫のどれかが駅長に「昇進」したらしい。

 和歌山駅の東口に近い9番のりばが和歌山電鐵のホーム。平日なのに乗客の姿が多い。2両編成の先頭車は、姫路から来たという50人近くのツアー客。「堺北歴史散歩の会」の小旗を持った20人程のグループもあって満席状態だ。

 路線半ばまで町なかを走り、竃山(かまやま)駅の先から刈り入れの近い田んぼの中を駆けて30分で終着駅に入った。どっと降りる客と帰りの客が狭いホームと駅舎内にあふれ、駅前は記念写真を撮る人でしばし混雑を極める。猫の顔を模した大胆なデザインの駅舎は、この8月に新築された。

 猫を駅長に仕立てた会社のアイデアは功を奏した。「大池(おいけ)遊園駅そばにある大池周りの桜と終点近くの貴志川の蛍以外見どころはない」(貴志駅近くの食堂の話)路線に活気を呼び込み、新会社になってから乗客数が増加に転じたと言われる。

 本社のある伊太祁曽(いだきそ)駅や貴志駅の売店は、たまグッズが飛ぶように売れ、伊太祁曽駅の窓口では、女性の社員が「駅長さんのおかげです」とほほ笑む。

 駅長公休日の日曜ではないので、てっきりたま駅長が迎えてくれると思った。しかし彼女は、ガラスに仕切られた狭い駅長室の隅でこちらにお尻を向けて眠っており、顔もよく見えない。11歳の高齢で、改札口で制帽姿を見せていたころのような元気はないようだ。

 貴志川線は1916年、沿線にある日前宮(にちぜんぐう)、竃山神社、伊太祁曽神社の三社参りの利便を図って敷かれたという。今は通学の高校生と、猫参りの観光客がメーンの路線に変貌(へんぼう)している。(次回は10月25日の掲載予定です)

和歌山電鐵貴志川線

【2010年9月27日掲載】