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坪倉由美の日々しましま

(1)粒あんと棺桶
 粒あんが大好きです。京都人の私は、小学校の低学年まであんといえば粒あん。こしあんはその存在すら知らずに育ちました。
 ある日、近所のパン屋さんであんパンを買い求め、それがたまたまこしあんだったのです。口に広がるこしあんのざらっとした食感。こ、こんなのあんパンじゃねえ!(こしあん党の方、ごめんなさい)それ以来の粒あんびいきです。
 昔は慶事の記念に紅白のお饅頭(まんじゅう)をよくいただきました。持ち帰り、手でそっと二つに割る時、祈ります。「どうか粒あんでありますように」。
 二つのうち、白か赤のどちらかがこしあんなのは仕方がないとして、二つともこしあんの場合があります。私の経験値では二つとも粒あんのケースは極めてまれ。そして、二つともこしあんのときは、残念を通り越して心底真剣に腹が立つ。どっちか一つくらい、粒あんにしてくれてもええやんか!
 でも最近は、慶事でも紅白饅頭を配られる事が少なくなったように思います。なぜに? 衛生面を考えて? 単に経費節減?…。買いに行けば粒あんの和菓子は簡単に手に入るけれど、二つに割る時のドキドキ感、久しぶりに味わってみたい。
 もし私があの世に旅立ったら、棺桶は粒あんを白菊の代わりに敷き詰めてほしいと夫と息子に言ってあります。適当にナマ返事してたけど、分かってる? 粒あんとこしあん、絶対、ぜぇったい、間違えんといてや! 間違えられたら化けて出ます。同じくらい好物の桃も、粒あんの上にそっと乗せてくれればなおうれしい。母の欲は限りがない。

つぼくら・ゆみさん 

坪倉由美さん
 イラストレーター 1959年京都市生まれ。成安女子短大卒業後、デザイン会社勤務を経て、中京区に事務所ウクレレ・プラスを設立。Tシャツなどにイラストをプリントしている。