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蒸しプリン 命凝縮した材料で、滑らかな口当たり

オ・グルニエ・ドール 西原金蔵さんに習う
できたては軟らかめ。冷やすとしっかり。卵と牛乳だけで滋味豊かな味が生まれる。カラメルの苦みは煮詰め加減で調整を
 西原金蔵さん(55)は京都を代表するパティシエの一人だ。フランスで修業を重ね、ヨーロッパで権威のある菓子コンクールにも数々入賞。仏料理界の巨匠・故アラン・シャペル氏のもと、レストラン「アラン・シャペル」製菓長のほか、資生堂パーラーの製菓長などを歴任。二〇〇一年に京都で洋菓子店を開き、繊細で優雅なフランス菓子を作る。
 洋菓子教室も開く。その際大事にしているのが「手順を知るのではなく、手順の意味を知ること」。今回のプリンも、一つひとつの意味を知ると、行程の理由が明らかになり、作るのが楽しくなる。
 牛乳を鍋に煮る際砂糖をひとつかみ入れるのは「砂糖はタンパク質の凝固を防ぐ役割があります。沸騰寸前の牛乳を、砂糖を混ぜた卵に注いでも、卵が固まらないのはそのためです」。
 ゆっくり時間をかけて蒸すのは、卵のタンパク質がプリン生地の水分や固形物と絡みながら固まるのを狙っているため。滑らかな口当たりになるという。「火が強いとタンパク質だけが固まり、仕上がりが硬くなります」
 カラメル作りも意味がある。砂糖を水で溶かして煮詰めると熱伝導でカラメル化が思いのほか早く進み、良いころ合いで止めるのは難しい。砂糖を溶かした後、ザル越しに水を注ぐのは、パチパチとはねるのを防御するため。「お子さんと一緒に作られる時は必ずザルをして下さい」
 小学校で食育指導に力を注ぐ。その時に必ず作るのがこのプリンだ。洋菓子の基本材料を使うことに加え「卵は子孫のひなを返すため、牛乳は子牛に栄養を与えるため、砂糖は大地のうまみ。人間が強引に取った材料で、命の凝縮した材料であることに感謝してほしい」からだ。
 今回のレシピはお店で販売するプリンと同じもの。実は取材途中まで知らなかった。「私自身もとは人から教わったんです。ご家庭で作って下さる機会が増えるのならうれしいです」と惜しみなく公開してくれた。

レシピ

写真A(上)と写真B
 【材料(5人分)】カラメル=グラニュー糖60グラム、水20ミリリットル プリン生地=牛乳300ミリリットル、バニラビーンズ1/4本(なければバニラエッセンス)、卵3個、卵黄1個、グラニュー糖65グラム
 【作り方】▽カラメル(1)鍋にグラニュー糖1/3量を入れ、中火にかける。溶けて少し茶色に変われば、さらに1/3量を加え、木べらで混ぜる。全体に茶色になったら、残りも同様に加える。全体にふつふつと泡立ってきたら火から下ろす。
 (2)余熱を利用しながら、木べらで混ぜ、半透明の濃い琥珀(こはく)色=写真A=になったら水を加える。とろみがつくまで中火で煮詰め、容器に注ぐ。※水を加える際、ザルなどを通すと=写真B、カラメルがはねない。
 ▽プリン生地 (1)鍋に牛乳とバニラビーンズを入れ、中火にかける。分量のグラニュー糖をひとつかみ取り、加える。
 (2)卵をボウルに入れ、泡立て器でほぐす。残りのグラニュー糖を加え、切るように混ぜる。
 (3)鍋からバニラの香りが立ってきたら、沸騰直前に火を止め、(2)に加え、泡立て器で切るように混ぜる。
 (4)こし器で(3)の液を静かにこす。液の表面にキッチンペーパーを乗せ、なぞるようにしながら手前にそっと引き、細かな気泡を取り除く。
 (5)容器にプリン生地を静かに注ぐ。泡が入った場合は霧吹きの水で全体にさっとかけるか、着火ライターでさっとあぶると消える。
 (6)蒸し器に水を張り、沸騰直前に温まったら、プリンを入れる(水温はこの状態を保つ)。タオルなどを巻いたふたをして約30分ゆっくり蒸す。くしを刺して液が出てこなくなったら出来上がり。

ワンポイント

故シャペル氏との出会いで菓子作りへの思いが根源から変わった。「料理とは決められた配合と作り方を再現するのではなく、誰のために作るのかが大事」
 泡立て器のポイントは二つ。混ぜる時は鍋底に付けて、左右に動かしながら切るように混ぜます。泡立てる時は、泡立て器を上から底にたたきつけることで空気を入れます。今回は泡立てず、よく混ぜる動作。よく混ざっていると、プリン液をこした時、卵黄などが残りません。
<作ってみました>
 カラメル作りで水を加えると固まったが、火にかけている途中に溶けるので安心を。蒸す際、水温が高くなると「す」ができます。(2008年12月25日、京都新聞夕刊)

注意

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