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(2)テレビの功罪 フリープロデューサー 木村政雄さん

本当の姿 見抜く道具にも
きむら・まさお 1946年京都市生まれ。同志社大卒。吉本興業で漫才コンビ「やすしきよし」(横山やすし、西川きよし)のマネジャーを務め、常務を経て2002年退社。著書に「笑いの経済学」など。50歳以上が対象のフリー月刊誌『5L』を創刊、編集長を務める。

 現代の日本人が最も情報を得ているのはテレビです。影響力も大きいから、政治家としては当然、気になるでしょう。

 無関心層をつなぎ留めているのはテレビの「功」の部分で、「テレビのせいで政治が堕落した」と批判するのはおかしい。ただ、最近はテレビ局も政治家の側もあまりに節度がなくなってきました。

 中にはバラエティー番組に出演し、時代劇の町人の格好をしている代議士もいる。大衆との距離を縮める、という理屈かもしれないが、単に迎合しているようにしか見えない。

 現代の政治家の条件は(1)自分の志を世のため人のために生かす心意気(2)そのための政策構想力、立案力(3)民の支持を得るための表現力、コミュニケーション力−に尽きます。

 日本の政治家で、三つ兼ね備えた人がどれだけいますか?特に、(3)の貧弱さは目を覆うばかり。一月、米オバマ大統領の就任スピーチを夜中に多くの日本人が見ていた半日前、日本では国会で麻生首相が漢字の読み方を質問されていた。彼我のレベルの余りの差に、多くの人はあきれて、政治家の言語能力の大事さを痛切に感じたんじゃないですか。

言動単純で派手に

 テレビ政治の「罪」は、小泉元首相が体現したワンフレーズ・ポリティクスのように、政治家の言動が単純で派手になり、スポーツ紙の見出しみたいになってしまったこと。本質を理解するための主文はおろか、要約のリード(前文)さえ面倒くさいとおろそかにされる。中身がよく分からないまま、見出しを信じて投票し、だまされた国民もうかつだったわけですが、小泉元首相の戦略にテレビも悪のりしてしまった。

 動きのあるものがよりアピールする、というのが映像メディアの特性。面白い、新鮮、情緒的…とかに弱い。理路整然と「この問題はAの側面とBの側面があり、それぞれの影響は…」なんて誰も聞いてくれない。放送時間の枠もある。それよりは「バカヤロー」と叫べば、クローズアップされて視聴者の目にとまる。名前も覚えられる。逆に、高齢社会では重要なのに、「絵」にならない高齢者医療なんかは余り報道されない。国会で乱闘にでもなれば別ですが。

 最近の政治家はよく泣きますよね。これもテレビの影響とちがいますか。政治の世界に情緒を持ち込むのは、私は嫌い。テレビは政治を大衆化しただけでなく、幼稚にしてしまった。ひ弱な世襲議員が目立つこともあるのかもしれません。

組織はなくても

 功罪両面あるのは、政治的キャリアや支持組織はないが、志とアピール力がある人にとっては、選挙で大きな武器にできること。タレント知事や議員が象徴的です。政治なんて政党や官僚のもの、とあきらめていた無党派層の声をすくいとれる可能性は大きい。

 それに、大阪府の橋下知事のように当選後も、官僚とけんかするのに利用することもできる。ああいう挑発をテレビは面白がる。

 「あなたとは違うんです」の一言で失笑を買った福田前首相の退陣会見のように、テレビは人間性を赤裸々に映し出す。これは政治家にとってはリスクだが、国民は“雲の上の人”の本性を見抜くチャンス。美辞麗句を並べても、本気度はどうなのか。政治家に負けないくらい、国民もテレビを利用する「したたかさ」があっていいんです。

私が望む3つの資質

◆「活私奉公」の志
◆政策構想・立案力
◆コミュニケーション力

【2009.05.29掲載】